No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載03 医療・ヘルスケアの電子化
Series Report

アップルも病院と提携

最後にアップルの事例を紹介する。2015年にアップルはウェアラブル端末のApple Watchをリリースしたが、ヘルスケア端末としての認定を得ようとしている。そのために、ヘルスケアのモバイルキットを用意すると共に、医療向けソフトウェア開発メーカーEpic社およびメイヨークリニック病院と提携した。

様々なヘルスケア用のアプリが開発されているの図
[図6] 様々なヘルスケア用のアプリが開発されている(図はイメージ)
出典:Information Week
http://www.informationweek.com/healthcare/patient-tools/15-apps-for-healthy-living/d/d-id/1114128

アップルはまず地元アメリカでメイヨークリニックと組み、測定データを医師に認めてもらう取り組みを始めている。さらに血圧や心拍などバイタルサインを表示する、さまざまなアプリ(図6)をアップルウォッチに搭載するために、医療向けソフトウェア開発ができるEpic社とも提携している。アップルが提供するモバイルのプラットフォームは、HealthKitと呼ばれる、クラウドを利用するAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)である。このAPI上でさまざまなアプリケーションソフトからのデータをまとめ、デバイスでモニター表示できるようにする。米国の医師はアップルが提供するこのHealthKitに大いに期待している。

しかし、現状、日本においては、ヘルスケアというよりもフィットネスモニターデバイスとしての意味合いが強い。今後、Apple Watchが医療機器として日本の厚労省に認定してもらうためには、国内の医療機関やアプリの開発業者と組む必要がありそうだ。そして、もし医療ヘルスケアデバイスとして厚労省や医師から認可されれば、日本国民の健康診断に革命をもたらすことになるだろう。豊富なアプリを使えることで、一人1台Apple Watchという時代が訪れるかもしれない。

[ 参考資料 ]

*1
1. Towards the improvement of patients' safety with continuous wireless monitoring: Pilot at Saint John's Health Center
http://www.toumaz.com/sites/default/files/White%20paper%20-%20v1%207%20NL.pdf

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

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