No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載04 次世代UI(ユーザーインターフェース)
Series Report

アップルはプロアクティブ・アシスタント

アップルもiOS9から、似たような機能、プロアクティブ・アシスタント(Proactive Assistant)を提供するようになった。ただしアップルはグーグルと違い、巨大な検索エンジンと巨大なデータを持っている訳ではない。このため、まずは人間の行動を機械(コンピュータ)が学習する必要がある。iOS9のプロアクティブ機能では、最初に丸1日、利用者の習慣や、くせ、よく使うアプリ、連絡先などを記憶し、その機能に関連し、使用頻度が高いと想定されるショートカットが自動で生成される。ショートカットは、iPhoneのホーム画面で右にスワイプ(画面を指ですべらせる動作)を繰り返すと、最終的に表示される。また、現在地を登録しておくと、その場所で過去に何をしたかという履歴を元に、利用者の習慣になっている情報(レストランやコーヒーショップなど)なども提供される。さらに、フライト予約やレストランの予約確認情報などをメールで受け取ると、カレンダーにその情報を自動的に追加してくれる。また、カレンダーにイベントの開催場所についての情報が記載されていれば、iOS9は交通状況にアクセスし、利用者が外出する時刻になったことを知らせてくれるのだ。

GPSにも利用されているコンテキストアウェアネス

他にも、コンテキストアウェアネス機能が使われている例として、GPS(全地球測位システム)の電波の入らない地下街やビル内で位置情報をナビゲーションするシーンがあげられる(図1)。ナビゲーション機能は衛星からの信号を受けて自分の位置を検出し、地図に重ね合わせて表示するという仕組みだが、地下街やビル内、あるいはビルの谷間では電波が届かないため、正しい位置を地図上に描くことはできない。このため、スマホが内蔵する加速度センサやジャイロセンサ、磁気センサなどを使って、どの場所を移動しているのかを、追跡するのだ。

GPS電波の入らない東京駅前の八重洲地下街で歩行軌跡を描く図
[図1] GPS電波の入らない東京駅前の八重洲地下街で歩行軌跡を描く
出典:CSR社

利用者が地上を歩いてきて地下街に入る手前まではGPS信号を受信できるため、地下街に入った場所は特定できる。その後は、その場所を起点として、3軸(X、Y、Zの向きに)加速度センサでどの方向へ歩き出したのかを検出し、もし左に向きを変えた場合は、回転を検出するジャイロセンサ(これもX軸の回り、Y軸の回り、Z軸の回りの3軸)で追跡する。ただし、加速度センサとジャイロセンサの追跡だけでは、誤差がどんどん広がっていく恐れがある。そのため磁気センサ(北を向く磁石)も使い、時々向きを補正する。最近では、圧力センサもスマホに内蔵されているため、センサで気圧の変化を利用して何階にいるのか高度も測定できるようになった。地上から高くなればなるほど気圧が低くなるという現象を利用したものだ。

こうした、事前のGPS信号から行動を予測・追跡するのも、コンテキストアウェアネスの一つである。

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