TOKYO ELECTRON LIMITED

TELとともに半導体イノベーションを起こすNaidun-tech
— 研究室から事業化への道のり

Technology

左から Daniel Chen と Kyle Li

Naidun-tech のルーツは、台湾の国立中山大学の張廷昌教授の研究室から始まった。張教授は長年にわたり、半導体の欠陥不動態化*技術の高度化に取り組んでおり、当初は学術研究に専念するつもりだった。しかし、その方向性は、Daniel Chen と Kyle Li という 2人の教え子が提案した別のビジョンによって変わることになる。Daniel と Kyle は、大学の枠を越えて、その技術を社会実装へ広げるべきだと説得した。

研究室でのアイデアは、ほどなくして形になるタイミングを得た。電子部品の信頼性向上を目的とした Naidun-tech の超臨界流体(SCF)技術**は、革新的な技術の事業化を後押しする台湾政府主導のStartup Value Creation Program (SVCP)の支援を受けて、台湾の半導体エコシステムにおける成長環境を整え、足場を固め始めた。

*欠陥不動態化:半導体の中にあるトラブルの原因になる欠陥を反応や処理で働きにくい状態にして、電気の不具合や劣化を防ぐこと

**超臨界流体技術:物質を「超臨界状態」(気体と液体の性質を併せもつ状態)にして、その性質を使って材料の処理をおこなう技術

本記事は、台湾の新竹サイエンスパーク管理局 (Hsinchu Science Park Bureau、以下: HSPB)が発行した記事 を翻訳し、転載の許可を得て掲載しています。

最初の課題
リード投資家がいない資金調達の冬

学術研究から事業化への移行は、想定していた以上に過酷な道のりだった。創業初期の Naidun-tech は、創業者 2人が自己負担で資金をまかなっていた。会社のメンバーは、Daniel と Kyle のみ。2人にとって、それはすべてを投じる挑戦だった。

Daniel は、最大の課題は技術ではなく資金調達だったと振り返る。開発サイクルが長く、収益化までの道のりが遅い半導体装置のスタートアップは、ベンチャーキャピタル(以下:VC)を集めるのが難しいことが少なくない。

1年以上の間、2人は多数の投資家と面談を重ねた。フィードバックは一貫して前向きだったが、進展はなかった。誰もが「最初の評価額(initial valuation)を設定するリスク」を引き受けたがらなかったからだ。

Daniel は「最初の評価額設定に伴うリスクを取りたがる人はいなかった」と話している。忍耐を試され、極めて限られたリソースの中で、いかに事業を動かすかを学ぶ時期だった。

東京での転機
技術によって得た信頼

転機は、東京での展示会で訪れた。Naidun-tech のチームは、東京エレクトロン(以下:TEL)のコーポレートベンチャーキャピタル部門である TEL Venture Capital(以下:TEL VC)と出会った。当時、Naidun-techは規模も小さく、実績のある製品ももっていなかった。それでもTEL VC は技術の可能性を認識し、強い関心を示した。技術的な可能性をより深く理解し、TEL VC は会社への資金援助に踏み切る。

Daniel は、TEL の支援は会社の運用を立て直すためのサポート以上のものがあったと話す。それは、TEL が彼らを信頼しているという強いメッセージでもあった。転換社債型ローンによって、Naidun-tech は会社の規模の安定化と人材の採用を始めることができた。

しかし、その直後に2つ目の課題が現れる。台湾では大手半導体企業がエンジニア人材を強く引き寄せており、スタートアップは報酬面で太刀打ちしづらいのだ。

そこで Naidun-tech は研究機関に目を向け、新技術を社会実装させたいという情熱を原動力にするエンジニアを惹きつけた。Danielは、こうした初期メンバーを「同じ目標に向かって、一緒に踏み出してくれる信頼できる仲間」と表現している。

同社がまだ手探りの段階にあった時期、彼らは安定したキャリアを離れ、スタートアップに加わることを選んだ。創業者たちは、彼らのこの決断に今も深く感謝している。

Naidun-tech の歩みは、その後も平坦ではなかった。同社は当初、比較的参入しやすい6インチと8インチのウェーハに注力していた。しかし、パンデミック後の需要変化により、顧客が増設計画を縮小し、会社は自社の進むべき方向性を見直す必要に迫られた。

この段階で、TEL は投資家から戦略パートナーへと進化した。主要な半導体デバイスメーカーへの対応経験が豊富で、グローバルな半導体製造装置のリーディングカンパニーとして、TEL は業界での貴重な知見をもたらしたのである。

TEL からのサポートを受け、Naidun-tech は、先端半導体製造の業界標準である12インチウェーハプラットフォームへ転換する決断をした。若い企業がこのレベルに踏み出すには大きな課題だったが、TEL がハードウエア、ソフトウエア、システムレベルのリソースまで統合的に支援できたことで、Naidun-tech は開発サイクルを短縮し、試行錯誤にかかるコストを抑えることができた。

この転換は重要なアップグレードとなった。ローカルなスタートアップの域を超えて、Naidun-tech は競争力があり、グローバルな可能性を持つ開発企業として確立することにつながった。

文化の統合
日本企業と、台湾のスタートアップが出会うとき

TEL グループへの統合後、2つの組織間で文化の違いが摩擦を生むのではないかという疑問は自然と生まれた。Tokyo Electron Taiwanの戦略部門の Vice President である Allan Chen は、TEL について「典型的な日本企業とはかなり違う」とコメントしている。硬い上下関係がないことや、伝統的な企業組織でよく見られるような形式ばった雰囲気が強くない点を挙げている。

Daniel も、高い専門性を尊重する TEL の姿勢を挙げている。中核となる技術領域において、Naidun-tech は全面的な裁量を与えられ、事業の運営と革新に取り組むことができた。同時に TEL は、管理面、規範面だけでなく、社員のために安定して整った就労環境をつくり出している。

このようなアプローチで、専門性は専門家の手にとどまり、研究開発チームは中核開発に集中できる。ストレスとなる要因を減らし、中核開発に没頭できる状態を確保しているのである。Daniel は、「半導体の技術革新に貢献する夢と活力のある会社」というTEL のビジョンがチームに強く響いたことが、TEL グループ加入を決める重要な理由の一つだったとも付け加えている。

エコシステムの支援
スタートアップにとって最初の信頼の証

成長の過程では、HSPB と『竹青庭 (Young Entrepreneur’s Studio)』*が重要な役割を果たした。初期段階では、あらゆる支出を慎重に管理する必要があったため、オフィスの提供は単なるコスト面のメリットにとどまらず、立地という戦略的価値ももっていた。

Daniel は、竹青庭が主要なお客さまの拠点から車で 10〜20分の距離にあることを挙げ、技術デモの実施能力と顧客とのエンゲージメントを大幅に高められると話している。

さらに重要な点は、それが信頼の証になったことだ。HSPB が認める施設に拠点を置くことで、暗黙の了解、すなわち一定の裏付けが得られる。若いスタートアップにとって、これは「紙の上のアイデア」以上の存在であることを、顧客や投資家に示す助けになったのである。

こうした支援的かつ協働的な環境の中で、Naidun-tech は新竹を越えて、半導体イノベーションのグローバルな舞台へ踏み出すために必要な土台を築いていったのだった。

*竹青庭:新竹科学園区内に開設されたスタートアップ育成施設


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