TELの「唯一無二」の工場を目指して
Technology

東京エレクトロン(以下:TEL)グループは、2024年7月に300㎜ウェーハプロセス対応装置の新製品 Acrevia™の 販売を開始した。半導体製造装置のコア技術を活用したこの製品の開発と製造において、中心的な役割を担ったのがTEL Manufacturing and Engineering of Americaだ。TELグループ内でもユニークな立ち位置にある同社の役員3名が、そのミッションや今後の展望について語る。
プロフィール
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Mark Dougherty (以下:Mark)
TEL Manufacturing and Engineering of America 社長およびTokyo Electron America社長。2020年にTELに入社。それ以前は28年間、IT系企業や半導体メーカーでウェーハ工場や技術、製造に携わってきた。 -
北野 淳一 (以下:北野)
1991年入社。TEL Manufacturing and Engineering of AmericaのSenior Vice Presidentと東京エレクトロン九州のGeneral Manager職を兼任。2024年1月より米国ミネソタ州に駐在。 -
石田 寛 (以下:石田)
1994年入社。DSS*事業本部 (以下: DSS BU)のVice President兼General ManagerおよびTEL Manufacturing and Engineering of Americaの会長を務める。 -
TEL Manufacturing and Engineering of America
2019年設立、ミネソタ州チャスカに位置する。サーフェスプレパレーション装置、ガスクラスタービーム(GCB)技術を用いた半導体製造装置および産業用製造装置の開発・製造・販売をおこなう。
- Diverse Systems and Solutions
イノベーションを加速させるパイプライン
TEL Manufacturing and Engineering of Americaではどんなミッションを掲げていますか? また、TELグループ内での立ち位置についても教えてください。
Mark
TEL Manufacturing and Engineering of Americaでは、既存製品の売上拡大や収益増加というミッションがありますが、特に重要なミッションとして、最新技術を活用した製品のリリースが挙げられます。TEL Manufacturing and Engineering of AmericaにはTELグループ内でも類を見ないような画期的な技術があります。TELグループ各社のサポートも受けながら、その技術をお客さまのために現実的なソリューションとして応用できるようになっています。
北野
TEL Manufacturing and Engineering of Americaには、TELグループの米国拠点のハブとしての機能もあります。研究開発およびプロセスインテグレーションの拠点であるTEL Technology Center, Americaと、技術およびビジネス情報の集約拠点であるTokyo Electron Americaから集めたさまざまな情報を活用し、開発から生産までのリードタイムの短縮と、お客さまへより短い納期で製品を提供することを目指しています。デバイス製造プロセスがますます複雑化する中で、TELがお客さまのご要望に応え続けるためには、研究開発のスピードアップが不可欠です。
Mark
新しいアイデアは、米国からも日本からも生まれます。私たちの強みの一つとして、TEL Manufacturing and Engineering of Americaは迅速に装置を試作することができます。その新しい発想は日本の工場へと移管されることもあれば、TEL Manufacturing and Engineering of Americaが米国内で製造する製品となることもあります。どのようなケースであっても、TEL Manufacturing and Engineering of AmericaがTELの中で有意義な役割を果たしていることは間違いないと思います。

日本のベストプラクティスを取り入れる
TEL Manufacturing and Engineering of Americaは日本の東京エレクトロン テクノロジーソリューションズ、東京エレクトロン宮城、東京エレクトロン九州に続く「唯一無二」の工場になるために、どんなことを強化していますか?
Mark
まずは生産能力の拡大が挙げられます。複数の新製品が市場に投入され、量産段階へと移行していくためには、製品の需要変動に適切に対応し、売上を最大化しなければなりません。その過程においては、工場レイアウトの継続的な最適化、製造方法の改善、スタッフの増員なども含まれています。
北野
もう1つは、日本で確立したエンジニアリングの手法やプロセスの導入があります。日本の工場のシステムをベースにした開発フローの構築や、日本側のサポートを受けて、開発や品質、安全管理に関する複数の手法と関連システムを導入しました。今後も日本の工場と同等の品質を維持していくため、組織としてのシステム運用を引き続き最適化していきます。

