No.009 特集:日本の宇宙開発
連載03 実用期を迎えるフレキシブルエレクトロニクス
Series Report

曲げられる有機EL

プリンテッドエレクトロニクスの応用の一つに平面ディスプレイがある。まず、有機ELディスプレイは、プラスチック材料でできた有機EL(エレクトロルミネッセンス)あるいはOLED(有機LED)とも呼ばれる有機材料に電圧を加えることで光らせることができる(図4)。基板には柔らかなプラスチックを使用するため、曲がるディスプレイが可能になる。一方、液晶ディスプレイは基本的にプラスチックよりも厚いガラスを使うため、曲げることは考えられていない。ただし、最近、ガラスでも100µm以下と薄く加工するとフレキシブルに曲がることが実証されている(参考資料2*2)が、ディスプレイに応用されたガラスはまだ存在しない。

曲がる光源の図
[図4] 曲がる光源 オランダのHolst Centre研究所で開発 撮影:津田建二

国内だけではない。海外でもフレキシブルなプリント回路基板を用いたプリンテッドエレクトロニクスの試作例は多い(図4)。英国にはPETEC(Printable Electronics Technology Centre)と呼ばれるプリンテッドエレクトロニクスの研究開発施設があり、有機ELを用いた試作品が展示されている(図5)。

英国PETECで展示されている試作品 洋服(左)やポスター(右)の図
[図5] 英国PETECで展示されている試作品 洋服(左)やポスター(右) 撮影:津田建二

ここでは、プラスチック(有機材料)を使って配線だけではなく、ディスプレイやトランジスタも形成し、オールプラスチックの製品を開発する研究が進められている。有機ELディスプレイはもう実用化されていると言えるが、生産性や歩留まり、信頼性等の観点から、液晶パネルと比べると高価格で耐久性が弱い。テレビへの応用はこれまで参入企業1社を除き、全て撤退し、韓国のLGだけが生産している。ただし、スマートフォンなどの携帯機器は、商品寿命が短いせいか、すでに製品化されている。

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