No.007 ”進化するモビリティ”
Cross Talk

今はベンチャーにチャンス

谷口 ── 自動車産業は日本の基幹産業です。これを守らないと、日本のモノ作りが崩壊しかねない。国を挙げて、みんなで次世代のクルマを考えたらいいのではないでしょうか?

大口 ── これまでは、クルマというものを個人や世帯で保有していました。だからこれだけ売れた。でもこのままだと、段々買ってくれなくなるのではないかなと、わたしはすごく危惧しています。ロボットカーになったときに、どういう保有形態、使われ方を想像すればいいのか、まず考えるべきだと思います。

谷口 ── 個人が保有する自動車の台数は、公共化するので、間違いなく減ってくると思います。でも減るからと言ってそれに逆らおうとすると、あるところまでは頑張れますが、あっという間に、新しいパラダイムに取って代わられる。これまでの産業はみんなこのパターンで、変化を遂げてきました。

大口 ── もっと違った付加価値のところで、勝負をすべきだということですね。

谷口 ── そうです。コンテンツであったり、情報であったり。データをどうお金に変えられるかがポイントだと思います。

大口 ── 過去を断ち切れるかどうかですね。今の自動車産業の人達に発想のチェンジができるか、私はすごく心配しています。

谷口 ── だからベンチャーにチャンスがあると思っています。概念を壊すのはベンチャーの役割。我々のようなロボットベンチャーなりIT企業なりが参入してくることによって、これを壊して、変えていくことが必要です。

大口 ── フォードの「T型」自動車が発売されたのは1908年。これが爆発的に売れたことで、当時、馬車を持っていた人達の仕事は一気に無くなってしまった。新しい仕組みやうまいソリューションが見えてくると、ベンチャーが出てきて成功し、旧来型の産業が斜陽になる。これは世の常ですね。

谷口 ── パソコンはインターネットによって変わりました。携帯電話も変わって、次はクルマがインターネットに繋がりつつあります。これが完全に繋がったとすると、もう全く新しいツールになるでしょう。新しいプレイヤー、ベンチャーがイノベーションを起こす、今がまさに臨界点なのだと思います。今を逃すともうチャンスがない。読者の皆さんにも「やった方がいいですよ」と伝えたい。

大口 ── クルマは産業として見れば、まだたかだか100年。人類の歴史全体からすると、ほんの一瞬のタイミングみたいなもので、これが永遠のソリューションかと言われると、多分そうじゃない。じゃあどうあるべきなのかということも、もっと自由に考えていいのではないかと思います。今は新しいことをいろいろ考える条件が整っているタイミングなのではないでしょうか。

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