No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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新しいタイプの産業用ロボットのもう一つの代表が、Rethink Robotics社の「バクスター」だ。Rethink Roboticsは、掃除ロボット「ルンバ」の産みの親であるロドニー・ブルックスが新たに設立した会社であり、2012年9月に産業用ロボット「バクスター」を発表した。バクスターは、顔がタブレットになっており、その液晶に表示される表情によって動作状況を確認できる。例えば、スタンバイ状態のときは目を閉じて眠っている表情になり、仕事を学習している状態では集中した表情となる。また、バクスターの頭上には、超音波センサーがあり、周囲360度を監視しているのだが、人が接近してきたことを感知すると、顔色がオレンジ色になり、驚いた表情を見せる。さらに、問題が生じてうまく作業ができないときは、悲しい顔をする。バクスターも、人と一緒に働くためのロボットであり、表情を持たせることによって親しみを感じさせ、人との親和性を高めている。

バクスターの最大の特徴は、作業の指示の与え方にある。これまでの産業用ロボットは、プログラミングによってロボットに作業を教えなくてはならず、導入にはプログラミングに関する知識が必要であったが、バクスターは、難しいプログラミングは一切不要で、バクスターの手を取って導いてやることで、作業の手順を教えることができるのだ。その代わり、バクスターが持ち上げられる重量は2.3kgまでで、動きのスピードも秒速0.6m~1.0mと、それほど速くはない。自動車工場の産業用ロボットが行うような、高速で精密な作業を担当することはできず、簡単で高い精度が要求されない作業を任せるためのロボットである。

バクスターは、導入コストが安いことも魅力だ。一般的な産業用ロボットは、1台10万ドル以上することが多いが、バクスターは、従業員数500名以下の中小企業を主なターゲットとして開発されており、2万2000ドルという破格の価格を実現している。

Rethink Robotics社の「バクスター」。顔がタブレットになっており、表情で動作状況が分かることが特徴だ。(上)バクスターの表情一覧。表情で動作状況が分かるため、親しみを持てるだけでなく、離れた場所からでも状況がよくわかる。(下)の写真
[写真] Rethink Robotics社の「バクスター」。顔がタブレットになっており、表情で動作状況が分かることが特徴だ。(上)バクスターの表情一覧。表情で動作状況が分かるため、親しみを持てるだけでなく、離れた場所からでも状況がよくわかる。(下)

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