No.007 ”進化するモビリティ”
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電気や水素は、二次エネルギー

従来型自動車が抱える環境面、資源面の問題を解決すると期待されているのが、電気自動車(EV:Electric Vehicle)や燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)に代表される次世代自動車である。

EVは充電池に蓄えた電気、FCVは燃料タンク内の水素と空気中の酸素を反応させて発電した電気で、モーターを動かす。いずれも電気モーター駆動の自動車だ。

EVやFCVの燃料は電気や水素ということになるが、注意すべきは、ガソリンや軽油と異なり、電気や水素が「二次エネルギー」だということである。

地下から採掘した石油であれば、燃焼させれば熱としてエネルギーを取り出せる。ところが、電気を作るためには、火力や水力、原子力、地熱、太陽光等の発電設備が必要だ。水素についても、燃料として使える純粋な気体水素が自然界に存在しているわけではない。水を電気分解したり、メタンを主成分とする天然ガスから水素を生産することになる。つまり、次世代自動車は、自動車としての性能だけでなく、エネルギーサイクルの中でどういう位置づけにあるのかを検討する必要がある。

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の二次電池ロードマップによれば、2020年頃には走行距離250〜350kmで200万円台というEVが登場し、普及期が始まると予想されている。ただ、ガソリンエンジン車の走行距離は500kmであり、それに比べるとまだ見劣りがする(現在でもテスラモーターズの高級車のように大容量の充電池を搭載したEVもあるが普及価格帯とはいいづらい)。充電設備も課題だ。EV用の充電設備は少しずつ増えてきているが、家電製品などに比べて大きな電力が必要であり、また急速充電器を使ってもフル充電に30分はかかる。もっとも、EVは「都市交通の新展開」でも述べたように、カーシェアリングとの相性がよい。個人向けのマイカーをガソリンエンジン車からEVに置き換えるのは難しいかもしれないが、シェアするライフスタイルが広まってくれば、近距離用の有望な移動手段になりそうだ。

一方のFCVは、700気圧で圧縮してタンクに充填した水素を燃料とし、走行距離は500km以上をすでに達成している。ステーションで水素を充填するのにかかる時間も5分以内だ。ただ、トヨタやホンダなどがFCVの販売を表明しているものの、価格は700〜800万円になる。また、それ以上に課題となるのが水素ステーションで、現在のところ日本全国に20箇所程度しかない。これだけ聞くとFCVが現実に普及するとはとても思えないだろう。だが、FCVに対する視線は、2013から2014年にかけて大きく変化してきた。

超小型EV「MC-β」の写真
[写真] 2014年10月からホンダは、さいたま市において超小型EV「MC-β」を使ったワンウェイ型(乗り捨て可能型)カーシェアリングの社会実験を開始した。(写真提供:本田技研工業(株))

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