TOKYO ELECTRON LIMITED

RBAの展開

RBAへの加盟

当社グループは、健全で持続可能なサプライチェーンの構築に向けた活動を展開しており、その中で特に「人権の尊重」と「サプライヤーリレーションシップ」の2つをマテリアリティとして特定しています。社会における半導体の重要性が高まる一方、環境問題の深刻化や人権・労働や安全衛生、倫理やコンプライアンスの重要性も高まっており、企業における更なる取り組みが求められています。
このような状況において、グローバルレベルでサプライチェーンの健全性を維持し継続的に発展させていくためには、業界全体が連携しリスクの低減や課題の解決に取り組むことが不可欠です。

当社グループは、2015年6月に、エレクトロニクス業界を中心としたサプライチェーンサステナビリティを推進する国際的なイニシアティブであるRBA(Responsible Business Alliance)に加盟しました。RBAは、サプライチェーンを通じて人権・労働、安全衛生、環境、倫理の改善を推進するために行動規範を規定しています。当社グループは、RBA行動規範に基づき、他の国内加盟企業とも連携しながら、健全なサプライチェーンの構築に取り組んでいます。

推進体制

当社グループではサステナビリティ推進担当役員を監督責任者とする体制を構築しRBAの活動を推進しています。サステナビリティ推進担当役員の監督のもと、サステナビリティ統括部が中心となり、調達部門や人事部門をはじめとする本社の関連部門および各グループ会社において任命されたサステナビリティマネージャーと連携し、RBAのグループ展開に取り組んでいます。

RBA行動規範遵守に向けた取り組み

当社グループでは、RBA行動規範の遵守に向けた取り組みをサプライチェーン全体で推進し、アセスメントや監査を通じて遵守状況を確認しています。

アセスメントの実施

当社グループでは、RBAが提供するSAQ(Self-Assessment Questionnaire)を用いて、毎年国内外の製造拠点における遵守状況を確認しています。SAQは、人権・労働、安全衛生、環境、倫理およびそれらに関係するマネジメントシステムに関する設問から構成され、リスクに対する取り組み状況を「ローリスク/ミドルリスク/ハイリスク」の3段階で評価します。2024年度は国内外の8拠点でSAQを実施し、評価の結果ハイリスク判定の拠点はありませんでしたが、遵守状況に課題のある項目については改善策を検討し、是正をおこなっています。
また、お取引先さまにおいては、RBA監査基準の要件に加え、人権に関する設問を追加して策定した「TEL サステナビリティサプライチェーンアセスメント(TSSA)」を2013年より展開し、毎年、資材系、人材系、物流系、施設管理系のお取引先さまに調査へのご協力をお願いしています。2023年度は、704社のお取引先さまを対象に調査を実施し、2024年度は、その結果に基づく是正活動に取り組みました。
2025年度は、RBA行動規範の最新版に合わせて設問の見直しをおこなうとともに、人権、国や事業活動などの固有リスクに関する設問を追加して、714社を対象に調査を展開しています。

是正活動

当社グループの国内拠点においては、SAQの結果から、是正が必要な項目として「労働時間の削減」、「方針・手順の文書化」、「マネジメントシステムの構築」、「責任ある鉱物調達調査の対象鉱物の追加」などを特定し、改善活動をおこなっています。
お取引先さまにおいては、アセスメントにご回答いただいたすべてのお取引先さまへ全体の結果報告、前年度からの推移、平均点および各社毎の評価をフィードバックするとともに、不適合項目について是正をお願いしています。特に不適合が多かった項目には、「方針・手順の文書化」、「労働時間の削減」、「避難訓練の実施」、「応急処置に関する取り組み」がありました。

主な不適合項目
 
労働 労働時間:週あたり労働時間の管理
労働 賃金および福利厚生:賃金減額(減給処分)
安全衛生 緊急時への備え:避難訓練
安全衛生 労働災害および疾病:応急処置要員
マネジメントシステム 文書化:方針・手順の策定
マネジメントシステム サプライヤーの管理責任:RBA行動規範の伝達

