LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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被災地でのスマートコミュニティ実現へ向けた事例

まずは、東北各地でスマートコミュニティの実現に向けての取り組みを紹介したい。東日本大震災で津波被害を受けた市沿岸部からの移転候補地になっている仙台市荒井東地区で、日立製作所とNTTグループなど四社は2012年1月から、スマートコミュニティの構想の実現に向け、地元の推進団体との本格的な協議を始めている。メガソーラー(大規模太陽光発電所)や、都市ガスを使って発電し廃熱を住宅などの空調に利用するコージェネレーションの採用などを検討している。事業の実施母体となる新たな組織を3月末をめどに設立させる方針で、事業費は数百億円規模になる見込みだ。
農業分野においてもスマートコミュニティ関連の取り組みが始まっている。
福島第一原発の事故により、農林水産業は大打撃を受け、特に東北の被災地を中心に深刻な状況となっている。農業は地域における基幹産業でありながらも、農業の従事者の多くは個人となっており、他産業と比べると、経営規模やICT(情報通信技術)への投資余力が少なく、全国的にも農業におけるICTやクラウドの活用は限定的となっている。ITと農業を融合させたスマートアグリカルチャーを推進することで、被災地の中小農家が農業の再開や事業を継続できる環境を整備するとともに、日本の農業の競争力強化の実現にもつながると期待される。
具体的な事例として、「東北スマートアグリカルチャー研究会」(T-SAL)が、農業振興に資するITシステムのあるべき姿を「地域」の視点で研究・開発・実行を行う"実践型"の研究会として、活動を始めている。

ステップ1では、 クラウドを活用した農業支援システムの導入を始める。宮城県沿岸の農地などで塩分や放射線、土壌温度をセンサーで測定し、計測値をクラウド経由でスマートフォンやタブレットから閲覧・共有できる仕組みを作る。ステップ2では、地域において気象条件や土壌条件と農作物の関係をうまくITでマネジメントする農業であるスマートアグリカルチャーを実現する為に、スマートフォン、クラウド、組込み技術、汎用センサーを活用し大幅なコストイノベーションをめざした研究開発。ステップ3では、IT化が進んでいない中小農家などを支援するための地域発の農業プラットフォームの形成を目指している。

スマートアグリカルチャー、ステップ2のイメージ
[図表3] スマートアグリカルチャー、ステップ2のイメージ。
・飛び地/居住地とはなれた露地施設園芸での営農支援
・営農に活用出来るデータのセンシング、クラウドによる早生・出荷調整・施肥管理等に活用出来るデータ分析研究(積算日照・温度・湿度・Ph等) 
(出所 東北スマートアグリカルチャー研究会 発表資料 2012.1.30)

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