No.009 特集:日本の宇宙開発
連載01 スマホの未来と私たちの生活
Series Report

超小型のパソコン

スマホが誕生して、これまでの携帯電話やパソコンと大きく違ったことを整理しよう。携帯電話とのもっとも大きな違いは、アプリというソフトウエアである。携帯電話機は、ラジオなどの機能をハードウエアで実現するため、チューナというハードウエアを搭載していなければ視聴できないが、スマホはハードウエアではなくアプリというソフトウエアをインストールすることでラジオ機能を追加できる。テレビ放送は現在、行政の許可がなくては視聴できないが、もし許認可が通ればチューナを搭載しなくてもスマホでテレビを見ることは原理的に可能だ。ラジオもテレビもデジタル化されているからだ。

ソフトウエアで機能を追加できるという点ではパソコンも同じである。しかし、パソコンは歩きながら片手でキーボードを打ったり、マウスなどのポインタデバイスを操作したりできない。パソコンはスマホと比べて、重くて大きくかさばる。一方、スマホはパソコンの機能を持ちながら、小さくて軽く、片手で操作できる。このためインターネットに四六時中つなぎながら楽しむことができるのだ。

スマホで初めて実現できたサービスとして、音楽視聴サービスがある。こちらでは従来のダウンロードサービスから、ダウンロードせずにストリーミングで楽しむ音楽ビジネスが台頭してきている。アップル社は月額9.9ドルで3000万曲を聴き放題できるアップルミュージックを始めた。このサービスはパソコン時代には不可能だった。かつての「ウォークマン」プレイヤーのようなスタイルで、好きな音楽を何曲でも楽しむことができる。

ユーザーエクスペリエンスを創りだす

スマホがもたらした初めての機能は、タッチパネルによる指の動作でページをめくる動作や、拡大・縮小の動作(ピンチイン、ピンチアウトという)、画面を90度傾けると画面のコンテンツも90度傾く動作など、人間の操作に近い「楽しさ」を与えてくれたことだ。この楽しさを、ユーザーエクスペリエンスという言葉で表現している。

タッチパネルは今や、スマホだけではなく、タブレットやモバイルコンピュータにも使われるようになり、パソコンにまで搭載されるようになった。工業用のパネル、自動車や航空機の液晶パネルにも使われるように広がっていった。

未来はファブレットへ

スマホの未来はこれからも広がっていく。まずスマホのハードウエアそのものの画面が大型化し、これまでは、スマホ、タブレットミニ、タブレットというように、4インチから10インチの画面まで連続的にモバイル製品が形成されていくと考えられていた。ところが、タブレットは早くも頭打ちの飽和気味になってきている。一方で、iPhone 6やiPhone 6プラスで見られるようにスマホの大画面化が進んでおり、しかも成長している。

そこで、エリクソン社は、スマホの画面サイズに関してもアンケートを取っている。それによると(図5)、ビデオを楽しむ用途では画面は大きければ大きいほど良いが、ウェブブラウジングやソーシャルネットワーキング(ツイッターやフェイスブック、LINEなど)、通話サービスなどを楽しむ場合は5インチから6インチのスマホ(ファブレットと呼ばれる)が好まれている。

スマホ画面には最適な大きさがあるの図
[図5] スマホ画面には最適な大きさがある
出典:Ericsson

こういった嗜好は、画面がただ大きければ大きいほど良いという訳ではなく、ウェブブラウジングなどには、最適な大きさの画面があるということになる。アップル製品で言えば、iPhone 6やiPhone 6プラスのような大きさが最適な大きさといえそうだ。iPadミニでさえ、大きすぎるようだ。今後のスマホは6インチまでの大きさの画面の製品がこれから続々出てくるに違いない。
次回、第2回では、スマホの機能に係わるテクノロジーについて詳しく紹介していく。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

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