2024年度は、モニタリング強化施策として上記の取り組みに加え、55社のお取引先さまに個別に是正計画や取り組み状況の確認をおこなうとともに、好事例を共有するなど是正活動を支援しました。また、強制労働の分野に該当する項目である「採用や雇用にかかわる費用の労働者負担」について回答に人権リスクの懸念があった人材系のお取引先さま12社とエンゲージメントを通じて詳細確認をおこないました。ヒアリングの結果、リスクが確認された一部のお取引先さまにおいては、改めて課題への認識と是正の必要性についてご理解いただいた上で、再発防止に向けた社内運用の変更などの是正に取り組んでいただきました。
また、自社およびお取引先さまで共通する課題としてあがった労働時間については、法令で定められた「労働時間・休日・休暇」を遵守するとともに、RBA行動規範で定められた基準に沿った管理基準を設定し、過重労働の防止や時間外労働の削減に向けた取り組みを進めていただいています。

お取引先さまにおける好事例の一部
 
労働
  • 労働時間が超過傾向にある対象者へ警告メール送信
  • 雇用関連費用に関する規程・運用の変更
安全
  • 外部講師を招きAED操作訓練を実施
  • PPE*総点検実施の上、管理手順を文書化
  • 日没後の避難訓練の実施
サプライチェーンマネジメント
  • ・RBA説明会実施(サプライヤー向け)
  • サプライチェーンアセスメント実施
  • 実施手順の文書化

PPE: Personal Protective Equipment 個人保護具

2024年度末時点では55社の是正計画137件のうち、64件について是正完了を確認しました。いくつかの是正項目については、完了まで中期的な取り組みとなることから、2025年度もお取引先さまとともに活動を継続し、進捗をモニタリングしていきます。

アセスメントに関するお取引先さま説明会の実施

アセスメントにご協力いただく資材系、人材系、物流系、施設管理系のお取引先さまを対象に説明会を定期的に実施しています。2025年4月に実施した説明会には約780名のお取引先さまにご参加いただき、当社グループのサプライチェーンの取り組みやアセスメントに関する説明をおこない、今後の展開についてのご協力をお願いしました。また、前回のアセスメント結果について報告し、サプライチェーン上のリスクについてお取引先さまと共有しています。

説明会の様子

RBA監査の受審

当社グループでは、2022年から積極的にRBAの第三者機関によるVAP(Validated Assessment Program)監査を受審しています。VAP監査は、RBA行動規範に準拠した事業活動がおこなわれているかを評価するもので、評価スコア(160点以上)に応じてRBA認証プログラムにおけるステータスに認定されます。2025年にクロージャー監査を受審した4拠点では、「労働」「安全衛生」「環境」「倫理」「マネジメントシステム」の各項目において適正な管理、運用が行われていることが認められ、最高スコアである200点を取得し、プラチナ・ステータスに認定されました。

RBA VAP監査認証取得状況 
  
会社名 事業所  取得年月  スコア  ステータス
東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ  本社、穂坂

2023年7月

200  プラチナ
2025年8月 200 プラチナ
東北 2025年11月 200 プラチナ
東京エレクトロン九州 本社 2025年3月 200 プラチナ
東京エレクトロン宮城  本社 2025年4月 200 プラチナ

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啓発活動

当社グループでは、RBAの行動規範について全従業員を対象としたウェブ教育を実施するとともに、国内の新入社員に対しては毎年導入研修プログラムの一つに含め実施しています。研修では、行動規範の「労働・人権」「安全衛生」「環境」「倫理」の分野に取り組む目的や意義とともに各項目の解説や当社グループにおける実践について紹介し、一人ひとりの行動につながるよう促しています。
また、RBA VAP監査に携わる担当者やお取引先さまの取り組みをサポートする調達担当者向けにRBA監査基準の要求事項に関する勉強会を開催しています。
お取引先さまに対しては、定期的に説明会を開催し、RBA行動規範への理解を深めていただくとともに、当社グループのRBAの取り組みの計画や内容についてご説明しています。

RBAとのエンゲージメント

当社グループは、加盟以来RBAのミッションとビジョンに賛同し、活動を推進しています。RBAが主催するさまざまなワーキンググループやJapan Outreach Meetingなどへの参加を通じてRBAと連携しています。
2025年4月に開催されたJapan Outreach Meetingは日本におけるメンバー企業をはじめそのサプライチェーンにかかわる企業から225名が参加し、当社は「Policy Initiatives as the Driver of Responsible Business Conduct」と題したセッションに登壇し、急速に高まるサステナビリティ関連の法規制対応に関するディスカッションに参加しました。