No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
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クラウドが生み出す
ものづくりネットワーク

  • 2013.10.23
  • 文/淵上 周平

技術の発展によって、言葉の意味する領域が大きく変わることがある。いまでいうと、「ものづくり」という言葉がそうだ。「ものづくり」の変化は、第一に3Dプリンターを代表とする「ものづくりのツールの変化」、第二に、消費者が生産者に変わりはじめた「ものづくりの担い手の変化」、第三にWeb/クラウドが実現している「ものづくりの担い手の繋がりの変化」において起こっている。既存の「ものづくり」が大きく変わろうとしている、その変化の最前線をレポートする。

ものづくりツールの変化
=コモディティ化

スマートフォンのケースを探している人が東京にいたとしよう。彼は、アメリカのウェブサイトで気に入ったデザインのモノを見つけた。値段は$10。購入を決め、カードで料金を支払うと「このURLからダウンロードしてください」と書かれたメールが届く。URLをクリックすると、ダウンロードが始まる。スマートフォンのケースの3Dデータだ。そのデータを、自分の机の上にある小型の3Dプリンターで出力。しばらくすると、プラスチックのケースが出来上がる…。

一昔前のSFに出てくるようなシーンだが、これは既に実現されている現実の話である。

「2025年の世界経済に大きな影響を与える技術」という予測レポートが、2013年前半、コンサルティング会社のマッキンゼーからリリースされた。それによると、「モバイル・インターネット」(1位:$3.7兆〜$10.8兆)などと並んで「3Dプリント技術」(9位:$2000億〜$6000億)が挙げられている。このレポートでは、2025年の段階で、世界で流通する製品の10%が3Dプリンターによって作られたものになるという。

3Dプリンターの技術自体は20年以上も前から存在していが、2009年頃から安価で小型の3Dプリンターが多くリリースされ、普及へのステップに入ったと言ってよいだろう。日本の家電量販店でも10万円前後で販売がはじまっていたり、3Dプリンターの出力サービスショップ(ちょうどコピー機が普及しはじめたときに、コピーサービス業者が町に出現した状況とよく似ている)も増えている。背景にあるのは、3Dプリンターのコア技術であるレーザー焼結技術に関する特許が、2009年に期限切れとなったこと。特許で囲われていた技術がオープンになり、自由な競争がはじまって、コモディティ化が進んだのである。

物質の切断をコンピューターで制御するCNCルーターといえば、工場に設置されるような大型のものがこれまでは一般的だったが、このツールもコモディティ化が進んでいる。デスクトップ型のCNCルーターはいくつも発売されているが、HANDIBOTという製品はその中でもとびきり小さい。

 

まだクラウドファンディング*1サイトのKICKSTARTERで投資を集めている段階ではあるが(2013年8月末時点で$349,498を調達)、携帯型と言ってもよい小型サイズのCNCルーターで、値段は$2,500。スマートフォンから操作することもでき、これが日曜大工のツールとして家庭に置かれる日もそう遠くないであろうと思われる。

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