No.007 ”進化するモビリティ”
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機能とデザインの向上で脱福祉機器を目指す

自転車には体力的に乗ることができず、運転免許を自主返納したり、同居の家族に頼れない高齢者は、自ら移動する手段を必要としている。パーソナルモビリティは、車いすやシニアカーなど、従来からあったモビリティの姿と比較すると、福祉機器との境界が消えつつあり、利用者をより広く捉え始めていることに気づく。

例えば、スイスのGenny Mobility(ジェニー・モビリティ)によるGENNYシリーズは2輪の電動車いす。スポーティーな外観もさることながら、技術的な最大の特徴は、セグウェイと同様のオートバランサー(自動で重心を調整して平衡状態を保ち、転倒を防ぐ機能)を搭載している点だ。

Genny Mobility「Genny 2.0 Urban」の写真
[写真] Genny Mobility「Genny 2.0 Urban」

座ったまま屈むように身体を前方に傾けると前進、身体を起こして重心を戻すと減速・停止する仕組み。車輪は左右独立型で、転回も手元のハンドルバーでスムーズに行える。

一方、日産自動車やソニー、オリンパス出身の30代エンジニアらが起業した日本のベンチャーがWHILL(ウィル)。4WD走行のWHILLは、悪路や雪道、段差のある道路での走破性の高さを謳う。ユニークなのは、24個の小さなタイヤから構成された前輪。設置面の小さなタイヤだけ回転する仕組みで、狭い空間での移動などに適した多様な動きを可能としている。

WHILL「WHILL Model A」の写真
[写真] WHILL「WHILL Model A」

実際に座ると、身体の形に合わせて座面が空気で膨らむのでフィット感に優れていた。5時間の充電で20kmの走行が可能なため、長時間の使用も十分に考慮されている印象を受ける。3段階で切り替えられる車速の最大設定は時速6km。これは日本の現行法の上限で抑えられている数値だ。産業特区では時速10kmの電動車いすの実験が進められているので、近い将来はバイクや自転車に変わる交通手段になり得るかもしれない。

電動車いすはデザインや機能を高めることで、ユーザーの裾野を広げられる可能性がある。その1つに可搬性の向上が挙がるだろう。折り畳んでクルマのトランクルームに入れたり、飛行機の手荷物として預けられるようなモデルが人気を集めつつある。マレーシアに本拠地を置く「Wheelchair88.com」が世界最軽量クラスを謳う「PW-999UL FOLDAWHEEL」の重量は20.5kgだ。

Wheelchair88「PW-999UL FOLDAWHEEL」の写真
[写真] Wheelchair88「PW-999UL FOLDAWHEEL」

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