No.009 特集:日本の宇宙開発
連載01 スマホの未来と私たちの生活
Series Report

第3回
IoTとも共存、さらに広がるスマホ

 

  • 2015.11.20
  • 文/津田 建二

連載1回目でレポートしたように、世界のスマートフォン市場の未来は明るい。少なくとも東京オリンピックが開催される2020年までは、確実に成長を続けるだろう。その理由として、ガラケーにはないスマホならではのユーザーエクスペリエンスの特徴を2回目の記事でお伝えした。今回は、さらに、スマホの多岐にわたる分野への広がりついて解説し、未来に向けたさらなる成長を展望する。

スマートフォンの利用状況は、国によって異なる。日本だけを見るとガラケー(フィーチャーフォン)は依然として強いが、これは日本特有の現象であることを認識する必要がある。2015年6月に発表された資料で各国の人口に対するスマホの普及率を見ると、韓国が73%、シンガポール71.7%、中国が46.9%、台湾50.8%、香港62.8%、米国56.4%、英国62.2%、フランス42.3%、ドイツ39.8%など、アジアと欧米の差はほとんどない中、日本はなんと24.7%しかない(参考資料1*1)。総務省の調査資料でも日本はガラケー天国というレポートがある(図1)。日本市場だけを見て、スマホはもう伸びないと判断するのは、成長性を見誤る恐れがある。

ガラケー比率の図
[図1] 日本はガラケー比率が異常に高い
出典:総務省

スマホの普及率の特長は、先進国と発展途上国の差がないことである。途上国では、ガラケーや黒電話などの有線電話を経ずに突如スマホの利用がひろがった。スマホはガラケーと違い、パソコンとしても使えることがその理由だ。すでにコンピューティングのプラットフォームとしての地位を確立していると言ってよいのではないのだろうか(参考資料2*2)。

スマホがIoTのハブに

現在、スマホの部品をつくる村田製作所やアルプス電気、京セラ、TDK、太陽誘電、日本電産などの業績は好調だ。一時期頻繁に目にした「ポストスマホ」という言葉は新聞から消え、代わって、いま新聞市場を賑わしているのは、IoT(インターネットオブシングス)やウェアラブル、ヘルスケア、自動運転などの言葉である。

勿論、これらの新しい分野に、スマホは関係してくる。例えば、ウェアラブルやヘルスケアなど民生用IoTのハブ機能(図2)。Apple Watchや活動量計などのウェアラブルデバイスは、Bluetooth LE(消費電力の少ない近距離無線通信規格)を通じて、歩数や歩行速度、心拍数などの活動量のデータをスマホに送り、それをスマホに貯めたり、クラウドに送ったりする。クルマにおいてもクルマ同士あるいはクルマと道路インフラをつなぐ通信デバイスとしてスマホが使われる可能性がある。なぜならM2M(Machine-to-Machine)の通信モジュールを導入すると原価が数万円高くなるからだ。特に乗用車ではコストダウンが最重要課題になるため、スマホが導入される可能性は極めて高い。

スマホは民生用IoTのハブとなるの図
[図2] スマホは民生用IoTのハブとなる

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