TOKYO ELECTRON LIMITED

研究開発

未来を見据えた研究開発

ICTの進化とともに、エレクトロニクスが人々の生活により身近なものとなっています。ICTを支える半導体の需要が拡大する中、地球の持続可能性に対する世界的な意識の高まりを背景に、データ社会の進展と地球環境の保全の両立に向けた要請がさらに強まり、半導体に求められる性能も多様化しています。
東京エレクトロンは、夢のある社会の発展に貢献していくため、製造技術の革新と超高生産性の追求をはじめ、社会の変化を捉え未来を見据えた研究開発に取り組んでいます。

多様化に向かう市場
多様化に向かう半導体市場 Moore's Lawトランジスタ集積化による性能向上 アプリケーションが拡大し、製造技術も多様化する PC/Mobileシステム AIシステム 通信システム ヘルスケアシステム 交通システム ロボットシステム Customization多機能化 Hyper-mass超高生産性の追求

CPU: Central Processing Unit。コンピュータの中でデータの演算処理をおこなう「頭脳」にあたる半導体

研究開発力の強化

当社では、半導体の技術革新に必要な付加価値の高いnext-generation productsを継続的に創出しタイムリーに市場に投入するため、国内外の開発拠点、事業本部およびCorporate Innovation本部がそれぞれの独自性を保ちつつ、必要な領域で連携を取りながら技術開発や技術融合を展開しています。要素技術から量産製品までの開発体制を構築し、AI技術を活用したDXを研究開発において推進しています。
各開発拠点と事業本部では、先の世代を見据え革新的な技術を備えた半導体製造装置の開発に取り組むとともに、これらの製造装置の周辺技術に関わる研究開発も進めています。
Corporate Innovation本部では、各開発拠点と密接に連携して製品領域ごとの横断的な取り組みを展開するとともに、全体を俯瞰して研究開発の推進と最適化を図ることにより、さらなる付加価値の創出に努めています。また将来の価値創造に向けたシーズの探索や要素技術の研究開発も手がけています。

CSS: Corporate Senior Staff。当社執行役員、海外現地法人社長にて構成

Shift Left

当社は、製品開発プロセスの初期工程に、技術・人材・費用などのリソースを投じるShift Leftを重視し、お客さまと共創した技術ロードマップを実現するための各種技術の開発や、未来の複数世代を見据えた研究に取り組んでいます。
Shift Leftによる製品開発では、お客さまのご要望を早期に把握し、フィードバックで得られた情報を技術開発に反映させ、優位性の高い製品を提案することで、お客さまの製品デバイスの歩留まりと量産ライン装置稼動率の最大化に貢献しています。また、お客さまの工場や開発・研究所に早い段階で評価機を納入するオンサイトコラボレーションを推進し、技術開発から量産装置への反映までの早期化と開発効率の最大化を図っています。

プロダクトマーケティング

当社では、営業部門とプロダクトマーケティング部門がそれぞれの役割を適切に果たすことで、製品開発における生産性のさらなる向上に取り組んでいます。営業部門はお客さまとの確固たる信頼関係のもと、製品やサービスをお客さまに確実に提供する責任を担うとともにお客さまの真のニーズを的確に把握しながら、製品・サービスの改善や改良に関する取り組みを開発部門などと連携しながら推進し顧客満足度をさらに高めていくことに努めています。
一方、プロダクトマーケティング部門は、ターゲット市場におけるお客さまの将来的なニーズを満たす先進的な製品の企画や、その企画に基づく活動を展開しており、より付加価値の高い製品の創出を目指して自社の開発部門のシーズに基づいた新製品/新機能の検討などに加え、パートナー企業さまやコンソーシアムとの連携も含めた最適なコラボレーションについての検討もおこなっています。
また変化の激しい半導体業界においては、状況に合わせたタイムリーな方針変更をその都度実施する柔軟性も必要です。営業部門とプロダクトマーケティング部門が協力してプロダクトマーケティング活動を展開することにより、市場ニーズを先取りし、お客さまの製品に貢献するとともに当社の製品競争力の向上およびShift Leftの推進につなげています。

