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投資家向け情報

2019年5月28日 中期経営計画説明会 質疑応答集

プレゼンテーション資料12ページの新財務モデルの3つのシナリオについて、それぞれどの程度の規模のWFE*1市場を前提としているのか?

WFE市場については、今は調整局面にあるものの、中長期的に$60Bを超えるという見方は昨年から変わっていない。しかしWFE市場を財務モデルと紐づけると、収益性ではなく市場シェアを中心とした議論になってしまう。また、今後HPCなどの新しい需要が生まれる中で、当社技術のインテグレーションにより新しいSAMを創出できるという意気込みも込めて、今年はWFE市場のシェアではなく営業利益率を前面に押し出したモデルを発表した。
財務モデルの期間については、昨年発表のモデルは来期FY2021を目標としていた。今年は、昨年同様にFY2021のモデルを発表するよりも、今後5年以内にどのような収益性を目指すかを示す方がよいと判断した。
同時に、ROE目標について昨年は30~35%と幅を設定していたが、今回は上限を削除して「30%以上」へと変更した。その時々の成長投資やキャッシュの使途を考慮しながらも、ROE30%以上は達成するというのが今回のメッセージである。

SAM*2見通しは、いつ作成したものか?米中貿易摩擦などの足元の不透明性を考慮したうえで作られているのか?SAMの前提となるWFEの見方は?

4週間ほど前に作成しており、ほぼ最新の数字だと言える。WFEの動向ももちろん参考にしているが、今後1年以内については当社が持つ顧客情報を基に投資規模を積み上げた方が正確なSAM予想ができる。市場の調整や米中貿易摩擦などの要素は予想が難しく考慮していない。ただ、中国地場メーカーによる投資はまだ規模が大きくないため、今後2~3年間については米中貿易摩擦の影響はそれほど大きくないと見ている。

昨年の財務モデル発表時には、売上総利益率、販売費及び一般管理費、売上債権回転日数、在庫回転日数の目標が開示されていた。それらを今回発表していない理由は?

昨年に発表した目標値から大きく変わってはいない。

フィールドソリューション事業の包括契約型サービスの浸透率についてお聞きしたい。現在の状況と、FY2023の目標値は?また、成果報酬型のサービスは、仮にTELが顧客と設定したKPIを達成できなかった場合はどうなるのか?

複合型サービスの契約獲得を狙っている顧客のうち、約半分の顧客とは、何らかの複合型サービスの契約を結んでいる。ただし、TELeMetrics™やAI活用によるアップタイム保証など、高付加価値を提供するような複合型サービスを結べているのはまだ10%以下である。
成果報酬型サービスの条件は顧客との契約よって異なるが、達成できない場合は、例えば保証期間の延長など、当社の負担が発生する。

プレゼンテーション資料の70ページでは、CY2020のエッチング装置のSAMが前年比約3割伸びる予想が示されている。3割増に向けてすでに顧客に動きがあるのか、あるいは年後半にかけて動きが出るのか?

予想は難しいが、現時点ではCY2019Q3(7~9月)頃に顧客に動きが出始めるのではないかと予想している。

プレゼンテーション資料の72ページのエッチング装置の売上予想について、HARC工程*3の売上の振幅が大きいのにはメモリ投資が影響しているのか?

CY2019のHARC工程の売上は、メモリ市場が軟調のため減少する。

プレゼンテーション資料にエッチング装置のSAMシェア30~35%を目指すとの記載がある。この幅の変動要因は?アップサイド/ダウンサイドリスクを聞きたい。また、下限の30%は現状と同水準ではないか?

確かに30%は現状維持に見えるだろうが、ダウンサイドリスクを過大に見込んでいるわけではない。今年CY2019は市場規模とHARC工程の売上の両方が減少するため事業環境が厳しく、30%維持の見通し。しかし長い目では、HARC工程やパターニング工程における伸びによって35%近くまで向上させたい。

メモリ向けの新しいエッチング装置について、現時点での進捗は?

HARC工程向けに新機能を搭載した装置を開発している。3D NANDの128層世代以降において、新装置でチャネル工程のシェア獲得を狙いたい。

HARC工程でPOR*4を獲得できると考える理由は?加工性能が優れているからか、あるいはプロセス時間が短いからか?また、HARC工程向けの市場における現在のシェアは?

加工性能と生産性の両方を満たす提案でPOR獲得を狙う。個別の工程におけるシェアは開示していない。

プレゼンテーション資料ではエッチング装置のHARC工程のSAMが大きく伸びると予想されている。これはプロセス時間が長くなることによって必要チャンバー数が増えるからか?3D NANDの128層世代は64層と比べてどの程度プロセス時間が長いのか?

層数は二倍だが、穴が深くなるとエッチングの生産性が落ちるため、プロセス時間は二倍をやや超える長さとなる。

25X世代以降の3D NANDでは、ほとんどの顧客が二段スタックを採用するという前提でSAMを計算しているのか?

25X世代からすべての顧客が二段スタックになるという前提でSAM予想を立てている。

自社株買いの発表は、2015年4月以来、今回が初めてとなる。今回は何が実施のトリガーとなったのか?また、今後のキャッシュポジションや自社株買いに対する考えは?

成長投資や運転資金、将来の成長に対する当社の自信などを考慮した結果である。また、当社の持つポテンシャルが現在の株価に十分反映されていないと考え、自社株買いの実施を決定した。
今後のキャッシュポジションについては、大きな成長が期待できる局面では必要な調達額も増えるなど、状況によって変わってくる。自社株買いは機動的に検討するという方針に変更はない。

自社株買いの上限1,500億円という額は、今後3年間のキャッシュ創出力・必要手元資金・成長投資資金をどのように仮定して決めたのか?特に、成長投資資金に対する考えは?

調整後営業利益を、①開発・成長投資、②株主への還元、③社員への還元や運転資金の3つにそれぞれ約1/3ずつ充てるイメージ。

自社株買いについて、以前は「株式市場にインパクトを与えるような規模とタイミングを図りたい」とコメントしていた。この方針は現在も有効か?あるいは、短期の株価重視ではなく、継続的に自社株買いをおこなって株主資本の増加を抑えることでROE30%の達成を目指すというメッセージに変わったのか?

従前から申し上げている通り、自社株買いを検討するうえでは株価も大きなファクターである。半導体業界にはある程度のサイクルがあるため、毎年同額の自社株買いをおこなうよりも、効果的な状況かつ効果的な株価水準である時に、効果的な規模でおこなう方が適当だと考えている。今後も機動的に実施を検討したい。

WFE(Wafer fab equipment):半導体前工程製造装置。半導体製造工程には、ウェーハ状態で回路形成・検査をする前工程と、そのウェーハをチップごとに切断し、組み立て・検査をする後工程がある。半導体前工程製造装置は、この前工程で使用される製造装置。また半導体前工程製造装置は、ウェーハレベルパッケージング用の装置を含む。

SAM:Served available market

HARC (High aspect ratio contact)工程:高度な加工技術を要する深穴形成工程

POR (Process of record):顧客の半導体製造プロセスにおける装置採用の認定

本内容は、質疑応答のサマリーです。スライドに同期した音声配信はこちらから。