生産性向上の推進
業務効率化と新たな価値の創造
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進と体制強化
当社は、経営の重要事項であるマテリアリティを軸とした事業活動の加速・強化に向けて、2021年1 月よりDX活動における商品改革と業務改革を開始しました。グローバル統合情報の活用や業務効率の改善を目的とした、グループ共通の新基幹システムの導入を進めており、本社および一部の製造拠点・現地法人では導入を完了しています。また、すでにグループ全体で数百件を超えるプロジェクトが終了し、グループ横断で全社員が業務改革DX活動を推進していく新たなフェーズでの取り組みを開始しています。
商品改革においては、開発から量産までのさまざまな場面で①認識 (センシングとモニタリング)、②分析と予測、③制御、④学習と進化 (自律化) のプロセスを繰り返しながら高度な課題を解決し、お客さまの価値創造への貢献を目指しています。その他にも、全社横断で30以上の取り組みを展開しており、市場環境や経営戦略の変化に柔軟に対応しながら、今後も取り組みを継続していきます。
業務改革においては、全社員による業務改革DX活動を推進し、すべての業務における資本効率向上を目指しています。今後さらなる拡大が見込まれる市場をアウトパフォームし当社が成長し続けるためには、DXの推進による業務改革と生産性の向上が不可欠です。業務改革によって効率化を図るとともに、新しい業務形態への移行を進めることで、利益の拡大と社員のワーク・ライフ・バランスの両立を実現させながら、持続的な企業価値の向上に貢献していきます。
また、DXのさらなる推進に向け、業務部門とIT部門が迅速かつシームレスに連携する体制を構築するため、本社およびグループ全社のIT部門を統合し再編するとともに、業務デザイン戦略本部として当社の重要な本部組織の1つに位置づけました。これにより、グローバルでのガバナンス強化とともに、DX推進体制を一層強固なものとしています。
業務改革DX推進戦略
当社グループのDXは、全社員がデジタルを活用したデータドリブンな業務をおこなうことで、利益の拡大と社員のワーク・ライフ・バランスを両立し、持続的な企業価値向上を目指す重要な取り組みです。業務デザイン戦略本部では、DX推進に向けた新たなミッション・ビジョン・バリューを策定し、具体的な目標を定めて取り組みを加速させています。
当社グループにおける業務改革DX活動のアプローチには、トップダウンDXとボトムアップDXがあります。経営視点から重点課題を特定し、全社一体で解決していく「トップダウンDX」は、案件ごとにプロジェクト化して改革に取り組みます。また、現場主導で進める「ボトムアップDX」は、デジタル技術を活用しながら全社で連携して改革に取り組みます。トップダウンDXとボトムアップDXの両輪で取り組みを推進することで、経営および現場の双方向で主体的かつ継続的にDXによる業務改革を実現していくことを目指しています。
これらの取り組みにおいては、未来に向けて継承していく価値観であり行動規範であるTEL Valuesを、経営層から現場の社員一人ひとりまでが体現し続けることが重要です。その中で、業務デザイン戦略本部は、改革促進のキードライバーとして、経営目標に則したロードマップや計画の策定をはじめ、生成AIや市民開発などのデジタル技術を活用するための環境整備、また人材育成やDX文化を醸成するチェンジマネジメントなど、エコシステムの構築に向けた施策を主導しています。
持続的な成長を支えるエコシステムの構築
具体的な取り組み
当社では、これまで拠点や部門ごとにサイロ化されたシステムとデータ活用による個別最適の業務改善が中心でしたが、現在は業務工数の増大や投資の非効率性などの観点から課題を洗い出し、グループ全体での統合的な業務改善の実現に取り組んでいます。具体的には、「データドリブン経営」と「業務プロセス改革」の2つの柱を軸にグループ全体で業務改革DXを推進し、相互作用によるシナジー創出を目指した取り組みを加速しています。
データドリブン経営では、グループ全体のデータ基盤の整備や役割と機能に応じたKPIの設定を通じて、迅速かつ的確な意思決定プロセスの構築を進めています。
業務プロセス改革では、データドリブン経営に必要なデータを効率的に供給しつつ、可視化されたデータに基づいて業務課題を抽出し、デジタル技術を活用した業務プロセス最適化の実現を目指しています。
