TOKYO ELECTRON LIMITED

CEOメッセージ

信用と信頼を礎にさらなる成長を目指して

ステークホルダーの皆さまには、平素よりご支援とご愛顧を賜り、心から感謝申し上げます。東京エレクトロンは昨年2023年11月11日に創立60周年を迎えました。1963年の創立以来、半導体産業の発展に貢献しこれまで成長を実現できましたのも、ひとえに皆さまのご支援のおかげでございます。当社は信用・信頼の構築を第一に「最先端の技術と確かなサービスで、夢のある社会の発展に貢献します」という基本理念の実践を目指し、中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上に取り組んでおります。
1947年にトランジスタが誕生して以来、PCやモバイルなどの電子機器、またインターネットやプラットフォームサービスなどが発展し、近年では本格的なデータ社会への移行が進んでいます。今後はAIや自動運転、バーチャルリアリティーなど、大規模な計算を必要とするアプリケーションがテクノロジードライバーとなり、市場がさらに成長していくことが予想されます。これらの動きを支えているのはまさに半導体の技術革新です。
このような状況において、半導体市場は2030年には1兆米ドルになることが見込まれています。これまで76年かけて5,300億米ドル規模に成長した市場が、わずか6~7年で約2倍になるということです。一方、さまざまなアプリケーションの運用においては高い情報処理能力とともに消費電力も増加していくため、地球環境保全への影響が危惧されています。そのため半導体には高速、大容量、高信頼性に加え、低消費電力を実現する革新的な技術が必要とされています。
半導体市場の成長に伴い、2022年から2026年までに世界で約100の半導体工場が新たに稼動するという予測もあり、当社が事業を展開する半導体製造装置市場もさらに拡大していくと考えられます。

攻めと攻めの経営により継続的に企業価値を向上

ビジョンの実現と中期経営計画

どのような状況でも経済活動が止まらない、強くしなやかな社会の構築に向けて、デジタル化と地球環境保全に向けた脱炭素が世界の潮流になっています。当社は半導体製造装置メーカーとしての専門性を生かし、半導体の技術革新を推進することで、デジタル化と地球環境保全の両立に貢献すべく、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」というビジョンを掲げています。このビジョンは企業の独自の資源や専門性を活用して、社会課題を解決する“CSV” (Creating Shared Value) の考え方に基づいています。当社としてのCSVを“TSV” (TEL’s Shared Value) と定め、事業活動において社会的価値と経済的価値の創出に努めていきます。
TSVを実践する中で、中期経営計画における財務目標として、2027年3月期までに売上高3兆円以上の規模で営業利益率35%以上、ROE30%以上を設定しております。「利益は製品とサービスの価値の大きさを示す尺度」であると捉え、革新的な技術をもつBest Productsと付加価値の高いBest Technical Serviceの提供により、ワールドクラスの営業利益率とROEを目指していきます。
これらを追求することは、当社における“攻め”の経営です。同時に、企業の継続的な成長に向けて不可欠なSafety、Quality、Complianceなどにも注力していきます。これらの項目は一般的には守りであると捉えられていますが、より積極的に取り組むことで当社の強み、すなわち“攻め”にしていきたいと考えています。このような“攻めと攻め”の経営を推進し、私のCEOミッションでもある短期および中長期的な利益の拡大と継続的な企業価値の向上を確実に実現していくことで、真のグローバルエクセレントカンパニーを目指してまいります。

マテリアリティを軸とした事業活動

当社では中期経営計画の達成を目指すにあたり、事業において優先して取り組む重要事項をマテリアリティとして特定しています。2024年3月期には、これまでのマテリアリティである「製品競争力」「顧客対応力」「生産性向上」「経営基盤」について、当社における意義や社会における意義を考慮し、より細分化した内容に見直しをおこないました。

