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投資家向け情報

2018年5月29日 中期経営計画説明会 質疑応答集

CY2019のWFE*1市場について、アプリケーションごとに伸び率や額の見通しを伺いたい。

アプリケーションごとの伸び率や額については具体的な数字はお伝えしていないため、プレゼンテーション資料の14ページのグラフでおおよその傾向をご確認いただきたい。これまではDRAMのグリーンフィールド投資が旺盛だったが、CY2019は3D NANDの投資が増えると考えている。

プレゼンテーション資料の14ページのグラフによると、CY2019のWFE市場は前年に比べロジックとNANDが増え、DRAMが減るように見える。各アプリケーションの増減の背景は?

特にメモリの需要が強く、うちDRAMについてはメモリ顧客がCY2017後半から旺盛な投資を行っており、生産能力の増強が進んでいる。今後メモリ顧客は投資をDRAMからNANDへと切り替えると予想している。

CY2020にWFE市場の3割を中国が占めるとの予想に関連してお聞きしたい。中国地場の半導体メーカーによるメモリ投資は、CY2020にかけてゆるやかに増加するのか?

CY2020の中国における投資のうち、外国メーカーによる投資と中国地場メーカーによる投資はおよそ半々になると見ている。中国地場メーカー投資のうち、多くはメモリ向けになるだろう。

プレゼンテーション資料15ページの新財務モデルにおける2つのWFE市場規模想定のうち、ミッドポイントは$62Bケースの方で、$55Bケースはリスクシナリオという理解でよいか?

ご認識の通り、$62Bをメインシナリオと考えている。今後WFE市場がさらに伸びていくという確信があり、その備えとしての開発・設備投資もふまえた営業利益率目標を立てている。$55Bのケースは、金融危機や地政学リスク、あるいは半導体の微細化の進捗次第で多少市場が落ち込むことを想定した場合のモデルとして策定した。

WFE市場規模が今後$50Bに縮小する可能性は?仮に$50Bとなった場合、市場規模が$51BだったFY2018よりも利益水準が落ちるのか、あるいは同等の利益を確保できるのか?コンティンジェンシーのケースでどうなるのか考えを伺いたい。

金融危機や地政学リスク、半導体の微細化において歩留まりが十分に改善しないという場合にはあり得るが、当社は$62Bを超えるケースをメインシナリオとして投資を行っている。当社の歴史上で売上が最も減少したのはリーマンショック時の前期比44%減少だが、そのような落ち込みも視野にいれたうえでパートナー企業への製造アウトソースや従業員の業績連動型報酬などを導入しており、市場変動のリスクに対応できる体制を構築している。

財務モデルのROE目標30~35%は、自社株買いを行わないと達成できないのではないか?自社株買いへの考え方を改めてお聞きしたい。

ROE目標値が、自社株買いを想定した数字かどうかは申し上げられない。従前からお伝えしている通り、自社株買いの実施は機動的に検討していく。市場動向や自社株買いの規模などあらゆる観点から判断し、最も株主の皆さまに価値があるタイミングで実施していきたい。創出したキャッシュは最大限価値を発揮できる形で使いたいと考えており、成長ポテンシャルがある中、さらなるビジネスチャンスに向けた資本を確保する可能性もふまえて「機動的」としている。

EUVの導入に伴って、コータ/デベロッパのSAM*2比率は上昇しないのか?

プレゼンテーション資料62ページのグラフの通り、WFE市場の伸びと同様にSAMが伸び、SAM比率は一定に推移すると見ている。SAM比率が下がることはないものの大幅に上がることもないだろう。EUVが導入されるリソグラフィ工程においては露光の回数がおよそ現在の1/3程度まで減る一方、EUVの生産性が現行の液浸ArFに比べて低いため必要な装置台数が増え、オフセットすると考えている。装置単価は、EUV向けにディフェクト低減やCDU*3改善のためのユニットを搭載していくため若干上昇すると見ている。EUVの生産性や露光量に変化があれば話は変わってくるが、現時点での見通しはグラフの通り。なお、CY2022以降にはN5世代以降向けに生産性を向上するPSCAR™*4など、事業機会が増える。

プレゼンテーション資料71ページの、WFE市場におけるエッチング装置のSAM比率のグラフについて伺いたい。CY2018以降、ゆるやかな上昇に留まると見る背景は?また、MicronはEUVを使わず多重露光を延命すると言っているが、そうなった場合にはSAM比率にアップサイドが見えてくるのか?

