No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載01 IoTの価値はデータにあり
Series Report

第1回
IoTコンセプトの変貌

 

  • 2017.3.17
  • 文/津田 建二
IoTコンセプトの変貌

IoTを巡る動きが活発になっている。2年前にはまだ、「冷蔵庫や洗濯機をインターネットにつなげてどうするの」という疑問に対し、メーカー側が即答できない様子が見られた。しかしこの2年でIoTに対する理解は急速に進み、インターネットにつなげることは目的ではなく手段であることが理解されるようになってきた。工場の生産性を上げたり、小売業の売り上げを上げたり、業務の効率を上げたりといった本来の目的を遂げるために、IoTを使うのだという考えに至るようになったのだ。もはや民生用IoTという考えは過去のものになりつつある。IoTといえば工業あるいは小売業など、企業の売り上げに直結するための仕組みだというコンセンサスが得られてきたのだ。そこで、この連載第1回目ではIoTコンセプトの変貌とこれまでに理解されてきた姿を、第2回目では具体的な事例を、第3回目ではビジネスの成功に近づくための手法を紹介したいと思う。

IoT(モノのインターネット)は、インターネットにつながるモノという意味ではなくなってきた。我々がIoTと言うとき、それはモノをインターネットにつなげてクラウドシステムとし、データの収集・管理・解析・見える化するといった、一連の仕組みを指すようになっている。つまりIoTとは、モノではなく、システムなのである。もはや、冷蔵庫や洗濯機をインターネットにつなげることがIoTの本質ではないことが、一般にも理解されつつある。

IoTの本質はシステムを理解すること

その仕組みを図1で簡単に説明しよう。IoT端末には、エッジあるいは センサノード、センサ端末など、さまざまな呼び名がある。図1で示したのは、多くのIoT端末が互いにつながったメッシュネットワークという方式の例だが、IoT端末は互いにつながっている必要はなく、それぞれ独立したネットワークでも構わない。

IoTシステムの仕組み
[図1] IoTシステムの仕組み 
出典:津田建二作成

IoT端末に含まれる基本回路は、センサ、アナログ回路、マイコン、送受信回路、の四つである。センサは温度や振動(加速度センサ)、回転力(ジャイロセンサ)、圧力、湿度、流量、磁気などを計測する。そして、それらの測定結果をデジタル化し、データマイコンで処理した後、インターネットなどを通じてクラウドに集約させるのだ。また、センサの測定データが多ければ、端末の中にあるセンサハブまたはセンサフュージョンと呼ばれる専用のICで、センサデータをある程度意味づけしておく。

クラウドのコンピュータで行うのは、収集したセンサからのデジタルデータを管理したり、解析したりすること。このためには高性能のコンピュータが求められる。そして、データを解析してユーザーにとって意味のある情報に変換されると、その情報をユーザーの元にあるコンピュータやスマートフォン、あるいはデータ収集元のマシンそのものに送る。ただし、その情報をユーザーが直接見るためには、スマートフォンなどで見える化するアプリケーションソフトが必要になる。

ユーザーは、その情報を見ることによって、例えば小売店主なら、商品の売り上げを上げるための指針を得る。工場の装置なら、次のロットを投入するための装置の最適なパラメータを知ることができる。IoTシステムの中で最も重要な価値はここにある。すなわち、工場では歩留まりや生産性の向上、小売店では売り上げの増加といった価値につながるのである。

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