No.009 特集:日本の宇宙開発
連載01 スマホの未来と私たちの生活
Series Report

iPhone 6Sに見るテクノロジー

では、スマホのハードウエアとしての機能は、今後どのようになるか。その答えの一つが9月25日に発売されたiPhone 6Sに見ることができる。6Sでは、プロセッサが大きく変わった。スマホの頭脳ともいうべきアプリケーションプロセッサ(APU)は最先端半導体の14nm FinFETプロセス(参考資料3*3:3次元構造を持つ新しいトランジスタを基本とする製造技術)を使い、プロセッサ性能を70%上げ、APUに集積しているグラフィックスコアの性能も90%向上した。これによって、ウェブブラウジングや検索の表示、さらにはゲームの表示がより一層速くなった。

消費電力を上げずに性能を上げる

APUは、64ビットアーキテクチャ(1と0を64個並べたデータ幅を基本とするコンピューティング手法)のCPU(中央処理ユニット)と、64ビットGPU(グラフィックスプロセッサ:コンピュータ上で図形や絵を描くための専用プロセッサ)、さらにビデオ映像を圧縮するエンコーダと復元するデコーダ(両方合わせてコーデックと呼ぶ)、USBやMHLあるいはSlimPortなどの各種モバイルデバイスのインターフェース回路などを1つのシリコンチップに集積している。これらの機能を別々のチップで作ると消費電力が増加し、電池寿命が短くなるためだ。今回iPhone 6Sに導入された「A9」プロセッサのCPUコアには、デュアルコア64ビットプロセッサ(注1)が用いられ、消費電力を上げることなく、性能を上げることに成功している。

また、アップルのiPhone 7などに向けて、次世代最先端製造技術である10nm FinFETの開発がすでに始まっている。APUに集積するCPUやGPUなどの個別の回路をIP(知的財産)コアと呼ぶが、このIPコアを10nmのFinFETプロセスで製造できるかの確認作業を終えたというプレスリリースが相次いで発表されている(参考資料4*4)。その状況を鑑みると、iPhone 7におそらく搭載されることになるA10プロセッサは、10nm Fin FETプロセスで製造され、性能はさらに向上するだろう。

センサハブM9は触覚センサも制御

スマホに重要な機能は、この連載第2回でも述べたようにセンサである。iPhone 5Sから追加されたMシリーズと呼ぶコプロセッサ(CPUプロセッサと一緒に協調しながら動作するセンサ信号処理専用のプロセッサ)は、iPhone 6Sから「A9」プロセッサのICパッケージ内に実装されるようになった(図3)。これまでコプロセッサは、プロセッサと別に実装されていたが、パッケージ化することでCPUとやり取りする距離が短くなり動作は安定、消費電力も下がるのである。

M9コプロセッサはA9プロセッサのパッケージ内に実装の図
[図3] M9コプロセッサはA9プロセッサのパッケージ内に実装されている
出典:iPhone 6S-テクノロジー
http://www.apple.com/jp/iphone-6s/technology/

iPhone 6S のM9コプロセッサが扱うのは、様々なセンサからの信号を処理する機能である。画面を横に傾けると、画面の中身をそれに従って見やすいレイアウトに変える加速度センサや、電子コンパスに使われる磁気センサ、回転を検出するジャイロセンサ、気圧を測定する圧力センサなどがiPhone 6Sには搭載されているが、M9コプロセッサはそれら全てを制御する。

iPhone 6Sには、さらに新しいセンサが追加されている。それは3D Touchと呼ばれる触覚センサだ。これは静電容量の変化で画面を押す圧力の違いを検出し、その圧力によって色々なコマンドを対応させるというものだ。

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