No.009 特集:日本の宇宙開発
Scientist Interview

ライトセイルが目指すもの

 

──今年6月のライトセイル-Aの実験結果に基づいて、ライトセイル-B が2016年末に打ち上げされる予定ですが、ライトセイル-Bで変えることは、高度以外に何がありますか。

ライトセイル-Aで学んだことは膨大です。この宇宙機の最もユニークな部分は、独自設計のモーターで帆を4方向にスライドさせて同時に広げることでしたが、これは実にうまくいきました。ところが、ソフトウェアに不具合があり、安定性を欠いて揺れ続けたため、通信が非常に困難になりました。それによって、姿勢制御機能も作動しませんでした。現在は、ソフトウェアのバグを取り除き、回路基板も最新型に変え、さらにハードウェア面でもいくつかの改良を行いました。次のライトセイル-Bでは、数分ごとに帆を制御して回転させ、ソーラーセイリングすることを目標としています。航行する軌道上のポイントに合わせて、帆を太陽に向けたりフェザリング(光圧を最低限に抑える角度に回転する)したりします。

[映像] ライトセイルAのソーラーセイルがモーターで展開するイメージ映像

──そもそもライトセイルは、どんな用途を目指して開発されているのでしょうか。

現在、われわれは、ソーラーセイル航行とキューブサットを組み合わせて、地球の周辺や太陽の観察、小惑星へのミッションを一度に行うことに注力しています。推進力を持ち、軌道を大きく変化させることができれば、コスモス1はもちろん、イカロスとも違った可能性がある。ただ、そのためには、単にやりたいと言うだけではなく、この小さな宇宙機に全ミッションに必要な要素を組み込めると証明しなければなりません。

──ソーラーセイルの推進力はどのくらいですか。

当初の速度は、ロケットから得られますが、太陽光を利用したソーラーセイル航行自体の加速は非常に小さいものです。一方、利点として、コンスタントに推進力を得ることができます。現代の宇宙機が利用する化学推進エンジンの場合は、数分でかなり高い加速度が得られますが、その後は惰性航行をする。ソーラーセイルは、加速度は小さくても、その後ずっと速度を高め続けることができるのです。これが特定のミッションには有効です。

[画像8] ソーラーセイル-Aから撮影された画像

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