さらなる成長に向けた取り組み

当社の強みは、①半導体の微細加工に必要な成膜、塗布・現像、エッチング、洗浄という連続した4つのキープロセスに製品をもつ世界で唯一のメーカーであること、②半導体の進化に必要なEUV露光用の塗布現像装置のシェアが100%であること、③当社の製品群は各セグメントで強いポジションにあり、いずれも市場シェア1 位、もしくは2位を獲得していること、④世界最大の出荷実績 (約92,000台) を通じて培ったお客さまとの絶対的信頼関係のもと展開する技術サービスとマーケティング、⑤特許保有件数が23,000件を超えており業界においてグローバルNo.1であることが挙げられます。
これらの強みを生かし、中期経営計画の達成とその後のさらなる成長に向けて、2025年3月期からの5年間で研究開発投資1.5兆円以上、設備投資7,000億円以上を計画しています。
“ナンバーワン”、“オンリーワン”の強いnext-generation productsをタイムリーかつ継続的に創出することは、当社の生命線です。自社の研究開発に加え、お客さまやコンソーシアムとの協働などにより世界一の性能をもつ付加価値の高い装置の提供に努め、研究開発の成果を効率的に利益につなげていきます。
またビジネス規模の拡大とともに、生産効率を向上することが重要です。デジタルトランスフォーメーションの展開により、さまざまなオペレーションにおける業務の標準化や平準化の推進、製造現場におけるSmart Manufacturingの導入などを積極的におこなっていきます。

E-COMPASSによる環境負荷の低減とネットゼロ

社会において地球環境保全の重要性がより一層高まる中、当社では環境にフォーカスしたE-COMPASSにより、さまざまな活動を展開しております。具体的には以下の3つの観点において、お客さまやパートナー企業さまと連携し、サプライチェーン全体で半導体の技術革新と環境負荷低減に取り組んでおります。

  • 半導体の高性能化と低消費電力化に貢献
  • 装置のプロセス性能と環境性能の両立
  • 事業活動全体におけるCO₂排出量の削減

これらの取り組みを進める中で2023年12月には、当初2050年としていた長期環境目標ネットゼロの達成時期を2040年へ前倒しし、温室効果ガスの削減に努めています。

やる気重視経営の実践

「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という考えのもと、社員が能力を最大限に発揮できるよう、次の5つのポイントを中心に社員のやる気を重視した経営に取り組んでいます。

また「ONE TEL, DIFFERENT TOGETHER™」というスローガンのもと、3G、すなわちGlobal (国籍)、Gender (性別)、Generation (世代) を大きなテーマとして捉え、人材の多様性の確保に取り組むとともに、ワーク・ライフ・バランスの向上、社員のキャリアパスに向けた施策や教育プログラムの充実化
を進めています。

サステナブルな業界の発展を視野に

当社は、半導体製造装置のリーディングカンパニーとして社内のみならずサプライチェーンマネジメントと未来を背負う学生や研究者などの育成もミッションと捉え、積極的に取り組んでいきます。サプライチェーンについては先に述べたE-COMPASSの一層の充実化を図るとともに、人材育成の強化については国内外の大学とのコラボレーションを含む産学官連携プログラムの推進などを通じ、業界のサステナブルな発展に貢献してまいります。

皆さまに愛され信頼される企業を目指して

半導体が実現する豊かな未来、進化し続ける半導体、それを支える製造装置市場は新たな成長フェーズに入りました。東京エレクトロンは世界No. 1を目指して、これからも挑戦と進化を続け、当社だからできる付加価値の高い世の中にない技術を創造し、社会に提供してまいります。そして、すべてのステークホルダーに愛され、高く信頼され、夢と活力のある会社であり続けられるよう努めてまいります。
引き続き、皆さまのご支援を賜りたく、何卒よろしくお願い申し上げます。

東京エレクトロン株式会社
代表取締役社長・CEO

河合 利樹

本メッセージは2024年9月発行の統合報告書CEOメッセージより転載しています。