No.009 特集:日本の宇宙開発
連載02 生活と社会活動を一変させる、センサ革命
Series Report

商品の利用状況を把握して新しい価値を創出

センサを有効活用して、新しいビジネスモデルを提供するスタイルで、業績を大いに伸ばしているのが、米General Electronic(GE)社である。同社は、まさにセンサ使いの達人である(図3)。

GE社では、航空機のジェットエンジンを航空機メーカーに納入している。同社は、ただ単にエンジンを開発・販売するだけではなく、稼働時間、運行中のエンジンの振動や温度をモニタリングするセンサを搭載し、そこから得られるデータを生かし、故障リスクを見える化している。そして、航空機のメンテナンスや運航計画を最適化して提案し、故障や整備によるフライトの遅延などによる機会損失を減らすのに貢献している。

同社のビジネスを詳しく分析しているコンサルティング企業のアクセンチュアは、エンジン市場だけでは8兆円にすぎないが、航空機全体のメンテナンス市場である20兆円の市場にも参入できている、と指摘する。GE社では、こうしたセンサを活用した付加価値の高いサービスを、火力発電のガスタービンや風力発電のタービンのビジネスにも展開し、大きな成果を挙げているのだ。現在GE社は、米国版の「Industry4.0」と言える、「Industrial Internet」と呼ぶ産業機器やインフラをインターネットにつないで実現する付加価値の高いサービス体制の確立に邁進している。同社が確信を持ってこの事業に注力している背景には、ジェットエンジンなどでの、センサで取得したデータを新たな価値に転換してきた実績がある。

センサを有効活用したGE社のビジネスモデルの図
[図3] センサを有効活用したGE社のビジネスモデル
出典:アクセンチュアのウェブサイト「自動車・産業機械インサイト・プログラム」内、和氣 忠氏「IIOTが変えるモノからコトへの転換」

建機の稼働データを利用者とメーカー双方で活かす

日本企業の中にも、センサを上手く活用して、ビジネスモデルを転換して成功する企業が出てきている。その代表例が建設機械メーカーであるコマツである(図4)。

コマツの「KOMTRAX」のシステム構成の図
[図4] コマツの「KOMTRAX」のシステム構成
出典:コマツのホームページのデータ

同社は、建機にGPSやセンサを取り付け、稼働中に収集したデータを携帯電話や通信衛星経由で自動送信してサーバーに蓄積、分析・活用する「KOMTRAX」と呼ぶシステムを構築している。もともと盗難防止を目的として作られたシステムだが、現在では、車両の位置の他にも、オーバーヒートやエンジンオイルの油圧低下といった各種警報の有無、稼働状況、燃料の状況などのさまざまなデータを収集している。これによって、世界各地で稼働する自社製の建機を日本にいながらにして集中管理できるようにしている。

同社は、遠隔収集した建機の稼働状況のデータを見える化し、利用者に無償提供している。顧客は、そのデータを故障原因の推定や修理の迅速化、盗難防止などに生かしている。同時に、コマツの販売代理店にも同じデータを提供し、顧客への適切な点検時期や部品の交換時期の提案、効率的な配車計画や作業計画の作成支援、燃費改善方法の提案などに活用している。さらにコマツの本社でも、建機の稼働状況を国や地域ごとに分析して市場動向の予測に活用。稼働が多い地域や企業には販売増を狙って営業を強化し、稼働が少ない場合には早めに生産を絞って在庫調整している。

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