Meet TEL「技術も、キャリアも、いつも考えの中心にあるのは持続可能性」
Robert
Clark
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「企業の成長は人。社員は価値創出の源泉」という東京エレクトロン(以下:TEL)の考えのもと、世界中のTELグループでは多様な人材が活躍し、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」というビジョンの実現を目指しています。Meet TELでは、グローバルに活躍するTELグループの社員をご紹介します。
ニューヨーク州アルバニーにあるTEL Technology Center, Americaにてテクニカルスタッフのシニアメンバーとして在籍するRobert Clark(以下: Rob)は、薄膜プロセス技術グループのディレクターを務めている。現在はベルギーのimecで、薄膜を中心とするオンサイトリサーチプログラムの立ち上げや開発を担当しており、今後1~2年で複数の新しい研究開発プロジェクトを手掛けることになっている。
略歴
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Robert Clark
バージニア工科大学で学士号と修士号、カリフォルニア大学アーバイン校で化学の博士号を取得。専攻は合成無機化学と有機金属化学。2000年よりカリフォルニアにある工業用のガスや化学薬品の販売を主な事業とする企業を経て、2006年にTEL Technology Center, Americaに入社。
これまでの経歴について
「以前の会社では、高誘電率膜と金属電極膜の化学気相成長法(CVD)と原子層堆積法(ALD)の前駆体*の開発を担当していました。大量生産におけるALD High-k(高誘電率)メタル電極膜に使用される前駆体の開発に協力し、新しいCVDおよびALDプロセスの開発やテストも経験しました。2006年にTEL Technology Center, Americaに入社してからは、アルバニーでプロセスエンジニアとしてHigh-k ALDプロセスに携わりました。その後、何回かの昇進を経て、カリフォルニアに異動しました。TELに入社してから過去18年間、一貫してTEL Technology Center, Americaの一員として薄膜の研究に携わっています。」
半導体研究の中心的存在を担うのは、ヨーロッパ
「半導体の世界は巨大で、太陽光、照明、アナログおよびデジタルコンピューティング、メモリなどにおよびます。しかし、半導体やナノテクノロジーのプロセス技術の最前線にいるのは、最先端のロジックおよびメモリチップ開発を手掛ける半導体メーカーです。過去24年間、私はそこに注力してきました。imecは、半導体プロセスの技術開発において名高い研究コンソーシアムとしてこの業界で広く認められている研究開発機関です。大手デバイスメーカーをはじめとする名だたる半導体関連企業のほとんどがimecと協業しており、TELも含め半導体関連のサプライヤーもimecのパートナーです。多くの点で、特にロジックの開発に関して、imecは業界の将来の方向性を切り拓いています。
面白いのは、この業界はアジアが製造の中心で、米国がおそらくデザインの中心であるのに対して、半導体研究の中心はヨーロッパ、すなわちimecです。ですからimecは非常にユニークな場所です。ムーアの法則を維持しつつ、さらにそれを発展させるために、私たちは絶えず取り組んでいます。」
半導体製造に欠かせないALD/ALE
アメリカ真空学会(AVS)が主催するALD/ALEカンファレンスの委員会のメンバーとしても活躍するRob。8月にフィンランドのヘルシンキで開催されたALD/ALE 2024では、半導体技術の原子スケール処理に関するチュートリアルをおこなった。
「ALEは原子層エッチングの略で、ALDと逆の関係にあります。ALD/ALEカンファレンスとワークショップは、ALDとALEのそれぞれ別の委員会があります。私はALD委員会に所属していますが、ALEのほうにも貢献しています。私たちはALD/ALEテクノロジーの発展とカンファレンスを促進するため、研究者が研究内容を提出し、学会で発表することを奨励しています。メインの仕事は、提出されたすべての論文要旨を評価し、どれを採用するかを決めることです。もちろん、その後はカンファレンスを計画したり、セッションの議長を務めたりする必要があります。毎年大量の応募があり大変な作業ですが、ALD/ALEおよびその関連プロセスは半導体製造の将来にとって不可欠なので、最終的にはコミュニティ全体の恩恵につながると考えています。」
テクノロジーの進歩の先に
「私の考えの中心には、いつも持続可能性(サステナビリティ)があります。いかに持続可能性を実現できるかについて、もっともっと考える必要があると思っています。例えば、拡張性がない、あるいは環境に害をおよぼすような技術は持続可能ではありません。同じように、バランスの取れていない仕事と私生活も持続不可能です。私は私生活においても、持続可能な友情や人間関係を重視しています。公平、平等、効率、バランス、尊重、保全はすべて、持続可能性の必要性から生まれます。私たちが持続可能な社会を創造するためにテクノロジーを集中させることができれば、地球全体の生活とよりよい未来を可能にすることができます。」
「持続可能な仕事を追求するうえで、私にとってかけがえのないインスピレーションとなっているのは、妻、2人の子供と2匹の犬と一緒に過ごす時間にあります。ヨーロッパを旅行して楽しい時間を過ごしたり、たくさんの国や都市を見てきました。本当に美しく感動的な場所ばかりで、見るものや体験するものがたくさんあります。家族とは、よくハイキングやウォーキング、サイクリングに出かけています。時間があるときは、読書やゲーム、時にはビリヤードをしてリラックスして過ごすのが好きです。」

エンジニアを目指す皆さんへ
「私は、個人が小さな要件や暫定的で個別の目標を満たすことに夢中になりすぎて、全体として何を達成しようとしているのかを見失ってしまうことが、最大の間違いだと考えています。個別の状況では機能したとしても、全体的な開発においてはまったく機能しないソリューションを提供してしまうということがないように、解決しようとしている問題について深く考え、あらゆる側面と角度から検討する必要があります。これは私が得意なことの1つでもありますが、即座に答えを出すのではなく、深く考えてから結論を出すようにしています。例えば、他に持続可能な解決策が考えられる場合、1番手っ取り早い選択肢に飛びついてしまうことがないようにしています。
どんなことでも成功したいのであれば、どんなに才能があっても努力する必要があります。成功するキャリアを築くには、新しいスキルを習得し、身につけることができるように、自分が好きで、やりがいがあり、成功したときに楽しめることが大切です。そして、これもまた持続可能性に関わることですが、長期間続けられる何かを見つける必要があると思います。また、自分自身が所属するチームが何をしようとしているのか、何を達成しようとしているのか、全体像を描くようにしてみてください。すべてを説明するには1,000語、あるいは100万語の長さになるかもしれませんが、そのイメージを描き、常にアップデートして心に留めておくようにしてください。」
- 前駆体 半導体の薄膜形成プロセスにおける主要なガスなどの原料