CEOメッセージ
ステークホルダーの皆さまには、平素よりご支援とご愛顧を賜り、心から感謝申し上げます。東京エレクトロンは1963年の創立以来、事業環境の変化に素早く対応しながら、時代をリードする独創的な技術で半導体産業の発展に貢献し、成長してまいりました。今日の当社があるのも、ひとえに皆さまのご支援のおかげでございます。当社は「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念の実践を通じ、中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上に取り組んでおります。
当社を取り巻く事業環境
近年の生成AIの登場に伴うAI利活用の一層の拡大に見られるように、デジタル技術と私たちの暮らしやあらゆる産業との関係は、これまでにないほど密接になっています。
これに伴い、半導体の役割とその技術革新の重要性がますます高まっています。半導体デバイス市場は、2024年に約6,300億米ドル*¹になりましたが、2030年頃には1 兆米ドル*²程度の市場規模に達すると見込まれています。
一方、AIを駆使したさまざまなアプリケーションが今後誕生し運用されていくにあたり、高い情報処理能力が必要となることに加えて消費電力も増加していくことが予想されており、環境負荷の増大が危惧されています。そのため半導体には、高速、大容量、高信頼性に加え、低消費電力を実現する革新的な技術が必要とされています。半導体デバイスの技術革新には、付加価値の高い新装置と技術サービスが不可欠であり、当社が事業を展開する半導体製造装置市場は今後も大きく成長していくものと予想しております。
出典: 世界半導体市場統計 (WSTS)
当社による試算
ビジョンの実現と中期経営計画
当社は、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」というビジョンを掲げています。これは、“CSV”(Creating Shared Value)*¹の考え方に基づいています。どのような状況でも経済活動が止まらない、強くしなやかな社会の構築に向けて、デジタル化と地球環境保全に向けた脱炭素化を支える半導体の技術革新に半導体製造装置メーカーとしての専門性を生かして貢献することを、当社としてのCSVすなわち“TSV”(TEL’s Shared Value)と定め、社会的価値と経済的価値の創出に努めていきます。
ビジョンの実現に向けた中期経営計画として、当社は、2026年度までに、売上高3兆円以上、営業利益率35%以上、ROE30%以上を目指す財務目標を設定しております。米中対立や関税、ロシア・ウクライナ戦争や中東での紛争等の地政学的な動向、世界的なインフレなど、注視すべきリスクはありますが、未来に向けた半導体の重要性は変わりません。
当社は、業界最大の装置出荷実績(累計96,000台以上*²)および業界最大の特許保有数(約25,000件*²)に基づく幅広い製品ラインアップを軸に、半導体のスケーリングと先端パッケージングの両領域において付加価値の高い新製品と技術サービスを提供することで、中期経営計画の達成を目指しております。
これに加え、当社の強みをさらに磨き、将来の成長機会を最大限に取り込むべく、2024年度からの5年間で研究開発投資1.5兆円以上、設備投資7,000億円以上、人材採用はグローバルで10,000名とする成長投資計画を設定し、取り組みを進めております。
企業の専門性を活用して社会課題を解決することで、社会的価値と経済的価値を創出し、企業価値の向上と持続的な成長を実現するという考え方
2025年3月末時点
人材に関する取り組み
当社では、「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という考えのもと、社員が能力を最大限に発揮できるよう、社員の意欲と会社へのエンゲージメントを高めるため、次の5つのポイントからなる「やる気重視経営」に取り組んでいます。
また、「ONE TEL, DIFFERENT TOGETHER™」というスローガンのもと、3GすなわちGlobal (国籍)、Gender (性別)、Generation (世代) を意識しながら、人材の多様性の確保に取り組むとともに、ワーク・ライフ・バランスの向上、社員のキャリアパスに向けた施策や教育プログラムの充実化を進めています。
さらに、当社は、業界のリーディングカンパニーとして、将来の半導体産業を担う学生や研究者などの育成もミッションと捉え、積極的に取り組んでおります。日米の大学によって構成される「半導体の人材育成と研究開発に関する未来に向けた日米大学間パートナーシップ (UPWARDS*)」に参画するなど、さまざまな産学連携プログラムの支援を通じ、次世代の半導体人材の育成に寄与することで、半導体産業のサステナブルな発展に貢献してまいります。
やる気重視経営の5つのポイントと主な取り組み
UPWARDS: U.S.-Japan University Partnership for Workforce Advancement and Research & Development in Semiconductors
環境に関する取り組み
社会において地球環境保全の重要性がより一層高まる中、当社では、持続可能な社会の実現に貢献すべく、あらゆる事業活動を通じて環境負荷低減、とりわけ脱炭素化に取り組んでいます。当社は、2040年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする「ネットゼロ」目標を設定しています。その活動の一環として、全事業所における再生可能エネルギー使用比率100%を目指していますが、国内では2022年度に達成、グローバルにおいても89%(2024年度)まで進捗しています。
また、当社内のみならず、お客さまやパートナー企業さまと連携しながら、製品のライフサイクル*¹全体について環境負荷低減を進めております。その一環として、環境にフォーカスしたイニシアティブ「E-COMPASS*²」を推進しており、サプライチェーン全体で半導体の技術革新と環境負荷低減に取り組んでおります。
製品のライフサイクル: 製品の企画・開発・設計から、調達、製造、物流、お客さまにおける使用時、メンテナンス・サービス、廃棄までのバリューチェーン
E-COMPASS: Environmental Co-Creation by Material, Process and Subcomponent Solutions
ガバナンスに関する取り組み
当社は、短期および中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を目指し、「“攻め”と“攻め”のガバナンス」を基本姿勢として経営をおこなっております。1つ目の“攻め”は、「“攻め”の事業活動」です。「利益は製品とサービスの価値の大きさを示す尺度」であると捉え、革新的な技術をもつBest Productsと付加価値の高いBest Technical Serviceの提供により、常にワールドクラスの営業利益率とROEを追求していきます。「“攻め”の事業活動」を推進するにあたっての重要事項として、当社では14項目のマテリアリティを特定し、優先して取り組んでおります。
2つ目の“攻め”は、「“攻め”の経営基盤構築」です。すべての企業活動の基本である、安全・品質・法令遵守や社員をはじめとするステークホルダーとのエンゲージメントやセキュリティの強化・向上などについても、当社の強みとすべく追求していきます。事業を遂行する上で直面し得るリスクとして16項目を特定(2024年度に新たに4項目を追加)し、影響を最小化するのみならず事業機会にもしていくべく、適切なリスクマネジメントをおこなっています。
この「“攻め”と“攻め”のガバナンス」で、半導体の技術革新に貢献するとともに、地球に必要とされる真のグローバルエクセレントカンパニーを目指してまいります。
皆さまに愛され信頼される企業を目指して
半導体が実現する豊かな未来、進化し続ける半導体。それを支える製造装置市場は新たな成長フェーズに入りました。東京エレクトロンは世界No.1を目指して、これからも挑戦と進化を続け、当社だからできる付加価値の高い世の中にない技術を創造し、社会に提供してまいります。そして、すべてのステークホルダーに愛され、高く信頼され、夢と活力のある会社であり続けられるよう努めてまいります。
引き続き、皆さまのご支援を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。
東京エレクトロン株式会社
代表取締役社長・CEO
本メッセージは2025年9月発行の統合報告書CEOメッセージより転載しています。