業務効率化
当社では、生産性と品質のさらなる向上を目指した新基幹システム(ERP*)の導入を進めています。業務や国の垣根を越えて運用される本システムの目的は、①大幅な業務効率の改善、②変化に迅速に対応した経営判断、③デジタルトランスフォーメーションを見据えたグローバル統合情報の活用の実現により新たな価値を創出することです。
2021年度に本社において、また2022年度には国内の保守パーツ倉庫においてそれぞれ本システムの導入を完了しました。今後はこれまでの過程で得られた知見を最大限に活用し、海外
現地法人および国内製造拠点への導入を順次進めていきます。また、パートナー企業さまとのご協力のもと、業務の改善および効率化やシステムパフォーマンスをさらに強化するための機能開発などをおこないグローバル統合システムを実現します。
新基幹システム概要
ERP: Enterprise Resource Planning。企業の「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合し、効率化、情報の一元化を図るためのシステム
ワールドクラスの製造オペレーション
Smart Manufacturingによるものづくり改革
当社は、製造拠点における生産革新を継続的に追求し、製品品質と収益性の向上に努めています。そして、長年にわたり培った知見と蓄積したデータを活用することで、ワールドクラスの製造オペレーションを展開しています。
東京エレクトロン宮城では、2027年夏の生産新棟の竣工に向けて、高効率の製造ライン構築に向けた検証を進めています。具体的には、高品質の製品を安定的に生産するため、デジタル技術や自動化技術を駆使し、製造工程アーキテクチャ*¹をSmart Manufacturing
Lineとして構築することにより、お客さまのニーズへの対応力や市場での競争力を一層強化していきます。さらに、製造工程やそれらを支える管理・間接工程においてもSmart Productアーキテクチャ*²を構築することにより、開発から量産までのリードタイム短縮を可能とする業務フローを設計しています。これにより、省人化や定型業務の自動化を進め、生産性の飛躍的な向上を目指しています。
各モジュールのドッキング工程の自動化
製造工程アーキテクチャ: 製造プロセスの標準化や効率化
Smart Productアーキテクチャ: 生産キャパシティ管理・生産計画・顧客仕様設計・調達など、製造工程以外の間接部門の業務効率化
One-touch立ち上げに向けた取り組み
当社はお客さまにおける装置の立ち上げ期間の短縮や、安全・品質の確保を目的に「One-touch立ち上げ」の実現に向けた継続的な改善活動を推進しています。設置・用力接続作業の簡素化や計測・制御技術の開発により、立ち上げ期間の短縮だけではなく、作業品質の向上、人為的な事故のリスク低減や作業ミスの防止に取り組んでいます。また、高品質の装置を短期間でお客さまへお引き渡しするため、装置立ち上げ後のプロセス性能チューニングの自動化や自律化技術の研究開発を推進しています。
実際に装置の立ち上げを担うエンジニアに対しては、装置の3Dモデルを活用し、VR技術を用いたグローバル共通のトレーニングプログラムを展開することで、据付・立ち上げにおける品質のさらなる向上を図っています。
装置の3Dモデルを活用したトレーニングの一場面
Smart化に向けての取り組み(データソリューション)
当社は各製造拠点における高効率の生産に向け、生産に関するあらゆるデータをリアルタイムで連携・情報化し、最適な意思決定と即時アクションが可能となる卓越した生産体制の構築に取り組んでいます。製造現場のセンシング機能を拡張し、そのデータを活用することで、適切かつ柔軟な生産計画の策定や高効率な製造ラインの運用を実現し、品質の高い装置の製造を目指しています。
デジタルトランスフォーメーションによる革新的な生産体制
PLM: Product Lifecycle Management。製品ライフサイクル管理
ERP: Enterprise Resource Planning。経営資源計画
MRP: Material Resource Planning。資材所要量計画
MES: Manufacturing Execution System。製造実行システム