EUVの導入でクアドラプルパターニング後のリソ・エッチ工程が1回で済むことになり工程数が減るため、伸び率がゆるやかなものに留まっている。現時点ではEUVはまずロジックに導入されていく見通しであり、DRAMへの導入は明確ではないため現時点の予想には織り込んでいない。今後の技術動向によっては予想が変わる可能性は十分にある。
なお、CY2017からCY2021にかけて、WFE市場全体における露光装置市場の比率はEUV導入によって4ポイント上昇する見込み。エッチング装置、成膜装置は、同期間でそれぞれ1ポイント上昇すると見ている。

EUVが導入された後の、東京エレクトロン(TEL)の事業機会は?プレゼンテーションをふまえると、コータ/デベロッパにおいては、極端な付加価値はないがTELはシェアを獲得できるという認識でいる。

現行の液浸ArFでは何重にも露光を重ねる必要があり、自己整合マルチパターニングも回数を重ねると位置ずれが発生して歩留まりが落ちる。したがって、技術的な観点から、微細化を推し進めるうえでEUVの導入は避けて通れないだろう。ただし、EUVによって当社のエッチング・成膜の事業機会が大きく減るということはない。

EUVが導入されると、成膜装置の事業機会は減るのか?あるいは増えるのか?

すべてのパターニング工程でEUVを採用するというのは、コスト的にも難しいだろう。微細化が進む中、従来のダブル/クアドラプルパターニングは継続して残ると見ているため、成膜市場が大きく減るとは考えていない。

成膜装置のうち、酸化/拡散におけるCY2017のシェアが下がっている理由は?競合の日立国際電気に対して今後どのような対策をとるのか?

CY2017の成膜装置のシェアは、ALDと枚葉CVD装置においては想定通り伸長した。ご指摘の通り酸化/拡散のシェアは低下したが、これは実質的な競争力を失ったわけではない。すべての顧客において同一のシェアを保持しているわけではないため、顧客の投資ミックスによって市場におけるシェアが変動したことが低下の背景。低下したことについては過度に心配していない。今後、さらに付加価値を高めてシェアを伸ばしていきたい。

エッチング装置のプレゼンテーションの中で新しいPOR*5を獲得したという話があった。これは全く新しいPORを指すのか、あるいはこれまでお話しされていたPORを指すのか?

昨年の中期経営計画説明会でお話しした開発PORが、量産PORになった。

不揮発性メモリのうち、ストレージクラスメモリやMRAM、PCRAMに対する見通しは?5年先を見ると、不揮発性RAMのエッチングや成膜が重要になると思うが、それらは今回のWFE市場予想やロードマップに勘案されていないのか?

おっしゃる通り、MRAMやPCRAMなどの不揮発性メモリは消費電力などの問題に絡んでおり、今後採用されていくだろう。ただ、不揮発性メモリのうちWFEへの寄与が最も大きいのは引き続きNANDであり、その他のMRAMなどの導入は少し先に延びている。導入計画自体が、一年前と比べて後ろ倒しになっているのが事実。

3D NANDでは、チャージトラップとフローティングゲート、どちらの構造が有利なのか?

ONON(酸化膜・窒化膜)層、つまりチャージトラップの構造が主流である。

WFE(Wafer fab equipment):半導体前工程製造装置。半導体製造工程には、ウェーハ状態で回路形成・検査をする前工程と、そのウェーハをチップごとに切断し、組み立て・検査をする後工程がある。半導体前工程製造装置は、この前工程で使用される製造装置。また半導体前工程製造装置は、ウェーハレベルパッケージング用の装置を含む。

SAM:Served available market

CDU:Critical dimension uniformity

PSCAR™:光増感化学増幅型レジスト

POR(process of record):顧客の半導体製造プロセスにおける装置採用の認定

本内容は、質疑応答のサマリーです。スライドに同期した音声配信はこちらから。