No.007 ”進化するモビリティ”
Cross Talk

自動運転で地方を再び元気に

谷口 ── 「自動運転」という言葉は少し曖昧に使われていて、ドライバーが乗る運転支援も、ドライバーが乗らない完全自動運転も、どちらも自動運転に含まれます。しかし、本当に困っている人を助けるためには、後者の完全自動運転が必要。私は何としても「ロボットタクシー」のようなものを実現したい。

大口 ── ITS(高度道路交通システム)分野の人とよく話をする機会がありますが、谷口さんのように、こんなにハッキリ言う人は初めてです。自動運転を「何のためにやるの?」と聞いたとき、自動車メーカー関係では「安全のため」という人が多い。どうも「安全技術」ということにしないと、自動運転をやってはいけないような呪縛に陥っているのではないかという印象を持っています。

もちろん自動運転は安全にも寄与しますが、本当に困っている人達にとっては、生活の質に関わる大問題。そこをなんとかすることが、日本全体として意義のあることではないでしょうか。

谷口 ── 私の実家は姫路にありますが、田舎には、都会にない良いところがたくさんある。田舎の人も本当はそこに住み続けたいのに、いやがおうにも都会に出て行かなきゃならない悲しい現実があります。でも、それはテクノロジーで解決できる。すると田舎がまた栄える。それが、みんなが求めているシナリオではないかと思います。

大口 ── わたしも、そういうシナリオが必要だと思っています。誰も住まない荒廃した過疎地と、人が集中して繁栄する都会。今のまま何もしないと、そうなってしまいそうです。しかしそれは国、地域のあり方としてはすごく不幸せ。そこに、ものすごく危惧を抱いています。

私は都会育ちなので「本当に分かっているのか」と言われそうですが、地方をどうやって維持していくのか、そして豊かにしていくのかということは、本質的にとても重要なことですね。

谷口 ── ITは非常に便利になって、田舎にいたとしても、「Google Earth」で世界旅行ができる。でも本当に自分自身で行かないと、その場の空気も吸えないし、美味しい料理も食べられない。そんな人間本来の幸せをITではなく、ロボット技術で取り戻す。これは「ポストITの産業革命」だと言えるでしょう。

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