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投資家向け情報

2022年6月8日 中期経営計画説明会 質疑応答集

新中期経営計画ではFY2027までに売上高3兆円以上とする目標だが、これはF2023業績予想の売上高2兆3,500億円から年平均成長率6%程度の成長に留まる。これまでのWFE*1市場の成長率を勘案すると、この売上高目標は保守的ではないか?また、TELのWFEシェアの見通しについても教えてほしい。

新中期経営計画の財務目標はWFE市場の想定と紐づけていない。CY2021 半導体市場は約5,000億米ドルであったが、CY2030には1兆3,500億米ドル程度となると予想されており、それを支えるWFE市場も引き続き成長していく。新中期経営計画の最終年度となるFY2027はその通過点に過ぎない。
財務目標の達成に向けては、現在の注力分野において付加価値の高いnext-generation productsを創出してシェア、利益を向上していく。加えて、本日ご紹介したUlucus™ Lなどの新製品をリリースしてSAM*2を拡大させることで売上を成長させていく。これらの取り組みにより、早期に財務目標の達成を目指す。

売上総利益率の見通しについて教えてほしい。新中期経営計画の期間は事業拡大に伴う先行投資が増加するフェーズと考えられるが、この期間、売上が増加しても売上総利益率が横ばいとなる可能性はないか?また、新中期経営計画では、営業利益率 35%を目標としている。営業利益率を+5pts程度向上させる必要があるが、売上総利益率の改善、販管費比率の抑制など、どのように達成するか教えてほしい。

1つ目のドライバーは限界利益率の向上。付加価値の高いnext-generation productsを継続的に創出することで、売上総利益率および営業利益率の向上を図る。もう1つは、当社のSAMの拡大。こちらについては評価、POR*3獲得から納入の初期段階では費用が先行的に増加し、一時的に利益率を押し下げる影響があるものの、将来的には利益率の向上につながる。

新中期経営計画では営業利益率の目標を35%以上に引き上げたのに対して、ROEについては30%以上に据え置いた。資本効率の観点では、目標が低くなったように見える。この背景は?WFE市場のシクリカリティにより営業利益率が低下する局面においても、自社株買い等によるバランスシートマネジメントによりROE 30%以上を維持していく考えか?

売上高、営業利益率が低下することは想定していない。売上、利益が増加しても、利益剰余金が積み上がればROEは必ずしも向上しない。新中期経営計画の最終年度にROE 30%を達成するということではなく、新中期経営計画の期間を通して、安定的にROE 30%以上を維持していく。

新中期経営計画の財務目標に基づくと、自社株買いなどによる追加のキャッシュアウトがないと想定した場合、最終年度には手元資金が1兆円規模となると推察する。適切な手元資金の水準の考え方を教えてほしい。

事業規模の拡大に伴い、必要となる運転資本は増加するため、適切な手元資金の水準も変わる。基本的には、運転資本として売上高2.5~3カ月分と同程度の手元資金が必要であると考えている。加えて、成長投資や設備投資などの中長期的な資金計画を勘案し、適切な手元資金の水準を検討している。

新中期経営計画の期間の5年間における設備投資総額は4,000億円との説明があったと思うが、その認識でよいか?

その通り。5年間で4,000億円程度の設備投資を見込む。これには、生産能力増強や研究開発向けの設備投資が含まれる。

「装置立ち上げ期間の短縮」について、財務面での効果や事業活動における位置づけを教えてほしい。

コロナ禍の渡航制限により、装置立ち上げ人員の海外派遣が困難となった経験などから、装置立ち上げの効率化を検討してきた。装置立ち上げ時の検査の自動化、DXの活用などにより、立ち上げ期間を大幅に短縮できる見通し。従来比で50%から75%程度の短縮が可能であり、将来的にはワンタッチでの装置立ち上げを目指す。
これによる効果としては、まずは装置立ち上げ工数の削減によるリソースの最適化がある。また、装置立ち上げの信頼性の向上や事故リスクの低減により、装置の後追い費用や保守メンテナンス費用の大幅削減が見込まれる。加えて、装置立ち上げにかかわるエンジニアのワーク・ライフ・バランスが改善されるとともに、装置立ち上げ以外の新たなキャリア形成の機会を提供することができる。

MRP*4処理能力の改善により、今後、生産能力を2倍程度にするとの説明があった。生産効率化の取り組みによって、既存の生産棟のみでも生産能力を2倍にできるのか?

