TOKYO ELECTRON LIMITED

研究開発

未来を見据えた研究開発

ICTの進化とともに、エレクトロニクスが人々の生活により身近なものとなっています。ICTを支える半導体の需要が拡大する中、地球の持続可能性に対する世界的な意識の高まりを背景に、データ社会の進展と地球環境の保全の両立に向けた要請がさらに強まり、半導体に求められる性能も多様化しています。
東京エレクトロンは、夢のある社会の発展に貢献していくため、製造技術の革新と超高生産性の追求をはじめ、社会の変化を捉え未来を見据えた研究開発に取り組んでいます。

多様化に向かう市場
多様化に向かう半導体市場 Moore's Lawトランジスタ集積化による性能向上 アプリケーションが拡大し、製造技術も多様化する PC/Mobileシステム AIシステム 通信システム ヘルスケアシステム 交通システム ロボットシステム Customization多機能化 Hyper-mass超高生産性の追求

CPU: Central Processing Unit。コンピュータの中でデータの演算処理をおこなう「頭脳」にあたる半導体

研究開発力の強化

当社では、半導体の技術革新に必要な付加価値の高いnextgeneration productsを継続的に創出しタイムリーに市場に投入するため、国内外の開発拠点や、事業本部およびCorporate Innovation本部がそれぞれの独自性を生かし、必要な領域で連携を取りながら技術開発や技術融合を展開しています。要素技術から量産製品までの開発体制を構築し、AI技術を活用したDXを研究開発において推進しています。今後、2024年度からの5年間で1.5兆円以上の研究開発費を投入し、これらの活動を継続し加速させていきます。また、研究開発費とその成果物の売上への貢献度をモニタリングすることで、過去5カ年の研究開発費とその後5カ年の売上高を用いて開発の効率性を確認し、さらに開発効率を高める活動もおこなっています。
各開発拠点と事業本部では、先の世代を見据え革新的な技術の開発に取り組むとともに、周辺技術に関わる研究開発も進めています。Corporate Innovation本部では、製品領域ごとの横断的な取り組みを展開するとともに、全体を俯瞰して研究開発の推進と最適化を図っています。また将来の価値創造に向けたシーズの探索や要素技術の研究開発も手がけています。
当社グループ各拠点における優れた研究・開発成果には、グローバル表彰制度に加え、社内技術交流会の優秀賞、環境技術アワード、DXアワードなどを授与し、エンジニアのものづくりへのモチベーション向上に取り組んでいます。

開発体制のさらなる強化

当社は、将来の成長を見据え積極的な投資をおこない、開発体制のさらなる強化に努めています。これまで宮城技術革新センターや東京エレクトロン テクノロジーソリューションズの穂坂事業所において新開発棟を竣工しました。さらに、2025年には東京エレクトロン宮城と東京エレクトロン九州において新開発棟の稼動を計画しています。

宮城技術革新センター
(2021年9月竣工)

東京エレクトロン
テクノロジーソリューションズ
穂坂事業所 新開発棟
(2023年7月竣工)

東京エレクトロン宮城 新開発棟
(2025年春竣工予定)

東京エレクトロン九州 新開発棟
(2025年夏竣工予定)

Shift Left

当社は、製品開発プロセスの初期工程に、技術・人材・費用などのリソースを投じるShift Leftを重視し、お客さまと共創した技術ロードマップを実現するための各種技術の開発や、未来の複数世代を見据えた研究に取り組んでいます。
Shift Leftによる製品開発では、お客さまのご要望を早期に把握し、フィードバックで得られた情報を技術開発に反映させ優位性の高い製品を提案することで、お客さまの製品デバイスの歩留まりと量産ライン装置稼動率の最大化に貢献しています。また、お客さまの工場や開発・研究所に早い段階で評価機を納入するオンサイトコラボレーションを推進し、技術開発から量産装置への反映までの早期化と開発効率の最大化を図っています。

マーケティング

当社では、デバイス技術やお客さまの製品ロードマップ、競合分析をもとに、事業本部やアカウントおよびコーポレート組織のマーケティング部門がそれぞれ適切に役割を果たし相互に連携することで、中長期経営計画の実現を目指しています。
事業本部のビジネスユニット (BU) に所属するマーケティング部門は、各BUのターゲット市場におけるお客さまのニーズを満たす先進的なnext-generation productsの企画や、それに基づくプロモーション活動を展開します。一方、アカウントおよびコーポレート組織に所属するマーケティング部門は、お客さまにおける将来のHVP (High Value Problem) を解決するため、事業本部のnext-generation productsを組み合わせたクロスBUでのインテグレーションや事業本部の製品ポートフォリオに含まれない新市場向けの先進的な新製品の企画、またそれらの企画に基づくソリューションの提案をおこないます。
事業環境の変化が著しい半導体業界においては、状況に合わせたタイムリーな方針変更をその都度実施する柔軟性が必要です。それぞれのマーケティング部門が協力して活動を展開することにより、市場ニーズを先取りしお客さまの製品に貢献するとともに、当社の製品競争力の向上およびShift Leftの推進につなげています。

