TOKYO ELECTRON LIMITED

パターニング技術による微細化への取り組み

半導体集積回路は、微細化とともに約50年間進化し続け、その高速化、低消費電力化、低価格化を実現してきました。今や配線幅は20nmを下回り、トランジスタは1mm2の面積に1億個以上が集積されつつあります。東京エレクトロンは、更なる微細化を実現すべく、さまざまな取り組みを展開しています。

半導体の進化を支える微細加工技術と、その課題

半導体の最小加工寸法は露光波長に依存しており、露光の光源が短波長化するのに伴い、微細化が継続されてきました。しかし短波長化は、技術的にもコスト的にも年々難しさが増してきており、ArFの液浸露光技術が2006年頃に量産導入されて以来、それに替わる露光技術の量産実用化に至っていません。そこで、ArF液浸技術の延命方法として、成膜、塗布、エッチング、洗浄などの各種プロセス技術を駆使することで微細化を実現する、「パターニング技術」が発達してきました(図1)。

図1 半導体の微細化

パターニング技術の導入と課題

最初に、「マルチパターニング技術」が導入されました。従来1回である露光を複数のパターンに分割し、あとでそのパターンを重ね合わせることで、単露光の微細化限界を超えることが実現されました。しかし分割数が増えるのに伴い、重ね合わせのずれが積算し、位置合わせが徐々に困難になりました。また、微細化の進展に伴い、加工寸法のわずかなひずみや位置ずれも許容できないレベルになってきました。例えば、配線の直線性(粗さ)やパターン倒れなどによる加工寸法の変動や、複数の露光における相互の位置ずれが累積すると、加工精度が著しく低下します(図2)。

そのため、マルチパターニングだけでは、さらなる微細化が困難になりました。
そこで、マルチパターニングに加えて、自動で位置整合が可能となるパターニング技術が求められるようになりました。デバイス構造やプロセスフローを高度化した様々なパターニング技術が考案され、導入されるようになりました。以下、メタル配線層の加工例を紹介します。

図2 パターニング技術の課題

SADP - 側壁への薄膜形成を用いた微細化技術

SADP(Self-Aligned Double Patterning)は、露光装置で形成したグリッド構造(縦に密集した壁)の密度を2倍にする(ピッチを半分にする)技術です。まず露光装置で形成したグリッド構造全面に、膜厚が均一な薄膜を形成します。次に側壁以外の部分の薄膜を除去します。さらに最初のグリッド構造の壁を除去すると、側壁にあった薄膜のみが残ります。側壁両面の薄膜が残りますので、当初の2倍のグリッド構造を構築することができます(図3)。

図3 SADP技術

SAQP – SADPを応用した微細化技術

SAQP (Self-Aligned Quadruple Patterning)は、SADPを2回繰り返すことで密度をさらに倍増する技術です(図4)。露光寸法がピッチ80nmであれば、SAQPによりピッチ20nmにすることが可能です。露光装置、成膜装置、エッチング装置、洗浄装置の連携により、微細化を実現します。SAQPを実現する様子をビデオで紹介します。

図4 SAQP技術

SAB – エッチング選択比による微細化技術

SADP/SAQPの技術により、微細なグリッド構造を構築することができました。これを回路の形状にするためには、グリッド構造をcut(切断)またはblock(接続)する必要があります。
SAB (Self-Aligned Block)は、グリッド上に形成されたパターンに、精度よくcut/blockを行う技術です。まず、そのグリッドとは垂直方向に、新たなグリッドを形成します。その際、エッチング性能の異なる3種類の材料で構成します。次に、露光装置でcut/blockを行うところにマスクを形成します。従来このマスクの形成には厳しい寸法精度が求められますが、3種類の材料のエッチング選択比の違いを利用することで、必要な材料のみに加工を施こすことが可能です。露光のずれの許容値は、従来よりも3倍大きくなります(図5)。
SADP/SAQP技術とSAB技術を用いることで、メタル配線層の微細化が実現します。

当社は、幅広い各種プロセス装置群を保有している強みを生かし、総合力を活用した開発を行っています。新たな構造や材料の導入、次世代露光装置であるEUVの実用化に向けたさまざまな技術課題に対し、ブレイクスルーをおこすための研究・開発を日々重ねています。日本国内の主要開発拠点を中心に、ナノエレクトロニクス研究で世界をリードするベルギーの研究機関imecや、各種材料メーカーとの共同開発を通じて、更なる微細化の促進に貢献し続けます。

(Ken Nawa, Process integration Center, Tokyo Electron Technology Solutions Limited)

図5 SAB技術