No.009 特集:日本の宇宙開発
連載01 スマホの未来と私たちの生活
Series Report

UXのカギを握るセンサ

もう一つUXに重要なセンサは、加速度センサとジャイロセンサだ。加速度センサは、スマホの画面を傾けると、画面の写真やコンテンツも90度傾く動作に使われている(図2)。私たちは地球上のどこにいても地表面方向、すなわち鉛直方向に重力加速度gが常に加わっている。このためスマホの加速度センサの向きが真下からずれるとそれを検出し、画面の向きを変えるように設定しておく。ここでもセンサからの電気信号を、画面を変えるという意味に変換するアルゴリズムが重要になっている。

スマホの向きで撮った写真の向きも変わる図
[図2] スマホの向きで撮った写真の向きも変わる

ジャイロセンサも向きを検出するセンサである。これは回転を検出するので、スマホがどちらの方向に回転したのかがわかる。加速度センサは主にX、Y、Z(縦、横、高さ)軸に沿って3方向を検出するが、ジャイロはX、Y、Z面でのそれぞれの回転を検出する。ジャイロはスマホの回転を検出するため、写真画面の回転だけではなく、ゲーム機能とも連動して使われる。例えば、レーシングカーやボートのゲームのハンドルなどと連携する。デジカメの手ぶれ補正にもジャイロセンサは使われてきたが、もっと高性能なスマホのカメラにも使われるようになるだろう。

さらに、最近注目されているのは気圧センサである。これは圧力センサを使って、気圧を測定するもの。気圧は地表で最も高く、空気が薄くなる上空へ行くほど低くなっていく。この気圧の変化を捉えて、高度を測定する機能である。今いる場所の気圧を基準として、階段を使って2階、3階へと上がっていくと、その人が何階にいるのかがわかる。精度を高めるためのホイートストンブリッジ回路(電流の流れる4方向の向きのバランスから微小な電流を検出する回路)や差動回路(シーソー遊戯のように二つの電流バランスからわずかな違いを検出する回路)などを駆使して、気圧差を計算することで高さの違いを検出する。ロームが2014年12月に発表した気圧センサ製品では、±20cmの違いまで検出できるとしている(図3)。

ごくわずかな気圧の違いを検出することで高さを検出する図
[図3] ごくわずかな気圧の違いを検出することで高さを検出する
出典:ローム社のホームページ

この機能をGPS(グローバル位置検出システム)と組み合わせれば、どの場所にいるのかだけではなくて建物の何階にいるのかさえもわかる。気圧センサをGPSと連動するアプリケーションはまだ出てきていないようだが、探している人が2階にいるのか、それとも3階にいるのかがわかるようなUXがあると面白い。

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