No.007 ”進化するモビリティ”
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自動車産業を支えてきた中小規模のメーカーが、こうしたパーソナルモビリティの開発と製造に乗り出している。これは産業構造の転換にもつながっている。自動車の需要は新興国では伸びを見せているが、先進国の都市部では低炭素社会に向けて、徐々に内燃機関の自動車が減少していく見込みだ。

そのとき、ガソリンスタンドの代わって現れるのが、バッテリーステーションだろう。パーソナルモビリティの現状課題は、航続距離と時間のかかる充電時間にある。鎌倉市が2013年に行ったバッテリーシェアリングの実証実験では、スズキの電動バイク「e-Let's(イーレッツ)」30台を使用。スマートフォンと連動してステーションの最新情報を配信し、素早いバッテリー交換サービスの事業化を検証していた。

3Dプリント技術などの普及も、中小メーカーやベンチャーがパーソナルモビリティの開発に参入するきっかけになっている。これからは製造ライン上の制約から離れて、見たこともない形状の乗り物が登場する可能性がある。

動力を要しない自転車の分野では、すでにその方向性が顕著になっている。クラウドファンディングサイトの「キックスターター」では日々、新たな乗り物が提案され続けているからだ。

Halfbike(ハーフバイク)の提案もそういった一例。軽量かつ省スペースの立ち乗り自転車は、都市の移動におけるちょっとした足に位置付けられそうだ。

Kolelinia「Halfbike」の写真
[写真] Kolelinia「Halfbike」

パーソナルモビリティの周辺では、ロボティクスや新素材の積極的な実装と同時に、社会制度の検証が進んでいる。地域でバッテリーをシェアする動きが強まれば、電力自由化の恩恵も受けられる可能性があるだろう。

これからの需要が見込め、なにより個人レベルでの参入が可能なマーケット。どの分野の技術者にとっても、取り組み甲斐のあるテーマと言えるのではないか。

Writer

神吉 弘邦(かんき ひろくに)

1974年生まれ。ライター/エディター。
日経BP社『日経パソコン』『日経ベストPC』編集部の後、同社のカルチャー誌『soltero』とメタローグ社の書評誌『recoreco』の創刊編集を担当。デザイン誌『AXIS』編集部を経て2010年よりフリー。広義のデザインをキーワードに、カルチャー誌、建築誌などの媒体で編集・執筆活動を行う。Twitterアカウントは、@h_kanki

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