単に生産スペースや製造人員を増やすのではなく、在庫の管理、部品の手配および供給など、様々な作業の効率化を図っていく。これにより、生産能力を現在の2倍程度まで引き上げていく計画。

「24カ月超 需要予測」はTEL独自の取り組みか?また、顧客が投資計画を変更する可能性があると思うが、予測の確度はどうか?

以前の需要予測は1年程度先までに留まっていた。昨今の部材不足を勘案し、顧客に対して、より長期の需要予測の必要性を説明してきた。その結果、多くの賛同が得られ、殆どの顧客から24カ月またはそれ以上の投資計画を共有いただけるようになり、24カ月の需要予想が可能となった。当社独自の取り組みではあるが、顧客はすべての装置の安定調達を図るため、他の装置メーカーに対しても同様に長期の投資計画を共有するようになっているものと推察する。
24カ月の需要を予測することで、部材の前倒し調達が可能となる。一方、当社の人員の増加、生産設備への投資、生産棟建設の計画のためには、さらに長期の需要予測をすることが望ましく、それに向けた取り組みも始めている。

ウェーハボンディング装置の事業機会、市場規模および競合他社に対するTELの優位性について教えてほしい。

半導体デバイスの進化には、チップ単体だけでなく、システム全体での性能向上が求められている。それを可能とするウェーハボンディング装置に対する顧客からの注目は高い。今後見込まれる事業機会としては、例えば、3D DRAM向けの貼り合わせがあり、量産に移行すれば大きな市場となることが予想される。但し、市場規模については回答を控えたい。
当社には、前工程で培ったスーパークリーン技術、高精度のアライメント技術、洗浄技術などがある。これらの技術やプラットフォームを統合し相互最適化できることが、競合他社にはない当社の強み。

EUVの採用拡大によるマルチパターニングの減少は、エッチング装置に対してネガティブだと推察する。TELの事業リスクになると考えるが、今後のエッチング事業の成長性をどう見ているか?

ロジック/ファウンドリにおいて、EUVの採用は進んでいるが、適用される工程は限定的。また、EUVでもマルチパターニングが必要となっている。3D NANDにおいては、EUVは採用されない。DRAMについては3D DRAMに移行すればEUVは使われないと想定している。従って、エッチング装置市場の成長を妨げるような要因にはならない。むしろ、EUVにより微細化が継続するため、WFE市場全体にとってポジティブな影響。

TELのエッチング装置はメモリ向けではシェアが低く、ロジック/ファウンドリ向けが高いと認識している。ロジック/ファウンドリにおいて今後、high-NA EUVが採用されると、エッチング工程が半減するという論文もある。懸念はないか?

当社エッチング装置のNAND向けシェアは上がってきており、DRAM向けは高い水準を維持している。High-NA EUVが採用されると、レジストの厚みはさらに薄くなる。これに伴い、高選択比のエッチングを実現する技術が求められることから、当社にとって付加価値を提供する機会となる。

WFE(Wafer fab equipment):半導体前工程製造装置。半導体製造工程には、ウェーハ状態で回路形成・検査をする前工程と、そのウェーハをチップごとに切断し、組み立て・検査をする後工程がある。半導体前工程製造装置は、この前工程で使用される製造装置。また半導体前工程製造装置は、ウェーハレベルパッケージング用の装置を含む。

SAM:Served available market

POR (Process of record):顧客の半導体製造プロセスにおける装置採用の認定

MRP (Material Resource Planning):資材所要量計画

本内容は、質疑応答のサマリーです。スライドに同期した音声配信はこちらから。