TOKYO ELECTRON LIMITED

投資家向け情報

2021年10月12日 IR Day 質疑応答集

説明会資料38ページにスコープ3下流におけるCO2排出量が開示されているが、CO2排出の絶対量を削減することが目標か?

当社の目標はCO2排出の絶対量の削減ではなく、「ウェーハ1枚当たりのCO2排出量」の削減。中期環境目標では、当社製品から排出されるCO2については、2030年までに2018年比でウェーハ1枚当たり30%削減を目指している。装置の省電力化、水や薬液、ガスの使用量を削減することで実現する。

装置の環境性能は顧客の装置選定において重要な仕様となってきているか?また、スコープ3下流におけるCO2排出量の削減に向けて製品開発の方向性に変化はあるか?

環境性能については、顧客の装置選定における重要な指標となっている。例えば、顧客の求めるクリーンルームの単位面積当たりのウェーハアウトプットを向上するためには、装置の生産性や歩留まりの向上が極めて重要。
装置の生産性を向上することがウェーハ1枚当たりのCO2排出量の削減につながるため、製品開発の方向性が大きく変わることはない。一方で、薬液のリサイクルなど、環境規制や顧客毎の環境性能の要求に対応するための開発も必要となっている。その実現に向けてはパートナー企業との連携が不可欠であり、E-COMPASS(サプライチェーンイニシアティブ)を立ち上げた一つの理由となっている。

説明会資料101ページの「月産10万枚当たりWFE*投資額」(キャピタルインテンシティ)について教えてほしい。ロジック2nm世代でWFE投資額は~$21Bの想定となっており、5nmから3nmおよび3nmから2nmへの技術世代の移行に伴うキャピタルインテンシティの増加率が以前に比べて鈍化しているように見える。3nm、2nm世代でWFE投資額が抑制される背景を教えてほしい。

3nm、2nmと微細化の進展に伴いパターニング工程のコストの増加が見込まれるが、プロセスインテグレーションの最適化により、その抑制に貢献している。また、生産技術でもコスト削減に貢献。なお、説明会資料101ページのキャピタルインテンシティは現時点での当社想定のプロセスに基づく概算値であることを留意頂きたい。

2030年までのデバイス技術ロードマップに従い、アプリケーション毎に工程数の増加が期待されるプロセスを教えてほしい。

ロジックについては、トランジスタ構造がFinからNano sheetへ移行することに伴い、ガスケミカルエッチ工程が追加されることで、エッチングの工程数が増える。また、成膜、洗浄も増えることが想定される。
DRAMは、技術世代の移行ペースが鈍化しているが、一部の露光工程が液浸からEUVに置き換わることで微細化が継続する。2026年頃に2Dから3D構造に移行する可能性があり、その場合には成膜やエッチングの工程数が増えると予想される。
NANDは、これまで通り、積層数、tier数の増加により高集積化が継続。引き続き、成膜とエッチングの工程の割合が大きい。

2030年までに想定される大きな技術変化があれば教えてほしい。例えば、過去にはNANDの2Dから3Dへの移行が大きな技術変化であったと思う。今後、そのような変化は想定されるか?

DRAMが2Dから3Dに移行すれば、プロセスや必要となる装置が変わり、大きな変化となり得る。ただし、3D DRAMはまだ技術開発の初期段階にあり、どのような変化をもたらすか現時点では断定できない。
他には、ロジックの配線層にメモリ素子を搭載する混載デバイスや、ロジックとメモリを積層したハイブリットデバイスのようなシステムインテグレーションにおける変化が挙げられる。

次世代メモリの可能性についても教えてほしい。

ReRAM、PCRAM、MRAMのような次世代メモリは主に混載メモリとして開発が進んでいる。ニューロモーフィックデバイスでの採用も検討されている。

MOR(メタルオキサイドレジスト)は主に高NA EUV露光で用いられると思うが、高NA EUV露光装置とMORが量産採用される時期はいつ頃か?また、MORに対応した塗布現像装置の装置価格は高額となるか?

imec発表によれば、2023年よりimec-ASML共同高NA EUV研究所において、高NA EUV露光装置が稼動開始し、そこから3年かけて2026年に実用化を目指す計画。当社も高NA EUV露光装置向け塗布現像装置の開発を進め、実現に貢献していく。
塗布現像装置の価格については、顧客の要求仕様などにより異なるためコメントを差し控えたい。CAR(化学増幅型レジスト)とMORの両方に対応した塗布現像装置となるため、付加価値は高くなる。
なお、全製造工程に占めるEUV露光工程の数は限定的であるため、高NA EUV露光装置やMOR対応の塗布現像装置が採用されても、それだけで顧客の製造コストが大幅に増加するということはない。

説明会資料115ページの「レジストプロセスコスト比較」について教えてほしい。MORウェットレジスト工程がドライレジスト工程に比べ、コストが1/3となる理由は?

当社のアプローチであるMORウェットレジスト工程は、レジスト塗布、ベーク、現像の工程がEUV露光装置とインライン接続された塗布現像装置1台で完結する。
一方、他社のアプローチであるドライレジスト工程は、CVDレジスト成膜、洗浄、ベーク、ドライエッチ、洗浄と工程数が多く、かつ複数装置が必要となる。このため、プロセスコストとしてはMORウェットレジスト工程に優位性がある。

ドライレジスト工程がMORウェットレジスト工程より優位な点はないか?

一般的には、ドライレジストの方がレジストパターン倒壊が起きにくい。ウェットレジストは現像時の表面張力によりパターンが倒壊しやすいが、当社は、リンス工程や薬液に新規技術を導入することでパターンの倒壊を抑制している。

ロジックにおいて微細化の進展によりエッチング工程数が急増する可能性はあるか?または高NA EUV露光の導入によりエッチング工程数が大幅に減少する可能性はあるか?

ロジック3nm、2nmの製造プロセスはまだ確定していない。微細化によりパターニングプロセスは複雑化する傾向にあるが、製造コストを抑制するためにプロセスインテグレーションの最適化が図られる。そのため、3nm、2nm世代ではエッチング工程数が大幅に増加することはないと想定しているが、引き続き、世代移行に伴いエッチング工程数が増加していくことを期待している。

説明会資料125ページの「イオン垂直化技術」について、それを実現するTELの技術をより詳しく教えてほしい。また、技術的にどの程度のアスペクト比のエッチングが可能か?

プラズマエッチングのイオンの入射角度を垂直にするため、イオン引き込みRF(高周波電力)を低周波化、高電力化、かつパルス化している。この3つを組み合わせることで最適なエッチングが可能となる。
現在、顧客の要求はアスペクト比70:1のエッチングであるが、今後さらに高アスペクト比が求められていく。当社の独自技術で差別化を図る。

WFE(Wafer fab equipment):半導体前工程製造装置。半導体製造工程には、ウェーハ状態で回路形成・検査をする前工程と、そのウェーハをチップごとに切断し、組み立て・検査をする後工程がある。半導体前工程製造装置は、この前工程で使用される製造装置。また半導体前工程製造装置は、ウェーハレベルパッケージング用の装置を含む

本内容は、質疑応答のサマリーです。スライドに同期した音声配信はこちらから。