No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載01 人工知能の可能性、必要性、脅威
Series Report

犯罪の発生より前に警官が到着

グーグルが提供する翻訳サービス「Google翻訳」も人工知能を利用したものだ(図3)。現状の翻訳結果には、いくつかの間違いが含まれるが、普通の会話や通り一遍の文は、内容がわかる程度には翻訳できるレベルに達している。人工知能は、データが増えるほど、どんどん成長していくため、翻訳の質は時々刻々と高まっている。機械翻訳は、東京オリンピックが開催される2020年くらいになると、完璧は望めないが実用段階に入るとみる意見が多い。人工知能の専門家によると、「現在、小学生からの英語教育の重要性が話題になっているが、小学校3年生から中学、高校とみっちりと勉強した人よりも高いレベルになる」

Google翻訳の図
[図3] Google翻訳
出典:グーグルの翻訳ページ

米国で2007年創業の若い企業であるオートメーテッド・インサイツは、新聞記事を自動制作する人工知能を使ったサービス「Wordsmith」を提供している。例えば、企業の決算発表をニュースにする場合、業績、株価、アナリストの予想といった過去の大量のデータを解析して、ニュース性の高いポイントを抽出し、「過去最大の業績を記録」といった適切なストーリーを作って記事を自動作成する。毎秒2000本の記事を作成できるという。既に通信社のAP通信やヤフーが活用している。このサービスのすごいところは、読者の属性に合わせて、記事を書き分けることができる点である。例えば、巨人阪神戦の記事を書く場合には、巨人ファン視点と阪神ファン視点の記事を別々に作ることができるのだ。

最後は極めつけの例。米カリフォルニア州サンタクルーズ市警では、2011年からカリフォルニア大学ロサンゼルス校が開発した人工知能システム「PredPol」を導入し、「プレディクティブ・ポリシング(予測警備)」という取り組みを始めた(図4)。年間1万件以上の犯罪データ、10万件上の通報記録、その日のイベント情報などを基に、犯罪が発生しそうな時刻と場所をピンポイントで予測するシステムだ。予測に従って警察官がパトロールすることで、犯罪の発生を未然に防ぐ狙いだ。予測結果は、普段ならばパトロールしないような場所も多いが、導入前に比べて、逮捕者数が5割増加、犯罪率は2割以上減少という劇的な効果を得ている。犯罪者が来る前に警官がそこに立って待っているといった驚くべき成果も挙げているようだ。

犯罪の発生予測をする「PredPol」の図
[図4] 犯罪の発生予測をする「PredPol」
図中で赤い四角で示した部分が、人工知能が犯罪の発生を予測した場所

出典:サンタクルーズ市警のホームページ

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