Science Newsサイエンスニュース

太陽エネルギーを数ヶ月から数年保存する新素材

2021.2.8

太陽エネルギーを蓄えられる物質を応用すれば、冬でも着氷しないコーティング材になる。
太陽エネルギーを蓄えられる物質を応用すれば、冬でも着氷しないコーティング材になる。

世界的に、再生エネルギーへの移行を目指す動きが進んでいる。再生エネルギーの利用における重大なポイントの1つが、分散型電源だ。火力発電所、水力発電所、原子力発電所といった大型発電所で作った電気を送電網で送るのではなく、小規模な発電設備を消費地の近くに配置して電力供給を行うことになる。
そこで必要とされるのが大容量の蓄電池だ。大規模電力貯蔵用としては、リチウムイオン電池、溶液をポンプで循環させるレドックス・フロー電池、ナトリウム・硫黄(NaS)電池が用いられている。
上記の蓄電池はあくまで電気を貯めるもの。一方、太陽などからのエネルギーを電気にせずに貯蔵するアプローチもある。
英ランカスター大学の研究チームが行った発表も、このアプローチの一種だ。
同研究チームは、京都大学のチームが開発したMOF(金属有機構造体)、DMOF1に注目した。MOFとは、金属イオンが炭素ベースの分子で結合された多孔質の物質。DMOF1の細孔には、光を吸収する性質のあるアゾベンゼン分子が充填されている。
研究チームがDMOF1を紫外線にさらすと、少なくとも4ヶ月間にわたって、室温でエネルギーを蓄えられることがわかった。化学物質に太陽エネルギーを蓄える物質はこれまでにも研究されていたが多くは液体で不安定だった。DMOF1は固定で化学的に安定しているという利点がある。
数カ月以上にわたってエネルギーを蓄えられるのであれば、夏に貯めたエネルギーを冬に放出することも可能になる。研究チームは、分散型電源や、自動車のフロントガラスや建物のコーティング材としての応用を検討している。

(文/山路達也)

Cross Talk

心のスポーツ、ゴルフはAIでどう進化するのか

心のスポーツ、ゴルフはAIでどう進化するのか

前編 後編

Visiting Laboratories

工学院大学 工学部機械工学科 スポーツ流体研究室

生物をまねて高速泳法を創出、バレーボールの最適なボールも実現 ~ 流体力学をスポーツに応用

第1部 第2部

Series Report

連載01

ダウンサイジングが進む社会システムの新潮流

「発電所のダウンサイジング」で、エネルギーの効率的利用を可能に

第1回 第2回 第3回

連載02

アスリートを守り、より公平な判定を下すスポーツテクノロジー

「働くクルマのダウンサイジング」で農業と建設、物流に革新を

第1回 第2回 第3回

TELESCOPE Magazineから最新情報をお届けします。TwitterTWITTERFacebookFACEBOOK