No.007 ”進化するモビリティ”
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プロダクト

パーソナルモビリティ社会

 

  • 2014.11.14
  • 文/神吉 弘邦

あらゆる場所で利用者の増加が確実視される、パーソナルモビリティ。先端テクノロジーを実装する絶好のプロダクトだが、乗り越えるべき課題もある。現在の背景を概観しながら、応用できる技術を確認するアプローチが肝心だ。近年の新しいトレンドを踏まえて、実際のプロダクトをピックアップしていく。

地方でも都市でも需要が高まる

「買い物難民」(政府の用語では「買い物弱者」)という言葉をご存知の読者も多いだろう。地域の高齢化に近隣の生鮮食品店舗の撤退が重なり、高齢者の日常的な買い物が困難になっている事例だ。その数は国内でおよそ600万人。具体的には、クルマなどの移動手段を所有しない65歳以上で、住居から最寄りの商店まで500メートル以上離れている人口を指している。

過疎化が進む地域では、公共交通も廃止もしくは減便が進んでいるため、「食料品アクセス問題」として対策が急がれている。しかし、経産省や農水省の資料では、都市部においても同様の現象が進んでいると指摘。等しく解決策を探らなくてはいけない事態だ。訪問販売車は直接的な対策として有効だろう。

東京・町田市でヤマト運輸が、ヤマハ発動機の「PAS GEAR CARGO(パスギアカーゴ)」で来年8月までの実証実験をしている。この5輪走行(自転車3輪+リアカー2輪)の業務用電動アシスト自転車は、従来の法規では人力の2倍までしか許可されなかったアシスト力を、国の産業特区の指定を受けて3倍まで設定できるのが特徴だ。

ヤマハ発動機「PAS GEAR CARGO」の写真
[写真] ヤマハ発動機「PAS GEAR CARGO」

特区の存在は技術開発と検証を後押しする。横浜市の「チョイモビ ヨコハマ」プロジェクト(http://www.choi-mobi.com)では、会員登録した利用者が日産自動車の2人乗りモビリティ「New Mobility Concept(ニューモビリティコンセプト)」を市内ステーションに乗り捨てで利用できる取り組み。

日産自動車「New Mobility Concept」の写真
[写真] 日産自動車「New Mobility Concept」

同プロジェクトは、2014年度のGマーク賞(「公共用のサービス・システム」部門)を受賞している。会員数は1万人を超え、この11月から1年間の期間延長が始まった。日産のNew Mobility Conceptは、複数の地方自治体で観光促進や事業創造を目指して活用されている。

低炭素社会の実現も、パーソナルモビリティの導入を促す1つのテーマである。「東京デザイナーズウィーク2014」で発表された「notte(ノッテ)」は、2人乗客の自転車タクシー。元トヨタ自動車デザイナーの根津孝太氏が率いるデザインハウスのznug design(ツナグデザイン)が、新潟・三条市のシマト工業と開発した。

znug design+シマト工業「notte」の写真
[写真] znug design+シマト工業「notte」

ガラス繊維や炭素繊維などを混ぜ込んで強度を高めるとリサイクルがしにくいFRP素材に代えて、notteの本体に使用したのは防水段ボール。軽量かつ十分な強度を持ったモビリティに仕上がっている。

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