コンソーシアム・アカデミアとの協業

当社は長きにわたり国内外のコンソーシアムやアカデミア(大学) との共同研究開発を続けています。この取り組みは、各地域におけるオープンイノベーション開発のメリットを最大限に生かした開発基盤の整備にも役立っています。近年では、日本のみならず海外の主要な大学とのコラボレーションにより半導体業界における人材育成の強化にも努めています。
TEL Technology Center, Americaでの前工程、後工程領域の研究はもとより、次世代AIのハードウエア開発や先端ロジック開発、量子コンピューティング開発をおこなう世界的な研究ハブへの参画、パターニング技術のEUVおよび高NA EUV領域やロジックプロセス開発におけるimecとの協業、非営利官民パートナーシップであるBRIDGとの提携など、アプリケーションから製品まで幅広い開発を推進しています。技術革新のスピードが速い半導体産業において、先行して新技術を開発することは企業の成長の源泉です。先端露光技術の開発のみならず、10年先を見据えた市場調査をおこない技術変化点を抽出・特定し、CFETやTMDC*¹などの新構造・新材料によるイノベーションの創出にも貢献していきます。
また日本最大級の公的研究機関である国立研究開発法人産業技術総合研究所 (産総研) との協業では、産総研がもつ世界有数の研究環境と人材とともに、多様化が進む半導体デバイス製造に必要な先端要素技術開発、およびTMDCや2次元材料の研究に取り組むことにより、当社独自の研究開発力の強化につなげています。

TMDC: Transition Metal Di-Chalcogenide。遷移金属カルコゲナイド。WS2、MoSe2など2次元トランジスタに適用される材料

藤井本社、穂坂事業所、東北事業所

合志本社、大津事業所

Chaska Head Office、Chelmsford Office

アカデミアとの共同研究公募制度

当社は、半導体関連における先端要素技術の発掘と協業を目指して、2018年よりアカデミアとの共同研究公募制度を実施しています。この制度により、これまでの4年間において23件のテーマを採択し、さまざまな共同研究を進めています。
公募における研究テーマは自由であるものの、採択にあたっては①当社の技術ニーズと合致しアカデミアならではの独創的な視点や発想が見られること、②当社の技術力や企画力の向上につながり今後の事業領域拡大への貢献が期待されることを基準としています。当社の各開発本部やビジネスユニット (BU) 、また国内製造拠点などから選出された技術アドバイザーが採択に当たり、その後の共同研究活動に関する運営は事務局が担当します。研究期間は最長3 年間で、有効性のある成果が確認された場合には、研究の継続について検討をおこないます。
今後も半導体関連の技術開発や装置開発、および科学技術の進化とアカデミアにおける研究活動の活性化に寄与すべく、公募制度の取り組みを推進していきます。

知的財産マネジメント

当社は知的財産の保護・活用によって事業活動をサポートし、企業収益の向上につなげることを基本的な考え方として知的財産マネジメントを推進しています。
技術革新が成長を牽引する半導体業界において、持続的な成長を実現していくため、産学連携を含む研究開発をグローバルに展開しています。知的財産部門が各地の開発・生産拠点において研究開発部門や事業部門と連携するとともに、本社においてもマーケティング部門と連携することで、開発におけるシーズや市場のニーズに基づき創出されるイノベーションを適切に保護し、Shift Leftを重視した研究開発戦略に対応する知的財産権ポートフォリオを構築しています。
2023年に創出された発明の数は、日本で1,186件、海外で303件にのぼりました。グローバル特許出願率は5年連続で約75%を維持し、許可率*は日本で81%、米国で80%に達しています。

また、国内外のパートナー企業さまやコンソーシアム・アカデミアとの協業においても数多くの発明を創出しており、過去3年間で61件の特許を共同出願しています。
その結果、2024年3月末時点の特許保有件数は、半導体製造装置業界でNo. 1の23,249件であり、知的財産の分野における優位性をグローバルレベルで構築しています。
また、当社の特許ポートフォリオは、他社への影響力や近年の技術的価値上昇度などにおいて高い評価を受けており、2023年に引き続き、「Clarivate Top100 グローバル・イノベーター 2024」、および「LexisNexis Global Top 100 Innovation Momentum 2024」にも選出されています。
当社は、知的財産を中長期的な企業価値向上における重要な資産と位置づけており、今後も量と質の両面で競争力のある知的財産権ポートフォリオを構築することで自社技術の差別化を図り、製品競争力の向上に努めていきます。

2023年算出値