No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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産業用ロボットのデモクラシー

 

  • 2013.11.29
  • 文/石井 英男

産業用ロボットは、決して新しい技術ではなく、工場の生産現場においては30年以上前から、各種の産業用ロボットが利用されてきた。しかし、ここ数年、川田工業の「NEXTAGE」やRethink Robotics社の「バクスター」に代表される、従来の産業用ロボットとは全く異なる、ヒューマノイドロボットをベースとする新たなタイプのロボットが登場してきた。これらの新しいタイプのロボットは、比較的規模が小さい町工場などでも導入しやすいことが特徴だ。今まさに変わりつつある、産業用ロボットの最前線を探っていきたい。
(写真:川田工業の次世代産業用ロボット「NEXTAGE」画像提供:川田工業)

産業用ロボット大国「日本」の現状

21世紀はロボットの世紀といわれることがあるが、こと産業用ロボットに関しては、その言は当てはまらない。産業用ロボットの元祖は、1961年にアメリカのUnimation社が開発した「ユニメート」である。日本では、川崎重工業がUnimation社と技術提携を行い、1969年に国産ユニメートの生産を開始。1970年代に入ると、ファナックや富士電機製造、安川電機製作所が産業用ロボットを独自に開発し、自動車メーカーの生産工場において採用が進んだ。自動車は典型的な大量生産品であり、早く、安く作るためにはロボットによる自動化が効果的なため、溶接や塗装などの用途で広く普及した。その後も、日本の産業用ロボットは進化を続け、出荷台数、稼働台数ともに世界一の地位を占めるようになった。しかし、近年、中国の産業用ロボット市場が急速に拡大しており、台数ベースで日本市場に迫る規模に成長している。

安川電機のアーク溶接ロボット「MA1400」の写真
[写真] 安川電機のアーク溶接ロボット「MA1400」

人間と一緒に働く次世代産業用ロボットの登場

産業用ロボットは年々進化を続けてきたが、最近、全く新しいタイプのロボットが相次いで登場し、話題を集めている。その代表が、川田工業の「NEXTAGE」である。川田工業は、産総研と共同で研究開発用ヒューマノイドロボットプラットフォーム「HRPシリーズ」の開発を行ってきており、2002年にHRP-2を発表。翌年から販売を開始した。さらに、2007年にはHRP-3を、2010年にはHRP-4を発表した。HRPシリーズは、あくまで研究開発目的のヒューマノイドロボットであり、工場で稼働する産業用ロボットではない。しかし、その根底にある思想は、「ヒトと一緒に働くロボットの実現」である。

川田工業が産総研と共同で開発したヒューマノイドロボット「HRP-2」(左)、「HRP-4」(右)の写真
[写真] 川田工業が産総研と共同で開発したヒューマノイドロボット「HRP-2」(左)、「HRP-4」(右)
HRP-2 画像提供:産業技術総合研究所、川田工業
HRP-4 画像提供:川田工業、産業技術総合研究所

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