Science Newsサイエンスニュース
タンパク質構造予測を可能にするAI
2021.3.22
ディープラーニングを中心としたAI技術の進歩は、すさまじい。2016年に、DeepMind社のAlphaGoが世界トップ棋士を4勝1敗で破り、囲碁ではもはや人間はコンピュータに勝てなくなってしまった。2017年12月のAlphaZeroは、自己対戦を繰り返すことで24時間以内に、チェス、将棋、囲碁の世界チャンピオンレベルに達し、2019年6月のAlpha Starではビデオゲームの『StarCraft II』でも人間に勝利している。
そして、同じDeepMind社が2020年11月に発表したAlpha Foldingによって、バイオテクノロジー分野も大きく変わりつつある。Alpha Foldingは、タンパク質の構造予測を行うためのAIプログラムだ。
タンパク質は複数のアミノ酸が結合してできているが、単純な結合ではない。3次元的に複雑に折りたたまれており(フォールディング)、この構造によってタンパク質の働きはまったく変わってくる。アミノ酸の列がどうやって折りたたまれるのかを予測するには、莫大な計算コストが必要になる。分散コンピューティングプロジェクトの「Folding@home」は、ボランティアのパソコンやゲーム機を使うことで、スーパーコンピュータ並みの優秀な結果を出している。
AlphaFoldは、2020年に開催されたタンパク質構造予測精密評価 (CASP)ランキングで、圧倒的に高い精度を獲得。ディープラーニングの分野では、アテンション・ベースドという手法に注目が集まっており、AlphaFoldもこれを利用している。アテンション・ベースドでは特定の入力に注目して学習の効率を上げていくが、AlphaFoldもこれまでのフォールディング結果を元に、予測を洗練させていった。AlphaFoldは、COVID-19の病原体である、SARS-CoV-2のタンパク質の構造を予測することに成功している。