No.009 特集:日本の宇宙開発
連載01 スマホの未来と私たちの生活
Series Report

タッチしてデータを送受信するNFC

JR東日本の電子切符Suicaのように、タッチするだけで情報を通信する近距離無線カードには、NFC(Near Field Communication)と呼ばれる国際規格の通信技術が利用されている。その国際規格の一つにFeliCaがある。FeliCaは、ソニーの独自規格として出発したが今ではNFC規格の一つになっており、日本ではSuica、Edy、おサイフケータイなどに広く使われている。このNFCをスマホに内蔵すれば、さまざまな利用の可能性が広がる。

例えば電車の切符だけでなく、航空券を購入したり、チケットそのものとして使用したりすることもできる。また、コンサートチケットとして使用したうえ、そのコンサートの情報を得ることや、フリーマーケットでのスマホによるクレジットカード決済など、新しい応用も可能になってくる。クレジットカード専用端末は1台10万円以上もするが、NFC内蔵スマホならアプリを入れるだけで同じ機能を提供できるようになる。アップルではiPhone 6からNFCが搭載された。

未来は行動を先取りする

ユーザーエクスペリエンスは、液晶画面を使う電子機器へと広がっていったが、その先には何が来るのだろうか。それは、ユーザーがある行動をすると次に何をするかを先回りしてスマホに表示する機能でではないか。Google Nowという機能がその走りだ。Google Nowは、1日の生活の中で必要な情報を自動的に表示してくれる機能である。例えば、朝起きるとまず天気を教えてくれる。出かける前に交通機関の状況を教えてくれる。つまり、行動する前に(Proactively)教える機能だ。そう気づいたアップルは、次の機能としてProactive Assistantという機能を2015年6月のAppleの世界開発者会議において発表している。

この機能は、実はコンテキスト・アウェアネス(Context awareness)と呼ばれている。コンテキストとは文字通り「文脈」であり、これまでやってきた行動、という意味である。アウェアネスとは「知ること」という意味である。つまり、「これまでやってきたことを知り、次にすべき行動を推測すること」と理解してよいだろう。だからGoogle NowやProactive Assistantなどの機能が、これからのスマホに標準装備されるコンテキスト・アウェアネスになる。次回は、スマホの新しい応用方法について紹介をする。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

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