Mark
TEL Manufacturing and Engineering of Americaは日本の工場のやり方も参考にしながら、ベストプラクティスを取り入れるようにしています。また、日本から経験豊富なリーダーたちを駐在員として迎え入れ、彼らの知見や指導をもとに直接学びながら、より高い水準のパフォーマンスを目指しています。ゆくゆくはTELグループで1番になりたいという野望ももっています。
より高い水準を目指して
TELのスタンダードを維持するために、直近の課題としてどのようなことがありますか?
Mark
私たちにとって、「理解」がまず最初の課題としてあります。TELグループ各社のベストプラクティスについて、表面的ではなく、思考プロセスや必要なシステム、スキルなどを深く理解するために、対話をおこなうことが大切です。物事を迅速に進めたい気持ちもありますが、適切な規律を定めるために時間をかける必要もあります。深い対話と探求により何がTEL Manufacturing and Engineering of Americaにとって最適かを判断することが必要だと考えています。
北野
これまで以上に安全性も追求しています。TEL Manufacturing and Engineering of America内に安全担当チームを新設し、安全・衛生・環境を司る強いチームにしていくつもりです。
Mark
”Safety, quality, and compliance”は、常に私たちの最優先事項です。TEL Manufacturing and Engineering of Americaはこれまでも工場内の安全性を確保し、ミネソタ州で何度も表彰されてきましたが、今後もさらなる安全性向上に注力していきます。また、サプライチェーンを含む製造品質や現場でのサービス品質など、品質に関するあらゆる要素を磨くことにも注力しています。
日米のコラボレーションの結晶
7月にTEL Manufacturing and Engineering of Americaは新製品のAcrevia™をリリースしました。皆さんのAcrevia™への期待を聞かせてください。
Mark
Acrevia™は、ここ最近の当社の製品戦略の要でした。2019年にTEL Manufacturing and Engineering of Americaが発足以来、初めて市場投入した最新鋭の製品です。そういった意味では、私たちのこれまでの歩みやTELへの貢献の象徴でもあります。同時に、Acrevia™によって、お客さまはより低コストで高い歩留まりを実現できるようになるだけでなく、多様な用途で活用いただくことができます。
北野
Acrevia™の成功は、TEL Manufacturing and Engineering of AmericaやTELだけでなくお客さまにとっても重要だということです。この製品は、High NA(開口数)EUV露光装置が活用されるプロセスに適応できます。Acrevia™と組み合わせて全体プロセスを最適化することで、お客さまの生産性向上に貢献します。
石田
米国生まれのAcrevia™ですが、販売・開発・品質・現場サポートなどはTELグループの日本のチームにも協力してもらいました。TELは現場経験が豊富で、世界中のお客さまに95,000台以上(2024年9月末時点)のあらゆる装置を納入してきた実績があります。日米両チームで力を合わせることで、特に最先端のデバイスを製造するお客さまの満足度に貢献できると思います。

北野
今後もTELのR&Dチーム、日本の工場、Tokyo Electron Americaが協働で進めているまさにグループ全体での共同事業も予定しています。このようなグループ規模のプロジェクトはTELの中でも初めてだと思うのですが、ぜひこのような協働を今後も追求していくべきだと思います。

Mark
関連して言えば、TEL Manufacturing and Engineering of AmericaのTELグループでの立場は非常にユニークだと感じています。こうした新製品開発のあり方は、社内で横展開可能な事例としてTELの中でも注目されています。まさしく、米国ならではのアイデア、技術と日本側の成熟した技術や部材を融合させた先端領域でのコラボレーションであり、目に見える成果にもつながっています。わくわくすると同時に、経営層も注目もしているので使命感にも駆られています。
工場ネットワーク全体での連携を目指して
最後に、今後に向けた皆さんの抱負をお願いします。
Mark
TEL Manufacturing and Engineering of America には、日本の工場での製造の知見や技術を活用しながら、それを当社独自の技術と統合できるという独自の強みがあります。私たちは米国での製造と開発規模の拡大を目指していますが、日本の工場からのサポートと情報交換は、私たちが今後も進化していくために重要な要素です。
北野
先ほども話題にあったように、TEL Manufacturing and Engineering of AmericaはTELグループの中でも非常にユニークな工場です。最先端の製品、成熟世代として受け継いできた製品、そして研究開発から製造までをつなぐパイプラインがあります。TELの事業に貢献しつつ、グループのためにも研究開発を加速していきたいと思います。私たちのユニークな取り組みは、TELグループの皆さんの力を借りることで実現可能になります。皆さんと密に連携し、「唯一無二」の工場へと進化して、恩返ししていければと思います。
現在、TEL Manufacturing and Engineering of Americaには日本からの駐在員が約30人、日本からリモートでサポートしてくれる専任メンバーが6〜7人います。こうしたメンバーの力も、間違いなく原動力です!
石田
TEL Manufacturing and Engineering of Americaには国籍もバックグランドも多様なメンバーが集まり、開発・製造・販売にいきいきと取り組んでいます。TEL Manufacturing and Engineering of America、DSS BU以外にもコーポレートイノベーション本部、TEL Technology Center, America、海外グループ会社など、組織を超えたメンバーがワンチームとして協働しており、これからもおもしろいビジネスを次々と創出するような新しいDNAを作っていきたいと思います。そして、このような取り組みに興味のある方は、ぜひTELに来ていただきたいです。
