第1回
eCallサービスを機にクルマがワイヤレスで
つながる時代に突入
- 2017.6.30
インターネットを利用した交通専用モバイルネットワークが普及し、クルマ同士やクルマとデバイスがつながる時代が本格的に到来する。2018年に欧州で始まる事故発生時の緊急通報サービス「eCall」により、これまでは助からなかった命を救える可能性が出てきた。コネクテッドカーは自動運転を実現する上で必須の技術であり、そのための第1歩ともいえる。本連載では、第1回でコネクテッドカーの概要を、第2回でさまざまな接続の実例を、そして第3回では2020年代に始まる第5世代のモバイル無線技術(5G)と組み合わせて、本格的なコネクテッドカー時代に突入していくことをお伝えする。
交通事故死を減らす
2018年4月から欧州連合(EU)で販売される新車にはeCall(イーコール)サービスが義務付けられることが決まった。このサービスは、車両が事故を起こした時に緊急コールセンターへ自動的に事故の発生を知らせることで、消防車・救急車や警察がすぐに駆け付けられるシステムのことである。このサービスにより、欧州では年間2500人の命を救うことになるといわれている。たとえ運転手や乗員の意識がない状態でも、自動的に緊急コールセンターへ知らせが届くからだ(図1)。
eCallサービスでは、セルラー通信モジュールとGPS*1やGNSS*2の搭載が不可欠となり、センターとクルマは常につながった状態となる。まさにコネクテッド時代が本格的に幕を開ける象徴である。セルラー通信モジュールは、インターネットや電話回線とつながり、GPS/GNSSはクルマの位置情報を正確に知らせる。クルマが衝突するとエアバッグが開き、開くのに必要な加速度、すなわち力の情報もセンターに送られる。
クルマにはECU(電子制御ユニット)と呼ばれるコンピュータが数十台も搭載されており、クルマの走行情報(ブレーキやアクセルを踏んだ形跡)がデジタルで記録される。これに加えて、従来のアナログ的なブレーキ痕などの情報を加味することで、事故の状況を把握できる。これらの情報を保険会社と共有することで、事故を巡るトラブルが起きても解決しやすくなる。
[ 脚注 ]
- *1
- GPS: GPS(グローバル測位衛星システム)は米軍が打ち上げた衛星を使って自分の位置を把握するシステムで、カーナビゲーションに使われている。
- *2
- GNSS: GNSS(グローバル航法衛星システム)はGPSの精度を改善して誤差数メートルの範囲で位置を測定できる衛星システム。世界各国が衛星を打ち上げようとしており、日本では準天頂衛星システムと呼んでいる。