No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載01 IoTの価値はデータにあり
Series Report

クラウドプラットフォーム業者は虎視眈々と

インターネットにつながった後は、クラウド上でデータを収集し、整理・保存した後、管理、さらには解析する。クラウドそのものは、アマゾン社や、IBM社、マイクロソフト社などの海外勢に加え、国内のNECや富士通、日立製作所などもサービスを提供している。

クラウドを利用して、データを管理・解析するには、基本となるソフトウエアプラットフォームが必要となる。データの種類や組み合わせ、解析のアルゴリズム、解析すべきモデル作りなどを、顧客のニーズに合わせてカスタマイズできるような基本ソフトを作成するのである。顧客のニーズはそれぞれ全く違うため、顧客に合わせたソフトウエアを作らなければならない。こうしたソフトウエアを開発するためのプラットフォームがPaaS(Platform as a Service)であり、マイクロソフト社はMS Azure、IBM社はBluemix、GE社はPredix、PTC社はThingWorxというソフトウエアプラットフォームを持っている。

ちなみに、PaaSにはベンチャー企業も参加している。連載第2回で紹介したエイラネットワークス社は、2011年創立のIoT向けソフトウエアプラットフォームを提供するベンチャー企業だ。

こういったプラットフォームはデータを解析するだけではなく、解析したデータをグラフやグラフィックスを使って見やすい形に加工する。これがデータの「見える化」である。しかし、データ閲覧用の専用端末は10万円を下らない高価な製品なので、顧客は手元にあるタブレットやスマートフォンで解析結果を見たいと思っている。そこで、タブレットやスマホで見るためのアプリケーションソフト開発者も参加してくる。

では、工業用IoTの顧客を企業の工場や小売(リテール)商店主とすると、顧客に最も近いIoT関連業者は誰か。まず1つは、データを解析するソフトウエアプラットフォームを握るPaaS業者である。顧客の欲しい解析データを使って、生産性や売り上げを向上させられる立場にいるからだ。そしてもう1つは、顧客の工場や商店の現場に赴いてIoTデバイスを提供するデバイス業者である。解析データを見て、生産性を上げるには何をどう操作すればいいのか、センサ感度は適正なのか、ノイズをもっと減らせないのかなど、顧客の持つ情報から具体的な仕様を決定する。

なぜパートナーシップは不可欠か

このようなIoTシステムを見ていると、1社ですべてをまかなうことができないことは火を見るよりも明らかだ。では誰と組むか。例えば、連載第2回で紹介したフローサーブ社の場合、フローサーブ社は顧客である。そして、IoTデバイスを提供し、データを測定するのは、計測器メーカーのナショナルインスツルメンツ社である。さらに、そのデータを社内のクラウドではなくイントラネットのエッジコンピュータにためるため、ヒューレットパッカードエンタプライズ社がコンピュータを提供し、そのコンピュータ上でセンサデータを収集・管理・解析するためのソフトウエアプラットフォームThingWorxをPTC 社が提供する。つまり、計4社が組んでいるのだ。

現在、PTC 社と同様なプラットフォームを提供しているサービスプロバイダーは数百社あると言われている。工業用IoTで最も定評のあるPTC ThingWorx製品を簡単に紹介すると、図2のように、中心となるThingWorx Foundationの周りの全てのソフトウエアコンポーネントとシームレスに繋がり、IoTソリューションの全体をつかめるようになっている。

そのコンポーネントの1つ、ThingWorx Utilitiesは、顧客がコネクテッド製品を定義・モニター・管理し、さらにそれらの性能を最適化するためのツールセットである。そして、ThingWorx Analyticsは、IoTシステムの開発者が迅速・容易にリアルタイムのパターンを追加するとともに、異常を検出し、予知解析を行い、構築したシステムのシミュレーションまで行う。また、ThingWorx Studioは、AR(拡張現実)開発を容易にし、IoTソリューションの開発をスケーラブルに行う。さらにKepwareは、ThingWorxと工場の機器やアプリケーション間に、接続のオプションを提供する通信プラットフォームである。

PTCが提供するIoTプラットフォーム(開発ツール)
[図2] PTCが提供するIoTプラットフォーム(開発ツール)
出典:Thingworxホームページ

つまり、IoTデバイスからクラウドに上げた後に、そのデータを加工したり、解析したデータを見やすくしたりするためには、ソフトウエアが必要となり、そのソフトウエアを開発するための開発ツール(プラットフォーム)が欠かせないのだ。

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