東京エレクトロン株式会社
東京エレクトロン代表取締役社長・CEO河合利樹と東北大学理事・副学長(研究担当)「知のフォーラム」センター長早坂忠裕の対談写真 東京エレクトロン代表取締役社長・CEO河合利樹と東北大学理事・副学長(研究担当)「知のフォーラム」センター長早坂忠裕の対談写真

河合社長知のフォーラムのプログラムスタートから5年が経ちました。これまでに国内外から200人以上の先端研究者を招き、さまざまな研究やディスカッションが実現しました。その内容は、東京エレクトロンにとっても有意義なものです。

当社の基本理念は、「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献する」ことです。IoT(Internet of Things)をはじめとする技術の進展は、この「夢のある社会」の実現を大きく後押ししています。その中で中核となる半導体の重要度はより一層増し、同時にさらなる技術革新が求められています。

知のフォーラムのプログラムは、学術的知識と産業が融合して、新しい技術革新を生み、社会に一層貢献するきっかけになる場と考えています。

早坂理事東京エレクトロンさまには知のフォーラムの意義をご理解いただき、継続してご支援いただいていることを感謝しています。

河合社長のおっしゃる「夢のある社会」とは「より良い社会」という言い方もできると思います。大学は、研究と人材育成を通じて、より良い社会づくりに貢献する組織です。この場合の「研究」とは狭義ではなく、これまでの歴史や社会動向を理解して、より良い社会づくりにつなげていくことを指します。また、研究が知識の体系化をおこなう一方で、人材育成では「変化に対応できる」「未来を創っていける」人材を目指しています。

知のフォーラムは、研究・人材育成の両点によくマッチしているプログラムで、非常に貴重な場になっていると考えています。

新たな時代に求められる技術革新と
文理融合の発想

河合社長早坂先生からご指摘のあった社会動向への理解は大切ですし、当社もESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みに力を入れています。

世界的には、SDGs(国連の持続可能な開発目標)が2030年のグローバルゴールとして共有され、気候変動で言えばパリ協定の枠組みが合意されました。近未来への具体的な目標設定や取り組みが進む中で、当社の社会における責任も大きくなっていると感じています。

早坂理事未来への取り組みについて考える時は、2種類の発想が必要だと思います。1つは、バックキャスティングの発想で、将来を予測して、今何をすべきかを考える。そのことで貢献・発展する分野もあります。

一方で、社会には必ず想定外のことが起こります。基礎研究をしっかりしておくことで、想定外のことが起こった時に、それが何であるかを理解・説明・対応していくことも研究者にとっては大事です。

河合社長想定外のことに対応できる多様性のある研究もトップレベルの研究になるわけですね。ビッグデータは、その「想定外」を減らすことに貢献できるかもしれません。ほかにも、2030年に向けて、具体的な貢献が見えている技術は多いと思います。IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、そして5Gといった技術は、人にやさしい形に変化していき、より良い社会づくりに貢献すると思います。

しかし、技術革新が新しい課題を生むこともあります。例えば自動運転技術であっても、さまざまなレベルがあり、2020年頃から実用化されたとしても、その後、新たな課題が生じる可能性もあります。このようにイノベーションによって新しく生まれてくる課題を、さらなるイノベーションで解決していく努力は引き続き必要になると考えています。

特にポイントだと考えているのはエネルギーです。IoTが進展していくと、膨大な情報量を蓄積・処理するために、従来とは比べ物にならないほどの大容量のサーバーが必要になり、消費電力も膨大になります。その点で、省エネを担うデバイスの製造に貢献する装置やサービスを提供していくことは、当社の企業理念にも合致しており、知のフォーラムとも連携していきたい分野です。

早坂理事省エネを担うデバイスの大切さは、私自身が研究で実感しています。例えば気象衛星「ひまわり」から送られてくる映像のデータ量は1年間で200テラバイトにものぼります。何年も運用していれば貴重なビッグデータになり、実際に近年の気象予報の精度向上に貢献しているのですが、この情報量を送信・蓄積・解析するためのハードウエアの進歩、特に半導体の進歩は欠かせません。

また、情報は集めるだけではなくて「どう使うか」という視点も重要です。大量のデータをどう解釈して実際に社会に役立てるか。有効活用できる情報にしていくためには、自然科学や工学だけではなく、社会系分野の発想も必要になります。この点でも、知のフォーラムで重視している文理融合の研究は非常に大切だと考えています。

