No.003 最先端テクノロジーがもたらす健康の未来 ”メディカル・ヘルスケア”
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Web2.0とHealth2.0

こうした医療ITサービスの急激な拡大は、2005年前後に起こった"Web2.0"というムーブメントが背景の1つとしてある。"Web2.0"については、様々な定義や説明がなされたが、ここでは発案者であるティム・オライリー氏の2つの定義「情報の送り手と受け手が、旧来のように一方向的ではなく、誰でもが送り手になりうるWeb」、そして「すべての関連するデバイスに広がる、プラットフォームとしてのネットワーク」を引いておく。この延長で、"Health2.0"というキーワードも登場してきた。「"Health2.0"は既に終わった」という論者も存在するが、医療ITの進化と変革の本質を捉えている概念であることは間違いない。ティム・オライリーの定義を援用すると、「医療関係者と患者が、診療する人と診療を受ける人、という固定した関係ではなく、Webを通じて、患者自身も医療行為の主体になること」、そして「すべての医療デバイスに関連する、プラットフォームとしての医療ネットワーク」ということになるだろうか。たとえば冒頭にあげた、家庭内で血圧測定を行なうことで1兆円の医療費削減が可能になる、という想定も、「それまで医者にすべてまかせていた血圧測定を、患者自身が主体的に行なうこと」として理解すれば、Health2.0の文脈であることがわかる。診療を受けるだけの患者から、自ら積極的なヘルスケアを行い、治療行為にも関わる患者へ。これが現在Webを台風の目にして起こりつつある医療変革のパラダイムである。具体的なサービスをいくつか見てみよう。

医療Webサービス”Patients Like Me”の写真

医療Webサービスの老舗、"Patients Like Me"は、治療方法がまだ確立していない疾患を抱えている人たちのSNSである。糖尿病や心臓疾患などのメジャー疾患ではなく、患者数が少ない病気をテーマにしたコミュニティのため、参加者のモチベーションが高く、活発に機能しているようだ。運営側は希少な疾患データを収集し、そのデータを医療機関に提供することでビジネスが成立している。患者にとっては、医者や病院との縦の関係だけに頼らず、悩みや解決方法を共有できる横の繋がりを、このサイトを通じて確保することができる。

Microsoft社が提供する医療Webサービスプラットフォーム”HealthVault”の写真

HealthVaultは、Microsoft社が提供する医療Webサービスプラットフォーム。サービスを利用するユーザーは、自らの体重や血圧のデータをはじめ、健診データ、診断書や処方薬データなど、様々な健康情報をこのWebサービス上にアップロードして管理することができる。また、コンティニュア規格*2に準拠した体重計や血圧モニターなど、計測器からのデジタルデータ転送にも対応し、医療情報のFAQやニュース、糖尿病のためのレシピなど、医療コンテンツも用意。HealthVaultは、外部サービスやデバイスとの連携を重視した医療・ヘルスケアデータのプラットフォームサービスになっているのだ。

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