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完全にフラットな⿂眼レンズでカメラが変わる

2021.1.26

MITの平面魚眼レンズは、微細なパターンによって光を制御している。
Image: Mikhail Shalaginov, Tian Gu, Christine Daniloff, Felice Frankel, Juejun Hu
MITの平面魚眼レンズは、微細なパターンによって光を制御している。

かつては、マニアックなアイテムだった魚眼レンズも、さまざまなアクションカメラに採用されてすっかりメジャーになった。前面・背面に魚眼レンズを搭載したアクションカメラであれば、360度のパノラマを撮影できる。被写体が大きく歪む魚眼レンズだが、画像処理技術の進歩で、誰でも簡単に扱えるものになった。
ただし、現在の魚眼レンズは、製造コストが高く、なおかつ重くなってしまうため、スマホなどに搭載するには不向きである。
MITとマサチューセッツ大学ローウェル校の研究チームが開発したのは、完全に平面の魚眼レンズだ。
この魚眼レンズは、従来のガラス材料を用いた光学的なレンズとは異なる、「メタレンズ」になっている。電磁波に対して自然界にはない振る舞いをする人工的な物質のことを「メタマテリアル」というが、これを用いたレンズということだ。
今回の平面魚眼レンズの表面には、数mm厚の薄い材料の表面に、微細パターンが刻まれている。材料は、フッ化カルシウムの透明な板にテルル化鉛の薄膜を蒸着したもの。微細なパターンは、リソグラフィによって刻まれた。通常の魚眼レンズではガラスの曲率によって、光が散乱するのにかかる時間がずれるが、研究チームは同様の効果を生み出すパターンを算出した。
今回試作されたレンズは、中赤外線領域で動作するようになっており、180度の範囲を撮影できる。研究チームによれば、レンズの材質やパターンを変更することで、可視光の領域にも適応させられるという。
超薄型レンズで180度を一度に撮影できるとなれば、応用範囲は極めて広い。医療用の内視鏡やセキュリティカメラも大幅に小型化できる可能性がある。VR/ARヘッドセットの小型化・薄型化にも貢献することになりそうだ。

(文/山路達也)

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