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ロケットエンジンの課題を解決する
「折り紙式」燃料タンク

2021.3.8

ポリエステルフィルムで作られた蛇腹構造のタンクは、極低温下でも壊れない。
Photo by Washington State University
ポリエステルフィルムで作られた蛇腹構造のタンクは、極低温下でも壊れない。

現在の液体燃料ロケットエンジンでは、燃料として液体水素と液体酸素が用いられている。これら液体燃料の取り扱いは、非常に厄介だ。極低温状態で燃料を保存する必要があるため、結局金属製の燃料タンクを使わざるをえない。また、燃料を移動させるために表面張力の原理を用いていることもあって、少量ずつしか燃料を動かせない。
これらが制約となっているため、液体燃料ロケットエンジンは、主に大量の貨物を短期間で輸送する用途、あるいは人工衛星の姿勢制御用に用いられている。姿勢制御用には液体水素ではなく常温で保存できるヒドラジンなどが使われるが、ヒドラジンは腐食性が強いという欠点もある。
液体酸素や液体水素を長期間保存できる「袋」のようなタンクがあれば、燃料をポンプで効率的に送ることができ、液体燃料ロケットエンジンの用途は大幅に広がることになる。1960年代から1970年代にかけても、液体水素を貯蔵する気球の研究が試みられたが、極低温では気球がすぐに壊れてしまい、燃料タンクとしては使い物にならなかった。
米ワシントン州立大学のKjell Westra博士らが着目したのは、折り紙を使った蛇腹構造だった。研究チームは、薄いポリエステルフィルムを使って、蛇腹構造のタンクを試作。絶対温度77度の液体窒素中でこの燃料タンクの試験を行ったところ、最低でも100回はタンクを絞ることができ、内部に入れた液体が漏れるようなことはなかった。今後は、液体水素を使った実験を行い、燃料の貯蔵、排出の効率を評価する予定だという。

(文/山路達也)

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