半導体産業の未来と人
Technology

東京エレクトロン(以下:TEL)は、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」というビジョンの実現を目指し、アカデミアや外部機関などさまざまな協業を通じて、ワールドワイドで研究開発を推進しています。#学会発表では、半導体をとりまく技術トレンドや、学会発表の現場、発表者の声を紹介します。 今回は、SEMICON Japan 2024における東京エレクトロン 代表取締役社長・CEO 河合による招待講演のハイライトをご紹介します。
略歴
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1986年 当社入社 2010年 当社執行役員 2015年 当社取締役副社長 兼 最高執行責任者(COO) 2016年 当社取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)(現任)
1.半導体市場の成長と社会課題
社長の河合は、まず半導体市場の成長と近い未来の社会課題を紹介した。その進展は、クラウド・エッジコンピューティング、IoT、Industry 4.0が牽引した1st waveから、AIや自動運転、AR/VRなどをドライバーとする2nd waveへの時代に入っている。それに伴い、半導体市場は2030年までに1兆ドルを超えると予測されている。特にAIは、1st waveの時代から蓄積されたデータを活用して、学習や推論の精度が劇的に向上している。そして技術革新はさらに進み、コンピューティングに対する需要は今後も拡大する。それを支える通信インフラも進化する。量子コンピューティングや、6G/7Gの実用化が3rd waveを生み、半導体市場もさらに成長し、2050年には5兆ドル規模になるというSEMIによる予測もある。つまり現在の半導体市場の実に10倍、極めて大きな成長ポテンシャルがあると言える。
一方で、消費電力も指数関数的に増大していくことが予想されている。消費電力が今のペースで伸び続けると、20-30年後には電力が足りなくなる可能性が指摘されている。生成系AIや自動運転など、大量のデータ解析を必要とするアプリケーションが普及していくにつれ、この傾向はさらに速まる可能性もある。

2.デジタル社会と地球環境保全の両立に向けて
話は半導体が支える未来社会に移る。現在の社会的な潮流として、デジタル化と地球環境の保全、すなわち脱炭素化の両立を示す「デジタル×グリーン」が世界共通の目標(共有価値)となっていることを紹介した。
ICT(情報通信技術)などのデジタルの力によってグリーンな社会(地球に優しい社会)を実現していく“Green by Digital”と、データセンターなどのデジタル・インフラの省エネルギー化を進める“Green of Digital”。さまざまなデジタル機器の中心的な役割を果たしている半導体は、私たちの生活を支える多くのテクノロジーの中心的役割を担っており、「デジタル社会の発展を支える基盤」であると同時に、「環境保全にも寄与する重要な技術」でもある。半導体はより高速、より大容量、より高い信頼性、そして、低消費電力に進化し続けることが求められている。

3. 「デジタル×グリーン」を実現するための半導体製造
社会を動かし、環境を守る半導体。「デジタル×グリーン」を実現するための半導体製造には、2つのアプローチがある。一つは、半導体の進化の代名詞でもあるスケーリング(微細化)、すなわちチップ上での半導体の集積度を高めていくもの。もう一つはヘテロジニアス・インテグレーション。プロセッサとHBMの組み合わせのような、複数のチップや機能を一つのパッケージに集積する技術だ。これらのアプローチが組み合わさった具体例が、AI半導体だ。AI半導体は、前工程とアドバンスドパッケージング工程の2つの工程を経てつくられ、両方の工程でさらなる技術革新が期待されている。今後、前工程は年平均成長率(CAGR) 10% (2023-2030)*、アドバンスドパッケージング工程に含まれるテスト/アッセンブリ市場もCAGR 14% (2023-2030)*と、どちらの市場も大きな成長が見込まれている。 *Source: TechInsights

TELはこれからも半導体の技術革新への貢献を通じて「デジタル×グリーン」の実現に寄与するべく、革新的な技術をもつBest Productsや付加価値の高いBest Technical Serviceを提供していくことで企業として持続的な成長を目指していく、と力強いメッセージを発信した。
4. 私たちの未来をともにつくる人材の重要性
河合は、サステナブルな社会の発展、業界、そして会社の成長のためには、人材育成が必要不可欠だと強調する。加えて、社員それぞれの経験や知識を生かせるフィールドが増えているため、多様な人材が必要とされていることを紹介した。前述の通り、今後10倍近くの成長ポテンシャルがある市場に対して、重要なのは、成長すること。例えば、製造においては、AIとロボティクスを活用したデジタルトランスフォーメーションが必要となる。それにともないAIやロボティクスなど、さらに幅広い分野の人材が必要になっている。
TELは「半導体の技術⾰新に貢献する夢と活⼒のある会社」というビジョンのもと、企業の成長は人。社員は価値創出の源泉と位置づけている。そこで重視しているのが、「社員のやる気」と「人材育成」だ。
やる気を重視する経営の5つのポイント: 1. 会社や仕事が社会をより良く変える力をもつ実感を大切にする(TEL’s Shared Value) 2. 将来への夢と期待(中期経営計画) 3. チャレンジの機会の提供(R&Dと設備投資) 4. 公正な評価と競争力のある報酬 5. 風通しの良い職場環境(社員とのコミュニケーション)


TELは、産学連携やインターンシップなどさまざまな取り組みを通じて人材育成に取り組んでいることも紹介した。国内外の大学や高専と連携し、AIやプロセスや材料をはじめ、最先端のテーマに取り組むとともに、共同研究を通じて学生の育成を大切にしている。また、国際的な取り組みとして、日米の11大学が参加し、半導体の人材育成と研究開発に関する未来に向けた日米大学間パートナーシップ「UPWARDS」を紹介。将来の半導体の技術革新を支える学生、研究者などのグローバルでの人材育成に努めていることも紹介した。そして、最後に学生に向けて、ぜひ半導体に関わる業界に興味をもち、この業界に飛び込んできていただければ幸いです、と力強いメッセージを述べた。(2025年1月時点の情報です。)
