No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載04 次世代UI(ユーザーインターフェース)
Series Report

広告に利用する

広告代理店の電通や博報堂は、コンテキストウェアネスを利用した広告の提案を模索している。博報堂は2000年ごろからコンテキストアウェアネス機能を研究している東京大学の大学院の森川博之教授らと共に論文にも登場する*2

広告への利用例としては、宣伝したい店舗に客を誘導するため、店舗から100m以内の範囲に来店経験のある顧客が来ると、その客の好む商品の情報を流すのだ。その客は予想していなかった情報に、「今日は店に寄ってみよう、良かったら買ってみよう」と思う可能性が高くなる。その顧客の特性を予め把握しているからできるのである。特に、過去に購入経験のある顧客の場合は、購入履歴が明確なので、この手法が有効と考えられる。

購入履歴のない客の場合は、客の属性がわからないためこの手法は使えない。しかし、来店しただけで商品を買わなかった客であれば、その客が手にとった商品のタグセンサによって顧客の来店経験を識別し、以前手に取った商品と似た商品の情報を提供するなど、購買意欲を喚起することができる。

レストランやコーヒーショップでも、過去訪れた経験のある顧客なら、過去に食べた商品に関する新情報を流すことができる。その客がGPSで近づいていると判断すれば、商品の情報を流し、割引などの購買意欲を促す。客の名前はわからなくても、IPアドレスが判別できれば十分なのだ。

コンテキストアウェアネス機能は始まったばかり

いま、コンテキストアウェアネス機能に必要なテクノロジーがようやく揃ってきた状況といえる。加速度、ジャイロ、磁気、気圧、GPSなど動きに関する情報に加え、温度や湿度、照度(明るさ)など周囲の情報を検知する、各種センサ、認識と意味理解・学習を得意とするコグニティブコンピューティングなどの登場、スマホのアプリ充実など、さまざまなデバイスやソフトウエアが進化することによって、コンテキストウェアネスは、今後社会に浸透していくことになるだろう。

[ 参考資料 ]

*1
障がい者が健常者と同じように生活できる社会を目指す」、NEWS & CHIPS、2015年7月29日 http://blog.newsandchips.com/2015-07-29-00-52.html
*2
「小型モバイルセンサを用いたコンテキスト適用型コンテンツ配信サービスの設計と実装」、信学技報、2005年2月号

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

http://newsandchips.com/

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