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AI顕微鏡は、数分でガン細胞を見つける
2021.2.22
ガンの外科手術において最も重要なのは、当然ながら確実にガン細胞を除去できたかどうかだ。少しでもガン細胞が残っていると、それが転移していく可能性がある。しかし手術の最中に、その判定を行うことは難しい。ガン細胞が残っているかどうか調べるには、顕微鏡で組織を観察しなければならないが、そのためには組織を薄くスライスして、顕微鏡のスライドに載せる必要がある。スライドを作るためには高価な専用の装置とそれを扱える専門スタッフが必要で、どうしてもコストと時間がかかってしまうのだ。
米ライス大学の研究チームが開発したAI顕微鏡、DeepDOFはこの問題を解決するかもしれない。
そもそもなぜ顕微鏡で観察するためにスライドを作る必要があるかといえば、被写界深度の制約だ。顕微鏡の対物レンズは、対象物が数百万分の1メートルずれるだけで、ぼやけてしまう。そのためサンプルはスライドにして、厳密にピントを合わせなければならない。
DeepDOFは、標準的な光学顕微鏡と安価な光学位相マスクで構成される。位相マスクは対物レンズの上(DeepDOFでは対物レンズが上向きになっている)に置かれ、顕微鏡に入ってきた光を変調させる。さらに、研究チームはディープラーニングを使って多数の画像を学習させ、さまざまな深さにあるサンプルに焦点を当てられるようにした。
これにより、スライドにしていない組織のサンプルをDeepDOFの対物レンズ上に置くだけで、最短2分で、何枚もの精密なスライドを観察するのと同等の結果を得ることができる。
研究チームは2021年中に臨床試験を開始する予定だという。