製品開発業務における営業部門とプロダクトマーケティング部門の役割

CIP: Continuous Improvement Program

コンソーシアム・アカデミアとの協業

当社は長期にわたり国内外のコンソーシアムやアカデミア(大学)との共同研究開発に注力しています。この取り組みは、現在欧米を中心に推進されているCHIPS法*¹の展開もあり、各地域におけるオープンイノベーションによる開発のメリットを最大限に生かしたインフラの整備に役立っています。近年では、日本のみならず海外の主要な大学とのコラボレーションにより半導体業界における人材育成の強化にも努めています。
2023年に創立20周年を迎えたTEL Technology Center, America での前工程、後工程領域の研究はもとより、次世代AIのハードウエア開発、先端ロジック開発、量子コンピューティング開発をおこなう世界的な研究ハブへの参画、パターニング技術のEUVおよび高NA EUV*²領域やロジックプロセス開発におけるimecとの協業、米国フロリダ州の非営利官民パートナーシップであるBRIDGとの提携など、半導体技術のさまざまな分野においてアプリケーションから製品の開発に至るまで幅広く協業を推進しています。
また日本最大級の公的研究機関である国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)との協業では、産総研がもつ世界有数の研究環境と人材を生かし、多様化が進む半導体開発においてMRAM*³関連や2次元材料などの研究に取り組むことにより、当社独自の研究開発の強化につなげています。

CHIPS法: Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors and Science Act。米国内での半導体の開発および量産やAI、量子コンピュータ、通信技術などへの投資を支援する法案を指す

EUVおよび高NA EUV: Extreme Ultraviolet。半導体業界では特定の波長13.5nmを使用した露光技術の総称。高NA EUVは次世代EUVを指し、NA(Numerical Aperture、開口数)を上げることにより解像できる線幅を短くする露光技術

MRAM: Magneto-resistive Access Memory。磁気抵抗メモリ

東北事業所、穂坂事業所、藤井事業所

合志事業所、大津事業所

Chaska Office、Chelmsford Office

アカデミアとの共同研究公募制度

当社は、半導体関連における先端要素技術の発掘と協業を目指して、2018年よりアカデミアとの共同研究公募制度を実施しています。この制度により、これまでの4年間において23件のテーマを採択し、さまざまな共同研究を進めています。
公募における研究テーマは自由であるものの、採択にあたっては①当社の技術ニーズと合致しアカデミアならではの独創的な視点や発想が見られること、②当社の技術力や企画力の向上につながり今後の事業領域拡大への貢献が期待されることを基準としています。当社の各開発本部やビジネスユニット (BU) 、また国内製造拠点などから選出された技術アドバイザーが採択に当たり、その後の共同研究活動に関する運営は事務局が担当します。研究期間は最長3 年間で、有効性のある成果が確認された場合には、研究の継続について検討をおこないます。
今後も半導体関連の技術開発や装置開発、および科学技術の進化とアカデミアにおける研究活動の活性化に寄与すべく、公募制度の取り組みを推進していきます。

知的財産マネジメント

当社は知的財産の保護・活用によって事業活動をサポートし、企業収益の向上につなげることを基本的な考え方として知的財産マネジメントを推進しています。
技術革新が成長を牽引する半導体業界において、持続的な成長を実現していくため、当社は産学連携を含む研究開発をグローバルに展開しています。本社および世界各地の研究開発・生産拠点に知的財産担当者を配置し、研究開発やマーケティングなどさまざまな角度からプロジェクトを検討するとともに、技術・製品戦略にあわせた知的財産権ポートフォリオを構築しています。
2022年に創出された発明の数は、日本で1,226件、その他諸国で317件にのぼりました。グローバル特許出願率*は10年連続で約70%を維持し、出願した特許の許可率は日本で74%、米国で81%に達しています。また、国内外のパートナー企業さまやコンソーシアム・アカデミアとの協業においても数多くの発明を創出しており、過去2年間で41件の特許を共同出願しています。
その結果、2023年3月31日時点の特許保有件数は、半導体製造装置業界では最多の21,645件であり、知的財産の分野における優位性をグローバルレベルで構築しています。
これらの活動が評価され、当社は昨年に引き続き「Clarivate Top 100 グローバル・イノベーター 2023」に選出されました。本賞は世界的な情報サービス企業であるクラリベイト社が特許データをもとに独自評価をおこない、独創的な発明アイデアを知的財産権によって保護し、事業化に成功して世界のビジネスをリードする企業・機関を年に一度選出するものです。
当社は量と質の両面で競争力のある知的財産権ポートフォリオを構築することで自社技術の差別化を図り、製品競争力の向上に努めています。

グローバル特許出願率: 出願に至った発明件数のうち複数国に出願された割合

製品競争力