No.009 特集:日本の宇宙開発
Scientist Interview

惑星協会の「ライトセイル」

──他のソーラーセイルにはない「ライトセイル」の特徴は何ですか?

同じように見える帆でも、ライトセイルは燃料なしで宇宙機の推進力を得て、ずっと大気圏外に留まります。また、ナノセイル-Dは帆が飛び出すようにできていた一方、われわれのライトセイルではモーター機構を盛り込み、3〜4分かけて帆が開くようになっています。さらに通信や姿勢制御の機能もあります。ただ、ナノセイル-Dは、キューブサット*2を利用した最初のソーラーセイルで、その基本的な設計をわれわれも参考にしています。

[画像6:上] ライトセイルAには、カメラや帆がキューブサットと呼ばれる10×10×10 cmサイズのキューブを3つ重ねた構造の中に組み込まれている。

[画像7:下] ライトセイルAの開発にあたる研究者たち

──ライトセイル-Aでは、低高度の衛星軌道上で運用が行われました。

2015年6月に行われたライトセイル-Aは最初の実験ミッションで、ナノセイル-Dと同様、300〜400キロの低高度の軌道上で運行しています。ここでテストしたのは、メカニズムや通信機能、帆の展開です。実際の航行は数日間で、その後は抗力によって大気圏に落下しました。次のミッションは2016年末に予定されており、こちらは750キロ高度で、抗力の影響がほとんどない軌道上で実際のソーラーセイル航行を目指します。それを、キューブサット型で試すのです。

──10センチ四方の立方体を組み合わせる小型人工衛星のキューブサットは、もともと大学の研究から生まれたものですね。これがライトセイルにとって最も効率的な形態なのでしょうか、あるいは宇宙機の標準化に沿っているということでしょうか。

その両方です。キューブサットは、すべてを小型化して標準化するための方法として編み出されました。重量も軽いものです。ロケットの打ち上げは非常に難しく、またコストも高いのですが、キューブサットのユニットを組み合わせた3-U、6-Uといった小型の宇宙機であれば、他のミッションにピギーバッグ(相乗り)させられる。今年6月のライトセイル-A実験機は、NASAの「イラーナ(ELaNa)」*3という教育プログラムの補助金を受けて国防総省のミッションに載せたのですが、他にも10個のキューブサットが同乗しました。われわれの実験機も5キロ以下でした。これだけ小型で軽量だと、ほんの追加程度のものになるので、NASAや国防総省、そして他の国々もキューブサットを利用し始めています。それにより、宇宙探索が低コスト、あるいは無料で行える上、標準化されたことで、もっとクリエイティブにこれを利用する方法を皆が考えるようになりました。もちろん、テクノロジー面は、最初に打ち上げられた2000年代初頭と比べてもかなり進化した高性能のコンピュータ・ボードを搭載しています。

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