No.009 特集:日本の宇宙開発
連載03 実用期を迎えるフレキシブルエレクトロニクス
Series Report

産業技術総合研究所と味の素は、圧電材料を使ったインクでセンサアレイ(複数の小さなセンサを一つの基板上に並べたもの)を試作している。産総研と味の素は、共同で圧電性を示すポリアミノ酸材料を開発、それをインク化し、さらにリーク電流(絶縁体や誘電体など電流を流したくない部分への電流の漏れ)を抑える素子構造を適用することで、フレキシブル基板上に印刷技術を用いてセンサアレイを作製することに成功した。

英国ペラテック社は、圧力で電気抵抗を変えられるフレキシブルなセンサを開発している(図4)。ゲーム機やクルマ用のシート、タッチスクリーン、さらに医療機器の患者の位置を補正する用途など想定されている。例えばクルマのシートに使えば、ドライバの座る位置がいつもと同じかどうかを判断、正常なポジションに自動的に椅子を動かしてくれるのだ。

圧力が高まると内部の導電粒子が集まり電気が流れやすくなる(抵抗が下がる)ことを利用したピエゾ抵抗センサの図
[図4] 圧力が高まると内部の導電粒子が集まり電気が流れやすくなる(抵抗が下がる)ことを利用したピエゾ抵抗センサ
出典:PeratechとIDTechEx

温度センサでさえ、フレキシブルなものを作ろうという動きがある。従来、温度センサは金属酸化物のセラミックで作られていた。セラミックは固い。そこで、例えば、ゼロックス社のPARC(パロアルト研究センター)では、金属酸化物の粒子とソルダーペースト(クリーム状のはんだ)を混ぜ合わせたセンサを開発。PSTセンサ社はナノシリコン(シリコンの小さな粒)をインクに溶かしたセンサを独自に開発している(図5)。 その他ノルウェーのシンフィルムエレクトロニクス社、フランスのアイゾーグ社、米ブリューワーサイエンス社、米ソリジー社なども印刷技術を使ったフレキシブルな温度センサを手掛けている。

印刷で作るフレキシブルな温度センサの図
[図5] 印刷で作るフレキシブルな温度センサ
出典:PARCとIDTechEx

フレキシブルな湿度センサを手掛ける企業も現れている。MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:半導体技術を使って数~数十ミクロンの大きさの機械を作る技術)センサのインベンセンス社、ブリューワーサイエンス社などが開発している。スウェーデンのリンショーピン大学は、高分子で作った電解質の湿度センサを試作し、ビルの湿度管理に使うことを目的に、RFID(電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み書きするシステム)の無線送信機も印刷技術で形成した(図6)

スウェーデンのリンショーピン大学が試作した高分子で電解質の湿度センサの図
[図6] スウェーデンのリンショーピン大学が試作した高分子で電解質の湿度センサ
出典:Linkoping UniversityとIDTechEx

スクリーン印刷で作られるガスセンサも登場している。米SPECセンサーズ社は、印刷技術を使い、一酸化炭素やオゾン、NO2、SO2、硫化水素、エタノールなどを検出するセンサ商品を開発している(図7)。ドイツのソリッドセンス社は、さらに多くの種類のガスセンサを開発している。一酸化炭素だけではなく、塩素、エチレンガス、塩化水素、シアン化水素など毒ガスや燃焼性ガスなどを検知するセンサがある。

印刷で形成するガスセンサの図
[図7] 印刷で形成するガスセンサ
出典:SPEC Sensors、KWJ Engineering、IDTechEx

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.