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半導体の原理 小さな半導体に結晶した、偉大な英知。

半導体とは?

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導体とも絶縁体とも違うもの

物質は電子を通す「導体」と電子を通さない「絶縁体」、そして、ある条件によって電子を通す「半導体」に分かれます。「導体」「絶縁体」「半導体」の違いを説明するのに判りやすいのはバンドギャップの幅の違いです。
バンドギャップとは電子が存在することのできない領域(禁制帯)のことです。電気を通す、通さないは電子が移動することができるかどうかによります。バンドギャップが無い「導体」の代表は鉄、銅、銀、金、アルミニウムなど金属系の物質。電子が簡単に移動できるため、電気を通すことができます。逆にバンドギャップが大きい「絶縁体」は油、ガラス、ゴム、セラミックに代表されます。バンドギャップが大きいために電子が移動できずに電気が流れません。「半導体」はバンドギャップが小さく、「半導体」に不純物を混ぜることで電子や空孔の流れを制御することができます。

N型とP型の存在

純粋なシリコンやゲルマニウムの結晶の性質は絶縁体に近く、電圧をかけても電気はほとんど流れません。結晶の中の電子同士が固く結合していて、自由に動き回れる電子はごくわずかしかないからです。
しかし、そこに電子を余計にもった燐などの不純物をほんの少し加えるだけで、導体のような性質に変化します。結晶の中を自由に動き回る電子ができるからです。この燐のように電子を余計にもった不純物が含まれるものをN(negative)型半導体、逆に電子の少ないホウ素などの不純物が入ったものをP(positive)型半導体と呼びます。P型半導体では、電子が足りない穴(正孔)が電子の代わりの働きをし、まるで+の電子が動き回るように振る舞います。
このN型とP型を接合させることにより、電界の向きによって電気が流れたり流れなかったりする「整流作用」が現れるのです。

電流を増幅するトランジスタ

トランジスタ(transistor)は増幅、またはスイッチを動作する半導体素子。transfer(伝達)とresistor(抵抗)を組み合わせた造語。「整流作用」を実現した半導体に、電信・電話などの需要に合わせた「増幅」の働きが求められたことによって誕生しました。
世界初のMOSトランジスタは1960年にベル研究所のKahngとAtallaが製造に成功しました。MOS型トランジスタは今日最も一般的なトランジスタです。
電気を通す導体と同じ性質のN型だけの状態に対して、その中にP型層による"壁"を設け、その高さを調節することで電子の流れをコントロールしようというもの。これにより、ごくわずかな信号電流で、それに比例する出力が得られる(=増幅)ようになったのです。

半導体の領域の拡大

何かの手段を用いることで、電子の流れを自由に制御できること。それが、半導体に関する現在の一般的な定義です。言い換えると、トランジスタの素材になるものであれば、それはつまり半導体。
しかし、ゲルマニウムやシリコンだけを扱っていた時期は、元素周期表14族に属する元素だけを指していました。やがて、化合物半導体や有機物半導体などが研究されるようになると、半導体の定義は変化。ある特定の元素を指すのではなく、半導体の性質を示すあらゆる物質を指すようになりました。
そしていまでは、飯島澄男博士が発見したカーボンナノチューブや、ノーベル化学賞に輝いた白川英樹博士等が発見した導電性ポリマーなども、半導体の素材として世界中で研究されています。