早坂教授と河合社長の対談の様子

「時間」や「倫理」がキーワードに

河合社長私は知のフォーラムにおける文理融合の研究テーマの中で、テクノロジーアセスメントの重要性が今後さらに増していくであろうとあらためて感じました。

例えば、ゲノム解析などの医療技術でもITが活用されています。そのために、半導体が搭載されたデバイスは人間に近いところ、もっと言えば体内にまで入るようになりました。そうなってくると、今まで以上にしっかりとしたリスク分析をしなければいけません。

AIやドローンのような最新技術も、非常に有用である一方、使い方によっては恐ろしい問題を起こすかもしれません。技術活用における倫理的な課題に対して、何らかのインターロックをかけられる仕組みは必要ですし、技術者・研究者には「well-being」という概念をしっかり持ってほしいと思います。

早坂理事「well-being」な社会を達成するためには、時間スケール(規模や尺度)の考慮も大事です。気候変動や温暖化がなぜ問題になっているかというと、私たちや私たちの子ども・孫がまだ生きている間にとんでもないことが起こるのではないかと言われているからです。1000年単位の話ではなく、せいぜい数十年の中でも、科学者は何が起きるか正確には予測できていない。そうなると、誰もが不安になります。

技術開発や産業を新しくする上では、人間の寿命や自然現象の変化のスピードといった、時間スケールも考慮して対策を考えていくべきです。

専門性を磨くために
多様性を大切にする

河合社長当社が東北大学を応援している1つの理由に、多岐にわたる学術的な知見を有している点が挙げられます。専門性を磨き、同じビジネスセグメントを深掘りする場合でも、多様性は大切です。1つのことを考える際に、自分の視点以外にも、多角的な視点があるかもしれない。ビジネスにおいて、そういう気付きを得るためには、さまざまな場所や部署での経験やお客さまとのコミュニケーションが必要です。知のフォーラムでは、若い学生と会話する、海外から来た研究者と会話をする、という新しい体験が得られます。

専門性を磨くにしても、イノベーションを生むにしても、コラボレーションは大変重要であり、知のフォーラムはそのような機会を提供いただける場として期待しています。

早坂理事研究者の育成を考える上では、幅広さも重要ですが、前提は基礎学力だと考えます。その上で異なる分野の人との共同研究などに発展するべきだと言っています。東北大学では、異なる分野の研究者がグループをつくって研究する「学際研究重点拠点」というプログラムがありますが、研究テーマはトップダウンではなく、ボトムアップで提案してもらっています。さまざまな立場の人と交流することで刺激を受けることが大事なのは、企業も研究も同じです。企業の方とコミュニケーションをとると、その柔軟性や適用力にハッとさせられることがあります。その部分は刺激ですね。

以前セスナ機を使った観測実験をおこなった際に、航空会社の方に「観測に使うならば古い機体の方がいい」とアドバイスをいただきました。最新の機体は燃費効率を考慮して構造が最適化されており、観測器を付ける余地がない。古い機体ならば、エンジンや強度も余裕をもった設計になっているので、追加が可能ですよ、と。

これは、人材に関しても同様のことが言えるなと感じました。最適化が行き過ぎると、少しの環境の変化にも適応できなくなってしまう。そういう「遊び」みたいな柔軟性・適用力の必要性について、企業の方とお話をしていると気づかされることがあります。

河合社長企業側からすると、研究者の方々は、原理原則に関する基礎知識を持っていらっしゃる。ですから当社社員には、知のフォーラムでの交流などを通じて、それらの原理原則をしっかり把握してほしいと思います。その部分で間違えてしまうと、いくら技術開発をしていても成果が大きく違ってしまいます。

信頼される組織になるために
理念を貫く

早坂理事最後に今後の展望についてお話しします。大学は、研究と人材育成を通じて、社会から信頼される組織になることを使命としています。研究者コミュニティや産業界、地元地域。さまざまなステークホルダーから信頼されるような大学になり、今日より明日が良くなると思ってもらえるようなことを伝えたり、実際に技術開発したり、知識を提供したりといったことで貢献していきたいのです。

知のフォーラムの活動は、その目標に合致していますし、今後はさらに社会にインパクトがあるテーマを進めていこうと考えています。

河合社長当社にとって、知のフォーラムで得られる知見や刺激、多様性は本当に価値のあるものです。今後も基本理念である「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献する」ことを追求し達成するために、この価値を広げていきたいと考えています。

東北大学 知の館(TOKYO ELECTRON House of Creativity)
東北大学 知の館(TOKYO ELECTRON House of Creativity)